日本は天然水に恵まれた国だとつくづく実感するのは、美味しい地方料理に出会った時。「~山麓からの雪解け水で」、「~河から水を引いて」、「~の地下水は」など、食材の説明に必ずと言っていいほど「水」についてのくだりがあります。
豊富な水源、上質なそば粉の栽培に適した気候の山形県は、そば王国とよばれています。「最上三難所」、「大石田」、「おくのほそ道 尾花沢」とよばれるそば街道もあるそうです。又、鳥海山、出羽三山、飯豊連峰などの名水と米どころのお米に恵まれ、県内に50あまりの日本酒の蔵元が点在しています。
1泊2日で山形に赴く機会があり、お昼はお蕎麦、夜は日本酒を求めて、地元の方のお薦めのお店を訪ねてみました。
東村山郡「山野辺そば あべ乃」でいただいたのは、玄そばを自家製粉している四角ばっている二八のお蕎麦で、強い風味と歯ごたえが特長です。鰹出汁がきいた濃いつゆによくあいます。
やはり産地で自家製粉したお蕎麦は、口に入れる前に香りで美味しさを感じられます。
山形では、にしん煮やイカのゲソ揚げと一緒にお蕎麦をいただきます。にしん煮は、北前船貿易で栄えたころの名残だそうです。
郷土料理に冷たい肉そばがあることも知り、天童市「そば処 一庵」まで足をのばしてみました。
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米沢牛、山形牛、尾花沢牛などブランド牛で有名な山形なので、牛肉を使っているのかと思っていたところ、鶏でした。
お醤油ベースのつゆは鶏の旨みが濃厚で、鰹、昆布出汁も少し入っているようです。
具は、産卵を終えた親鶏。硬い肉質ですが、噛めば噛むほど味わい深くなり、軍鶏のような美味しさがあります。他は刻みネギのみのシンプルさが郷土料理らしいです。
写真:肉そば
日本酒は東京にも支店がある山形市「酒菜一」で。オーナー自ら蔵元に訪れて仕入れた日本酒が揃っています。
400年以上の歴史がある高木酒造のオリジナル酒米「龍の落とし子」の純米吟醸。大人気で入手が難しい「十四代」の中でも、ほとんど地元でしか飲めないと言われている希少なものです。フルーティーな香りとふくよかな味わいの後、スッとキレがよいのが特長です。私はお刺身、イカとろろ、庄内もずくなど海のものとあわせた感じが好きでした。
こちらは酒蔵として47年と若い六歌仙の「山法師」の純米大吟醸。仕込み水は黒伏山の湧き水で、淡麗でやさしい味わい。食中酒としてオールマイティーに楽しめ、ずんだ豆、さくらんぼ地鶏のソテーなどのお料理とあわせました。
そして山形のソウルフードといえば、「芋煮」。芋煮会が開かれるほど人々に人気だそうです。
たっぷりの米沢牛、ほっこりと煮立った熱々の里芋、味わい深いしめじなどの山の幸。甘めの出汁のやさしい味わいに思わずおかわりをしてしまいました。
実はこの旅は、山形が世界に誇るものづくりの工場を見学しにいくのが目的でした。
世界的に有名なデザイナーとコラボレーションしたアイテムは、後編でご紹介します。
*HPがないお店の情報です。
山野辺そば あや乃
山形県東村山郡山辺町大字山辺3128-4
TEL: 023-664-5442
そば処 一庵
山形県天童市一日町3-4-50
TEL: 023-651-2388