佐賀県の有田町・伊万里町を中心とする地域が、江戸時代初めの1610年代頃に初めて国産磁器を生産した場所だというのは有名なお話です。
当時、伊万里の港から海外へと輸出された陶磁器の数々を、以前訪ねた長崎のオランダ商館跡で目にする機会に恵まれ、その美しさとモダンなデザインにとても感動したのは記憶に新しいところです。
その中でも、私がかねてから興味があったのが、大川内山(おおかわちやま)にある「鍋島藩窯跡」。ここは、そんないわゆる伊万里焼とは違い、鍋島藩が藩主の所用品や将軍家・諸大名への献上・贈答品などとして使用した、鍋島様式と呼ばれる伊万里焼をもっぱら焼造する為に、腕利きの陶工ばかりを集めて住まわせた集落です。
そんな「鍋島藩窯跡」を、先日訪ねてみました。
まずは、伊万里の町へ到着。
伊万里と云えば、橋の欄干に並ぶ伊万里焼の数々が有名ですよね。
和洋折衷の美しさ、私は大好きです。
そして、伊万里に来たら「伊万里牛」ですね!
今回は、ステーキハウス「つじ川」さんでランチをすることに。
シェフが目の前の鉄板で、伊万里牛のステーキを焼いて下さいます。
お昼間から贅沢なひと時を過ごしました。お肉は柔らかくてとってもジューシー!幸せ!
お腹が一杯になり、気持ちも満たされたところで、いざ、大川内山に向けて出発です。
長閑な山間の道を走ること数十分。山に囲まれた集落が現れました。不思議と一般社会から隔絶した感が漂う、何とも言えない風情のある地区です。
三方を岩壁や山に囲まれたこの集落。技術等の情報漏えいを防ぐ為に選ばれたのだとか。。当時、鍋島藩は、有田の優秀な職人に、武士と同等の身分を与え、高給を保証してスカウトしたそうですよ。
ただし、技術の流出を防ぐため、職人は大川内山から生涯一歩も外へ出られない幽閉状態に置かれることに。
そんな名残の一つなのか、この地区の入り口付近には当時の関所跡も。
こんな厳しい管理が、他の追随を許さない「鍋島焼の美しさ」を実現させたのですね。
・・・とはいえ、静かな山の中の集落で、最高級品を作る為にひたすら作陶に没頭できる訳ですから、職人冥利に尽きるという見方も出来るかもしれません。
坂道の両脇には、こうして窯元直営のお店が軒を連ねています。
いわゆる「鍋島焼」というデザインのものからモダンなものまであり、お店によってもデザインは様々で、何を買おうか迷ってしまうほど。
そんな中、私が心を掴まれたのは「鍋島御庭焼」という窯元の作品でした。
皇室にも献上された、繊細で美しい作品の数々が並んでおりました。どれも美術品級です。
撮影NGでしたので生憎お写真はありませんが、ため息が出るほど美しく、見惚れてしまい、その場を立ち去り難かったです...。
そんな素敵なお店を数件覗いたところで、メインの道からちょっと裏道へ逸れてみると、何とそこには登り窯が。
まさか、こんな間近で見られるとは思っておりませんでしたので、大興奮です!
窯にはお神酒が備えられ、近くに薪が積み上げられているところを見ると、近々火が入れられるのかもしれませんね。
とても静かな空気が漂っていて、ついつい手を合わせてしまいました・・・(笑)
静かな山間の小さな集落からひっそりと生まれていった洗練された美しい作品の数々。
鍋島焼の美しさは、この美しい場所から生まれたせいなのかもしれません。
また何度でも訪ねたいと思ってしまう、魅力ある素敵なところでした。