東京の寺社で骨董探し
こんにちは、吉田さらさです。
全国各地の寺社巡りの旅をご案内しています。
今回は、東京の寺町で、骨董探しをしてみましょう。
東京とその近郊では、毎週のように、どこかの寺や神社で骨董市が開かれています。曜日に関係なくその寺の縁日に行われるものもあれば、毎月第一日曜日など、縁日とは関係なく定期的に行われるものもあります。
中でも、毎月第Ⅰ日曜日に東京中野の新井薬師で行われるアンティークフェアは、昭和51年ごろから続く、東京でも歴史のある骨董市のひとつです。一時は、境内を埋め尽くすほどたくさんの店が出ていましたが、景気が下向くにしたがって店の数が減ってきました。バブル当時と違って骨董品の値段も下がり気味。人出も以前に比べれば少なめですが、その分、じっくりよいものを探すチャンスとも言えます。
応後大吾さんは、「ゆめ唐草」という屋号で新井薬師に出店し続けてかれこれ40年。
20代のころから古伊万里の美しさに魅せられ、給料を前借りしてまで気に入った品物を購入。何年もかかって見事なコレクションを作り上げました。
実はこの方、業界では名を知られた目利きなのですが、普段は自動車整備の会社に勤めておられるため、プロの骨董屋さんとはちょっと違う。あくまで趣味の範囲内、ひたすら骨董を愛し、売るよりも本当は自分の手元に置いて愛でていたい。骨董市にはそういうタイプの店主が多いため、高級骨董品展とはひと味違う会話が楽しめるのです。冷やかし専門ではありますが、わたしも応後さんの店に通いはじめて10年ほどになります。その間、いろいろなことを教えてもらいました。
1.骨董市でよいものに巡り会うコツは、まず、なるべく朝早いうちに出かけること。
実は骨董市は夜明け前の、まだ暗いうちから始まります。開店直後は、プロの業者さんが多く来ます。業者さんの中にも目利きとそうでない人がいますので、ここで、プロ同志の駆け引きも行われます。また午前中は、常連のベテランコレクターの時間帯です。なので、よいものは、午前中に売れてしまいます。
2.初心者のうちは、どれが本物でどれが偽物か、果たして言い値ほどの価値があるのかないのかなど、本当のことは絶対にわかりません。なのでまず『勉強』と思って、気に入ったものを「えいやっ!」と買ってみること。勉強とは、あとで「ああ、失敗したな。次はこういうものを買わないように気をつけよう」という学びを繰り返すことです。
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3.自分のセンスに合う品物を置いている店を見つけたら、店主さんと顔見知りになって、いろいろ質問してみること。だんだん自分の好みが定まってきたら、「わたしはウサギ柄をコレクションしているので、どこかで見つけたら連絡してね」などとお願いすることもできます。
4.値段が高くて一般的に評価されるものばかりを狙うのではなく、「自分にとって価値のあるもの」を見つける目を養うこと。骨董市で、わたしたち素人が将来値上がりする品物を入手できる可能性はいたって低いです。それよりも、普段使って楽しめる器を探すのが、骨董市の正しい遊び方です。
新井薬師骨董市の情報はこちらです。
http://www.kottouichi.jp/araiyakusi.htm
古伊万里の選び方、使い方についてより深く学びたい方は、ぜひ、向島古伊万里資料館に足を伸ばしてみてください。こちらには、応後大吾さんが長年かかって作り上げた素晴らしいコレクションが展示されています。
場所は向島の八広というところ。応後大吾さんが勤めている自動車整備会社の隣のビルです。お世辞にもおしゃれとは言えない建物ですが、資料館に一歩足を踏み入れると、思わず「えっ、別世界に来たみたい」と声が出ます。もとは住居用の部屋だったようですが、応後さんのセンスと創意工夫によって、とても居心地のよい「和」の空間が演出されています。
コレクションは、そこここに置かれた古い箪笥や戸棚の中にさりげなく展示されています。
古伊万里というと、赤や金を駆使した華やかな大皿を想像される方も多いでしょうが、そいうのは博物館や高級骨董品店に任せておいて、応後さんは、ひたすら染付けの古伊万里を追い続けられました。こちらに置かれているのは、その中でも選りすぐり。ほかでは見たことのないハイセンスで精緻な文様、繊細に絡み合う唐草。なるほど、こういうのが、「上等な染付けの古伊万里」というものですね。
空間のしつらえ方も参考になります。エアコンなど、見せたくないものは、骨董市で手に入れた古い建具、布などを駆使して見事に隠されています。いつ行っても、季節の野の花が素敵に飾られているのですが、これは開館日の朝に、応後さんがそのへんの道端などで摘んできて、ご自分で活けておられるのだとか。
古伊万里だけでなく、珍しい『隅田川焼』のコレクションも充実しています。江戸時代後期から戦中にかけて、隅田川周辺の土を使って焼かれたもので、近くの「向島百花園」で売られていたものです。柄は、在原業平の「いざ言問はむ都鳥」にちなんだ都鳥が多いようです。
百花園は江戸時代は、風流人たちが集まる遊びの場。隅田川焼は、土の質があまりよくないし、文様も素朴な手描きです。しかしそれがまた洒脱でよいと、風流人たちに好まれたのです。
向島古伊万里資料館は、毎週土曜日のみの開館です。
詳細はこちらをごらんください。
https://www.techno-city.sumida.tokyo.jp/s3m/detail.php?company_id=11
吉田さらさ
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