気持ちよく暮らす「生活のしきたり」/63:モノを尋ねるときは、相手の時間や手間をかける気持ちをもって
季節の行事のすごし方や、親戚・ご近所とのおつきあい、カジュアルな決まり事を覚えましょう!
各テーマごとに全部で84の「しきたり」をご紹介しています。
教えてくださるのは、生活研究家の阿部絢子さんです。
このパート【意思疎通をなめらかにする言葉遣いの「心がけ」】では、お互いの気持ちを通わせる言葉についてのしきたり62~67をご紹介します。
今回は、しきたり63:モノを尋ねるときは、相手の時間や手間をかける気持ちをもって丁寧に聞く、についてです。
●意思疎通をなめらかにする言葉遣いの「心がけ」●
言葉はすぐに相手に伝わるコミュニケーション。言葉のトーンひとつで、相手の気持ちもわかることも。メール通信が盛んになり、話しもせず、言葉もつかわないといった人が増えているようですが、言葉はお互いの意志を通わせる、最も手軽な手段です。メールの文章も大切ですが、言葉で意思疎通をはかることはより積極的に相手を理解する方法です。
しきたり63
モノを尋ねるときは、相手の時間や手間を
かける気持ちをもって丁寧に聞く
初めてのお宅を訪ねるとき、道順がわからず困ることがあります。いまはパソコンでなんでも知ることができますから、調べていけば済みますが、それでも、調べ忘れたときなど困ります。
出先で道に迷ったとき、人に尋ねるしかありませんし、道行く人に聞くしかないのです。そんなとき、急いでいる人を呼び止め尋ねるのですから、呼び止められた人も、時間を取られ迷惑顔です。そのうえ、尋ね方がいい加減では、知っていても教えたくなくなります。人にモノを尋ねるときは、相手の時間や手間をかけるという気持ちを持つことが必要ですし、尋ね方も丁寧でなければなりません。
事前に親しい人に尋ねるときも、その人の手間を煩(わずら)わせるのですから、親しければ親しいほど考えなければなりません。まして道で出会った見ず知らずの人に、道や店などを尋ねるのですから、相手に不快な思いをさせてはならないはずです。
先日、親戚の若者が「デザインのいい徳利を売っている店、教えて」と言ってきました。私は、人にモノを尋ねるのに、藪から棒にこんな尋ね方はないだろう、とちょっとムッときました。それで馬鹿丁寧に答えてみたのですが、いっこうにその意味を理解した様子がなく、「ありがとう」の返事すらなかったのには、さらにガックリしました。
もうひとつ経験したことがあります。先日留守電に残ったメッセージです。「私は○○というものですが、新聞記事の雑巾を買いたいので店を教えてほしく、××まで電話ください」というものでした。明らかに、60歳後半とおぼしき方からの伝言。これが大人のモノを尋ねるときの言葉だとしたら、若者が無遠慮な言い方になるのも頷ける、と思ったものです。
モノを尋ねるときだけではありませんが、人への気遣いがいかに大切かを気づかなければ、教えてわかることではないのかもしれません。また、頭ではわかっていても、いざ尋ねるときには、スッカリ忘れて、無遠慮な聞き方になってしまいます。
家庭での大人の言葉遣い、言い方、尋ね方などが子どもや孫に伝わっていくとなると、責任の一端は大人にあるようです。相手を煩わせるときは、誠意を持ち、感謝の気持ちを表すよう心がけます。
次回は、しきたり64:電話・携帯は朝9時から夜9時にかけ、自分から名乗る、についてご紹介します。