娘が成人式を迎えました。
身に纏っている振袖は『加賀友禅』。
35年前に亡き母が私のために選んでくれた振袖です。
日本三大友禅と称される『加賀友禅』は、石川県金沢市(加賀)発祥の友禅着物です。加賀五彩と言われる臙脂・藍・黄土・草・古代紫を基調とし、落ち着きのある草花模様を中心とした絵画のような柄が特徴です。
加賀友禅作家が制作した着物には必ず作家の落款がしるされています。
ここからは思い出話を・・・
美しい色彩と絵柄に目を奪われた加賀友禅の振袖
35年前
今では少なくなりましたが、まだ小さなきもの屋さんが所々に店舗を構えていた時代。親戚の紹介で訪れたきもの屋さんで出会ったのがこの振袖です。美しい色彩と絵柄に目を奪われたことを今でも鮮明に覚えています。
当時はかなりの高額でしたが、母自身着ることが叶わなかった美しい振袖を娘に着せたい…という想いがあったのでしょう。他の振袖にするという選択肢はありませんでした。
仕立ての為の採寸や小物選び・・帯はあえて金の刺しゅうを施した黒い帯に。とても雅な帯と可憐な振袖、対照的でしたが合わせるとすごく素敵。母も私もお店の人も大盛り上がり(笑)楽しい時間でした。
帰り際に「たくさん着てくれると振袖も喜びます。いつでも着付けますから、連絡してくださいね」というお言葉をもらいました。嬉しくて仕事始めや友人の結婚式、お正月など、この振袖を着てたくさん出かけた事も良い思い出です。
思い出の振袖を着た孫の姿を見せたかった
時は流れ
娘を授かった時、ずっと先の事だけど成人式にはこの振袖を着てもらうのかな…そんな思いが頭をよぎり。
そして二十歳の成人式。
晴れの日に娘が身に纏っていたのは母が選んだ『加賀友禅』。
時の流れを感じさせない存在感とオーラに包まれ、あの頃と同じようにキラキラと輝いていました。そして様々な思いが蘇り思わず涙…
帰宅後、振袖姿の娘と「お母さんが買ってくれた振袖ですよ」と報告。
母は残念ながら10年前に他界してしまい、孫の晴れ姿を目にすることは出来ませんでしたが、誰よりもこの『加賀友禅』を愛した母。きっと喜んでくれていることでしょう。