本屋でタイトルを見て思わず手に取った本「世界に一軒だけのパン屋」
ヨーロッパの話かなと思ったら、北海道帯広のパン屋、満寿屋(ますや)さんの話。
何が世界で一軒だけなのか。実現不可能と言われた国産小麦100%で全てのパンを焼き、水、牛乳、バターや砂糖、イースト菌まで十勝産、北海道産(地元産)という、世界でどこのパン屋さんでもできていない事を、親子三代に渡って実現させた究極の地産地消のパン屋なのです。
なのに帯広出身の方に聞くと「ますや?普通のパン屋ですよ」とあっけなく答えられる。
なので、行ってきました。帯広の満寿屋、麦音店へ。
満寿屋は十勝に6店舗、東京に2店舗あるのですが札幌にはないのです。
この麦音店とにかく広い!
店舗とイーストインスペース、外にはテラス席も。
敷地には小麦畑もあって1万1000平方メートルと言われてもピンときませんが、東京ドームのグラウンド面積とほぼ同じだそう。まさか自分が東京ドームを例えに出す日が来るとは思いませんでした。しかもパン屋さんで。
お店の中は混んでいますが、オープンキッチンから次々と焼きたてパンが並べられられるので、無くなる心配はなし。これらのパンが全て国産小麦100%とは。
私は今まで、外国産小麦は単に農薬をたくさん撒かれているくらいの認識でした。ところが問題はそこではなくて、輸送中に害虫やカビを防ぐために、小麦粉に直接薬を撒くのが問題なのだと知り、少し怖くなったのです。それがじかに口に入ってるとは。
満寿屋さんが国産小麦にこだわる理由はその安全性にもあるのです。
パンを買うとテイクアウトでもイートインでもドリンクが1杯ついてくるのもうれしい所。王道の十勝あんバターをコーヒーでいただきます。
店内のイートインスペースが混んでいたので、ビニールハウスのかわいいスペースでじんぎすかんパンを実食。
本の中で著者が帯広の農家の方とジンギスカンをしたくだりがあるのですが、ジンギスカンの横で、炭火で焼いた満寿屋のカンパーニュにタレを染み込ませたラムと玉ねぎを挟んで食べた、というのを読んでいるだけでもヨダレが…。
そしてそのパンが商品化されていました。
ジンギスカンはパンに合う!
色んな具材を使ったパンがたくさんありますが、やっぱりパンの生地が美味しいです。
あんバターはコッペパン、イベリコ豚はナンのようなモチモチパンというように、パンと具の相性がよいのです。
ここに来ると、おしゃれな、いまどきのベーカリーで、帯広の人が言う普通のパン屋感があまりないけど何でだろう?
その答えは本店にありました。
こちらに一歩入ると昔ながらの町のパン屋さんなのです。
種類もあんパン、クリームパンといったオーソドックスなものがずらり。
試食用にあったバターシュガートップ(名前を確認していなかったのですが満寿屋さんではこう呼ばないと思います…)は本当に懐かしの味。子供の頃こんなの食べてたと思い出します。
ここで、一番食べたかったのは白スパサンド。
満寿屋の名物。
個人的には、焼そばパンなどの麺類をパンに挟むより、別々に食べたい派な私の考えを一掃しました。
ちょうどよい固さで短めに切ってあるパスタ、ピリッとした辛子マヨネーズ、そしてサンド用のパンのフワフワさが絶妙。
これはコッペパンではなくサンドイッチなのがいいのです。
麦音のように次々と新しいパンを作り出す店舗とクラシックで懐かしさを感じるパンを作り続ける本店。まさに2つの顔を持つ満寿屋。
十勝のパン職人さん、前回のエブリシングノースさんもそうなのですが、本当に農家さんと密接な関係を持っていて真摯にパン作りに取り組んでらっしゃいます。
そんな思いのこもったパン、本当においしくいただきました。