こんにちは、寺社部長の吉田さらさです。
今回は世田谷美術館で開催中の展覧会「倉俣史朗のデザイン─記憶のなかの小宇宙」(~2024年1月28日〈日〉)のご紹介です。
倉俣氏は1934年生まれ。店舗などの空間デザイン、家具デザインの分野で世界的な評価を受けた方です。1960年代から独自のデザインセンスで最先端を走り続け、1991年、56歳で死去。その早すぎる死は国内外で報道されました。没後30年以上を経て開催される今回の展覧会では、家具などの作品だけでなく、イメージスケッチや夢日記、蔵書やレコードのコレクションなども展示され、この天才的デザイナーの内面を垣間見ることができます。
世田谷美術館は砧公園の森の中にあり、周辺の風景を取り込む大窓がある展示室が魅力的です。今回の展覧会では、その展示室に倉俣氏の代表的作品が数点展示され、息をのむほど美しい空間となっています。
倉俣氏は、60年代からすでに、「具体的に使っていない時にでも、見てきれいな、つまり視覚的に意味を持って家具、ということを考えていたが、最近はむしろ使うことを目的としない家具、ただ結果として家具であるような家具に興味を持っている」と述べておられます(本展カタログより)。
つまり、家具という要素を持ったアートということでしょうか。
デザインの美と実用性を兼ね備えた作品。
これは実際に座れそうだし、引き出しに何かを入れて収納家具としても使えそうですね。
しかしこうなると、この引き出しに何を入れたらいいのかわからなくなってきます。
これが結果として家具であるような家具でしょうか。
左側は使えそうですが、右の引き出しは使用がやや難しいかも知れません。
これを置くだけで、時空がゆっくりと歪んでいくような不思議な空間になりそうです。
1969年以降、倉俣氏のデザインでは、光が重要な要素となっていきました。
写真奥のテーブルと椅子は、どこかの店舗で使うディスプレー用ではなく、作家本人の意思で制作されたものだそうです。それぞれがテーブルと椅子の形ではありますが、照明器具を兼ねたオブジェと考えた方がよさそうです。
手前の二つはランプという名がつき使用目的がわかりやすいですが、オバQというサブタイトルもついています。倉俣氏はユーモアの感覚も優れた方だったそうです。
倉俣氏は1981年に、ミラノの「メンフィス」展に参加しました。イタリア国内外から作家が集まり、実験的な作品を発表したグループです。倉俣氏は、このメンフィスとの協力により、単なる実用性としての機能を越え、生きていく上での根元的な喜びが表現されていなくてはならないというデザインの使命を確信したとのこと。
右側の作品は、「椅子の椅子」つまり、椅子が腰かけている椅子です。
頭の中で「こんなのがあったら面白い」とイメージしたものが、そのままデザインになっているようです。
今何時なのかが永遠にわからない時計。
眺めているうちに、時の止まった世界に置いて行かれたような気分になります。
造花のバラをアクリルに閉じ込めた椅子。
なぜ、『欲望という名の電車』のヒロインの名がついているのかはわかりませんが、わたしは、かわいらしいドレスを着た人形のように非現実的な女性が座るのかなと想像しました。
《ミス・ブランチ》のためのテーブルとも言われていますが、よく見るとテーブル面を支えるのはビー玉で、実際に物を置くことはできなさそう。しかし、無重力の世界ならば可能でしょう。
倉俣氏の蔵書とレコードコレクション。世界観が伝わってきます。
ミュージアムショップでは製品化された作品を購入することもできます。
この時計はもちろん動くので使えますが、それでもやはり、今ひとつ時間がわかりにくいです。現実とは少し違う世界で暮らしてみたい人におすすめ。
倉俣史朗のデザイン―記憶のなかの小宇宙
会場:世田谷美術館
会期:2023年11月18日(土)〜2024年1月28日(日)
休館日:毎週月曜日および年末年始(12月29日~2024年1月3日)
2024年1月8日[月・祝]は開館。1月9日[火]は休館。
詳細は世田谷美術館公式サイトをごらんください。
𠮷田さらさ 公式サイト
http://home.c01.itscom.net/
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