気持ちよく暮らす「生活のしきたり」
季節の行事のすごし方や、親戚・ご近所とのおつきあい。恥ずかしくなく普通に暮らすため、カジュアルな決まり事を覚えましょう!
ここでは、各テーマごとに全部で84の「しきたり」をご紹介します。
教えてくださるのは、生活研究家の阿部絢子さんです。
最初のパート【四季とつきあうための「習わし」】では、日本の四季にまつわるしきたり1~21をご紹介します。
今回は、しきたり12:季節感を感じるためにも衣替えをしよう、についてです。
●四季とつきあうための「習わし」●
季節が移り変わる日本では、季節を暦代わりにし、移りゆく季節の変化を愛でながら日々を過ごしていました。四季は暦代わりですから、四季折々が暮らしの節目ともなり、また暮らしに、その四季を取り入れる風流さも持っていたのです。着るものには、季節の模様、桜、菖蒲、花火などを描き、併せて帯にもマッチした模様を使いました。食では、必ず旬を味わい、盛りつけにも季節が感じられるよう工夫を凝らしていました。住まいでは、 、障子をうまく使いこなし、風、雪、雨などの季節を音で聴き、眺めることで、楽しんでいました。
季節の節目を祝う行事も、四季を暦代わりにした暮らしには、欠かせないイベントだったのです。こうして、四季に合わせた折々の行事を行うことで、暮らしは続けられ、マンネリ化しがちな日々に、変化とけじめをつける役割をも果たしていたのです。四季の変化は暮らしの変化に結びついていたのです。いま、季節感や四季を愛でることが次第に薄れつつあるようですが、すっかりなくなってしまったわけではありません。
季節を感じることは、充足した暮らしをおくることです。暮らしに変化をつけるためにも、季節の行事、季節を愛でる工夫を、暮らしに取り入れてみてほしいものです。
季節行事は、季節に合わせていますから、暮らしの節目が感じられるばかりでなく、季節を楽しむ日本人の心の表れでもあるのです。
季節の移り変わりや自然の色や香りを、暮らしの中に取り入れながら、ゆとりを持って、暮らしを楽しむようにしたいものです。
しきたり12
季節感を感じるためにも衣替えをしよう
メリハリがあり季節がハッキリとしていた昔と違い、昨今では気候変動の影響なのでしょうか、季節の移り変わりが定かではありません。また、住環境や住宅構造の進歩、設備技術の発達などが急速に進み、衣生活での衣類は、流行も含め、目まぐるしく変わってきています。
特に目をみはる変化をしているのは、ハレとケ、言い換えると、フォーマル着と普段着との境が薄れていることです。フォーマル着は外出着、仕事着でもあり、主に会社や仕事場で着ている衣類、普段着は家でのくつろぐときに着る衣類と、少し前までは、着る目的での衣類がハッキリとしていました。フォーマル着ではスーツ、ジャケットとパンツなどを、普段着ではジャージパンツ、セーターなどが一般的でした。
しかし、このような当たり前に区別していた衣類が、気候変動、住環境、仕事の多様性、時間に追われる日常といった変化から、次第に区別が薄れ、仕事着が普段着化してきているようです。
例えば、仕事にもよるでしょうが、ジーンズとTシャツで会社に行く、肌が透けて見えるブラウスで出勤するなどです。衣類の自由な着方の変化は、衣類始末の変化をも生み出しています。衣替えが決まらなくなったことです。衣替えは、季節に応じて衣類や調度を変えることで、平安朝では四月一日と十月一日、夏装束、冬装束に替えたといわれます。室町・江戸時代ではより細かい決まりがあったそうですが、現代ではその名残が制服などにあり、六月一日に冬から夏、十月一日に夏から冬へと衣類を替えています。これは学校での制服衣類という決まりに従っているからで、フォーマル着と普段着の境が薄れた暮らしでは、なかなか衣替えもできなくなっているのが現実です。
季節感が薄れてきた昨今、実際衣替えも薄れてきてはいるのですが、四季を表現できるのは、いまや、衣類だけといっても過言ではないようです。春、秋にも襟元や足の衣替えを加えて、もっと四季の移り変わりを身に纏(まと)ってはいかがでしょうか。
次回は、しきたり13:夏には、ものを片づけ、風が通る家にする、についてご紹介します。