その土地の食文化を端的に感じられるワイン会。日本同様、歴史的・地理的背景により、地方食文化が発達したイタリアのワイン会は、とても魅力的です。
イタリア郷土料理がコンセプトの港区西麻布「オステリア・トット」で開催された、イタリア・マルケ州のワイン会に伺いました。
内陸にはアペニン山岳地帯、東側はアドリア海に面したマルケ州は、トリュフなどのキノコ類、ウサギなどのジビエ類、そしてアドリア海のシーフードと、山・海の幸が豊富な地域です。
なだらかな丘陵地帯に広がるぶどう畑では、古代ローマ時代からワイン作りが行われています。その中でも、特に景観が美しく「バルコーネ デッレ マルケ」と呼ばれる地域にあるワイナリー「テヌータ ディ タヴィニャーノ」から、オーナーのオンディーネ・デラ・フェルダ女史が来日してのワイン会です。
お料理にあわせてずらりと並んだ「テヌータ ディ タヴィニャーノ」のワイン。左のフリツァンテ(微発泡スパークリング)のボトルデザインはユニークですね。
マルケ州ならではのアンティパスト。左から反時計まわりに、アスコリ風詰め物をしたオリーブのフリット、イワシのマリネ、マルケ風ズッキーニのオーブン焼き、イカのリピエーヌ、つぶ貝の香草風味のソテーマルケ風、アンコーナ風ヒメジのオーブン焼き。
山・海の幸が一皿に揃っているのは、和の突出しに通じるところがあるなあと、地理的背景を感じました。
アンコーナ風魚介のスープ ブロデット。
こちらには、凛としたミネラルの存在感がある「パッセリーナ2013」を。
ラザーニャはマルケ発祥のお料理だそうです。ひき肉のトマトソースですが、トマトのフレッシュな甘みを感じるあっさりとした味わなので、青りんごや洋梨の果実香が特徴の白ワイン「ミスコ 2012」とよくマッチします。
メインは山形米の姫豚肉のポルケッタ。
豚の脂肪や皮を巻きこんでハーブなどと一緒にローストしたものです。あわせたのは、エレガントで余韻が長い赤ワイン「チェルヴィドーニ 2013」。
そして最後はマルケの伝統菓子「チャンベッローネ」。
これらのお料理は、「オステリア・トット」オーナーシェフ 根本岳氏によるものです。
イタリア人シェフより直々にイタリア料理を学んだ経験から、イタリアのさまざまな地方に興味を持つようになり、2010年に「オステリア・トット」をオープンしたそうです。定番メニューにもイタリア各地の料理が並んでいます。
「テヌータ ディ タヴィニャーノ」は、サルデニア州とマルケ州の貴族の流れを組む家系。
4年前にオーナーファミリーの姪にあたるオンディーネが、ワイナリーを継ぎ、現オーナーに就任しました。
ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートを卒業後、建築家として活躍してきたオンディーネが就任後手がけたのが、彼女が手に持っているボトルデザイン。
異業種から男世界であるワインビジネスに入り、最初のチャレンジとして、伝統的で真面目なワインの世界に、遊び心と愛を注ぎこみたかったそうです。顔は遊び心、ショッキングピンクは愛を象徴しているのでしょう。
勇気と元気あふれるオンディーネのワインとイタリアの郷土料理が大好きな根本シェフのお料理。作り手の人柄に触れられた、貴重で楽しいワイン会でした。
「テヌータ ディ タヴィニャーノ」
http://web-monaca.com/?mode=cate&cbid=2050135&csid=1