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特別展「海─生命のみなもと─」で涼しく海を体感しよう

吉田さらさ

吉田さらさ

寺と神社の旅研究家。

女性誌の編集者を経て、寺社専門の文筆業を始める。各種講座の講師、寺社旅の案内人なども務めている。著書に「京都仏像を巡る旅」、「お江戸寺町散歩」(いずれも集英社be文庫)、「奈良、寺あそび 仏像ばなし」(岳陽舎)、「近江若狭の仏像」(JTBパブリッシング)など。

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こんにちは。寺社部長の吉田さらさです。

 

夏と言えば海です。今回は、涼しい環境の中で海を体感し、深く学べる特別展「海 ─生命のみなもと─」をご紹介します。

 

東京の上野公園内にある国立科学博物館にて10月9日(月・祝)まで開催。夏休み中はお子様連れで、静かに鑑賞したい方は夏休み期間が終わってからお出かけください。

海に遊びに出かけることはよくあっても、実はわたしたちは、海についてあまりよく知らないのではないでしょうか。

 

今回の特別展では、地球上のあらゆる生命のみなもとであり、現在もわたしたちの生活を支えてくれており、かつ、わたしたち人類の未来を左右する重要な存在である海について多角的な視点から学ぶことができます。

 

 

第1章「海と生命のはじまり」では、地球上の水と生命の起源、そしてその進化についての展示物を見ることができます。

白い熱水チムニー

 

1977年、深海の底に熱水噴出孔zzzxx(チムニー)と呼ばれるものが発見され、これが生命誕生の場ではないかという説が有力になりました。

アルカリ性の熱水が低温で酸性の海水に向かって噴出していたならば、炭酸塩やシリカなどの白い鉱物が沈殿して、このような白いチムニーができていたのではないかと考えられています。

 

水中で起こったわたしたちの祖先の進化

 

古生代の水中では、いろいろな形の魚の仲間が栄えては消えていきました。

そのうち一群が四本の脚を獲得して地上に進出し、四肢動物となり、やがてはわたしたち人類へと変化しました。陸上の動物であっても、すべての生き物のふるさとは海なのです。

 

 

第2章「海と生き物のつながり」では、日本列島を取り囲む海の海底や海流の様子、それが生み出す生物の多様性について知ることができます。

親潮の魚類

 

日本周辺の海には、親潮(寒流)と黒潮(暖流)という2つの大海流があり、それぞれに豊かな生命を育んでいます。こちらは親潮の魚たちです。

種類は少なく色彩にも乏しいですが、個体量は多く、サケやサンマなど、日本人の食に欠かせない魚も数々生息しています。

 

黒潮の魚類

 

こちらは暖流の黒潮に生息する魚たち。

カラフルな魚の宝庫ですが、親潮よりも量は少ないということです。サンゴ礁の海もあるので、熱帯魚もいます。

 

ナガスクジラ上半身標本(所蔵:国立科学博物館)

 

海洋生物は水平方向だけでなく垂直方向にも動いて生活しています。その動きによって、異なる深度に生息するプランクトンや植物などに縦のつながりが生まれます。

とりわけクジラやサメなどの大型生物が水面から深海へと繰り返し移動すると、栄養塩や熱も大きく移動します。これを「ホエールポンプ」といいます。このホエールポンプによって、海中の生態系は相互に影響し合って多様化します。

 

 

第3章「海からのめぐみ」では、魚や貝を食料として、また道具や装飾品として利用してきた古代から、高度な技術を使って海底の様子を研究できるようになった現代まで、人が海からどんなめぐみを得てきたのかを学びます。

貝製釣針(左・中)釣針素材(右)

 

真ん中は、2万3000年前の世界最古の釣針です。素材は違いますが、形は現在の釣針とよく似ています。

最初に貝殻を使って釣針を作ろうと思いついたのはどんな人だったのでしょう。そもそも、釣竿と釣針で魚を釣るという今も変わらない技術こそが大発明ですよね。

 

無人探査機:ハイパードルフィン(所蔵:海洋研究開発機構)

 

母船からケーブルを通じた給電と通信によって海中で活動します。ロボットアームによって海底の泥や岩石、生物を採取するなど、様々な作業を行うことができます。

ハイビジョンカメラも搭載され、海中で撮影される映像を母船上にてリアルタイムで見ることもでき、新たな海からのめぐみを開発する研究に役立てられます。

 

 

第4章 「海との共存、そして未来へ」では、人類が海洋環境に与えてきた大きな変化について知り、今後のよりよい共存の方法について考えます。

ヨコヅナイワシ(所蔵:海洋研究開発機構)

 

近年では海洋保護区が設置され、生物の個体数が継続的にモニタリングされるようになりました。これは2016年に発見されたセキトリイワシ科最大の魚類で、食物連鎖の上位にいるトップ・プレデター(頂点捕食者)です。

 

ある地域の生態系が健全に保たれているかどうかは、トップ・プレデターの数を調べればわかります。トップ・プレデターが減っているなら、その餌が減って生態系に異変が起きているということだからです。2020年までに採取されたヨコヅナイワシは7個体のみです。

 

クジラの体内から見つかったプラスチック類(所蔵:国立科学博物館)

 

わたしたちが生活の中で使うさまざまな品物の破片がクジラのおなかから出てきます。これはなかなかショッキングな展示物ですね。

 

プラスチックをすべてなくすことは容易ではありませんが、海と人類の未来のために少しずつでも軽減を目指していかなければと感じます。

 

 

特別展「海 ━生命のみなもと━」

会期 2023年7月15日(土)~10月9日(月・祝)

開館時間 9時~17時(入場は16時半まで)

夜間開館 8月11日(金・祝)~8月20日(日)は19時閉館(入場は18時半まで)

※常設展示は8月11日(金・祝)~8月15日(火)は18時まで。

それ以外の期間、常設展示は17時まで(入場は各閉館時間の30分前まで)

 

詳しくは公式サイトをごらんください。

 

 

𠮷田さらさ 公式サイト

http://home.c01.itscom.net/sarasa/

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