気持ちよく暮らす「生活のしきたり」/62:家庭でも外でも、声に出して挨拶する
季節の行事のすごし方や、親戚・ご近所とのおつきあい、カジュアルな決まり事を覚えましょう!
各テーマごとに全部で84の「しきたり」をご紹介しています。
教えてくださるのは、生活研究家の阿部絢子さんです。
このパート【意思疎通をなめらかにする言葉遣いの「心がけ」】では、お互いの気持ちを通わせる言葉についてのしきたり62~67をご紹介します。
今回は、しきたり62:家庭でも外でも、声に出して挨拶することが、人づきあいをなめらかにする、についてです。
●意思疎通をなめらかにする言葉遣いの「心がけ」●
言葉はすぐに相手に伝わるコミュニケーション。言葉のトーンひとつで、相手の気持ちもわかることがあるものです。パソコンや携帯でのメール通信が盛んになり、話しもせず、言葉もつかわないといった人が増えているようですが、言葉はお互いの意志を通わせる、最も手軽な手段。メールの文章で話すことも大切ですが、言葉で意思疎通をはかることはより積極的に相手を理解する方法のひとつだと思います。
しきたり62
家庭でも外でも、声に出して挨拶することが、
人づきあいをなめらかにする
海外ホームステイでは、ステイ先の友人の家にさらにホームステイしたり、また友人の孫が来たりと、なかなか交流はにぎやかです。いわば他人との共同生活といったようなものですが、ここで、親しさをもたらしてくれるのが、毎日の挨拶です。同じ屋根の下で寝起き、食事をともにするのですから、挨拶ひとつで、お互いの気分が確かめられたり、そのあとに会話が弾んだりすることになったのでした。
また、近所を散歩していると、道を歩く人が必ず挨拶をしてきます。ときには、立ち話をすることさえあります。挨拶を交わす道端が、海外ではまるで社交場のような様子でした。
こんな経験をしてみると、私たちの暮らしでいかに挨拶が足りないことかを、つくづく思います。例えば、集合住宅に住んで間もなく、同じ居住者にバッタリとエレベーターで顔を合わせたので、「おはようございます」と挨拶したのですが、答えはなく、逆に知らんぷりされてしまいました。もしかしたら、間違ったかもしれない、そのときはそう思ったのですが、二度目にお目にかかったのは総会のときでしたから、間違ってはいなかったのです。そのあとも、何度挨拶をしても、いつも返事はありません。何か私が変なことをしたのか? と思わず考え込んでしまったほど。挨拶ひとつもできない人がいたことに、逆に驚いてしまったのです。積極的に自己アピールをしている若者が多いと聞いていましたが、実態は違っていたのかもしれません。こんなに人と交わることができなかったとは。
挨拶はつきあいを円滑にしていく、ひとつの手段です。社会で暮らしていくには、他人とのつきあいなしでは成り立ちません。他人との間をつないでいるのが、日々交わす挨拶の言葉であり、パソコンや携帯といった機械でのつながりではないのです。
宅配便や郵便の方、管理人さん、家主さん、近所の人、コンビニレジの人など、暮らしにかかわっている多くの人とつながって暮らしは成り立っているのです。その誰とも挨拶もなしに長い人生を過ごすのは、とても難しいのではないでしょうか。一人暮らしであれば、なおさらのこと。朝起きたら「おはよう」、外出するときには「行ってきます」、人に会ったら「こんにちは」、帰ってきたら「ただいま」など、必ず言葉にして自分に挨拶してみたり、話しかけます。これが習慣になっていけば、会社でも自然に挨拶ができるようになるはずです。
人とのつきあいをスムーズに、穏やかにしてくれるのは、挨拶をおいてほかにありません。家族の間であっても、おはよう、行ってきます、ただいま、おやすみなさいの挨拶は、どんなときでも家庭のしきたりにしたいものです。
次回は、しきたり63:モノを尋ねるときは、相手の時間や手間をかける気持ちをもって丁寧に、についてご紹介します。