和刺繍の見事な技を見学できる工房
「京都刺繍修復工房」和光舎三条工房
三条通の「京都文化博物館」から南に少し下がった高倉通沿いに、ガラス張りの窓から、刺繍職人さんが、さまざまな色の糸を、丁寧に布に刺す作業が見えるお店があります。昨年10月にできた「京都刺繍修復工房」です。
この工房は、伏見に本社をもつ「和光舎」という法衣やお寺の布製の装飾品などのクリーニング、修復を専門に行う会社が、そのすぐれた和刺繍の技術などを、広く多くの人たちに知ってほしいという思いから作った工房なのです。
「え?法衣やお寺の装飾品って、クリーニングできるんですか?」と思われる人も多いはず。「和光舎」は、担当者の長年培った高い技術力で、一般のクリーニング店では、無理と思われる品々のさまざまな汚れなどを改善するのだそう。そのため全国の寺院から、さまざまな注文が来るという、まさに京都ならではの専門店なのです。
「でも、実際、クリーニングだけでは、完全に昔のような美しい状態にもどすことはできないケースが多いんです」と西谷謙二会長。まばゆい金糸を多用したり、手の込んだ刺繍でできているものが多い法衣や装飾品は、火の粉を浴びる護摩法要などで、穴が開いたり、長年の使用で、変色しているものが多いそう。「クリーニングだけでは、それを元のようにきれいにすることはむずかしいし、また、絹などの生地自体が弱くなってしまってクリーニングができないケースも多いんです」と。ボロボロになったものは、かつては廃棄されることも多かったそうですが、新調するには、かなりの予算が必要ということもあり、なんとか使える部分を活かせないかという要望が…。
装飾品の刺繍の部分は、アップリケのように、別の布で作られ、綿を入れて立体的にしていることも多く、使える部分を残したり、布自体を新しいものに取り換えるという修復作業を請け負うことに…。
和刺繍などの技術をもつベテランの職人さんを中心に、長年受け継がれてきた日本の刺繍などの技術を活かした修復作業です。また、若い職人さんの育成にも力を注ぎ、その技の継承を目指しているそう。
「江戸時代末期や明治のころに作れた品々は、本当に見事な刺繍が施されています。修復をしながら、その技術を学ぶこともできるんです」と西谷会長。
職人さんの作業する様子を通りがかりに、珍しそうに見る外国人観光客も多く、そんな人を見つけると、「どうぞ、中でゆっくり見てください…」と会長は、声を掛けます。「日本の優れた文化や技術を、世界の人たちに見てほしいんです。日本人の方も、よく立ち止まれらますが、中に入る方は少なくて…遠慮なくどうぞ…」と。美術館や博物館に展示される歴史的な衣装などにも使われている和刺繍の技を、すぐ近くで、ゆっくり見ることができる貴重な工房です。
町中のお買いものの折りなどに、ぜひ一度立ち寄ってはいかがでしょ。日本の素晴らしい技術に感激するはずです。
京都刺繍修復工房
京都市中京区高倉三条下ル ☎075-200-7798
営業時間:10:00~18:00 月曜休み
小原誉子の京都の観光文化を伝えるブログ
「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」