昔ながらの佇まい、和ろうそくの老舗「小島商店」
鴨川にかかる四条大橋と五条大橋の間にある松原橋は、かつて五条大橋だった橋で、牛若丸と弁慶が出会ったのも、実は、この橋の上と言われます。平安時代、松原橋は、清水寺への参拝の橋で、そこに通じる松原通も、多くの人でにぎわった道なのです。
現在、四条通にある大丸百貨店も、享保2年(1717)京都伏見の呉服店として創業し、松原通にも元文元年(1736)に店を構えました。幕末は、新撰組のあの特注の青い羽織を作ったのも松原通の店だったとか…。また、祇園祭の山鉾も、かつては、この道を巡行したのです。
今も、道沿いには、古い面影を漂わす商店が点在し、散策もなかなか興味深いものに…。
さて、松原橋にほど近い場所にあるのが、今回、ご紹介する、寛政元年(1789)創業の和ろうそく老舗「小島商店」です。
店の一角で和ろうそくを作っていた名残の作業場が、古き時代へと誘います。
今やロウソクといえば、石油系の洋ロウソクが一般的ですが、明治までは、ウルシ科のハゼの実から採取した木蝋をとかし、和紙などの芯に手で何度もかけながら、巻きつけて作る和ろうそくが使われていたのです。
煙に含まれるカーボンが少ないため、仏壇などを汚しにくく、また炎も明るい和ろうそくは、今や高級品として、夜の茶会などに使われています。
かつて、京都の町のあちこちにあったという和ろうそく店ですが、今は数えるほどにその数も減っています。しかも、昔ながらの佇まいを残した「小島商店」には、当時を物語る品々が、今も大切に残され、まるで博物館のよう。テレビや映画製作者が、昔のものに関して、取材に来ることもあるそう。
今は、和ろうそくだけでなく、洋ロウソクや線香も種類豊富に店に並べられています。
時代と共に、その活躍の場を洋ロウソクや伝統にとって代わられた和ろうそくですが、その独特の風情あるともしびは、人々の心にいつまでも、灯り続けてゆくのでは…。
お店の中で過ごすひと時に、なんとも心やすらぎます。時が止まったような店内…それがなんともステキです。
小島商店
京都市下京区松原通河原町西入ル ☎075-351-0486
営業時間9:00~19:00 日曜・祝日休み
小原誉子の京都の観光文化を伝えるブログ
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