河原町通から始まる三条通のアーケード。その入口近くにあるのが「京仏具 吉田源之丞老舗」(よしだげんのじょうろうほ)です。
創業は元亀3年(1572)という織田信長が比叡山一帯を焼打ちにした翌年のこと。その戦火の場となった吉田村から京の五条高倉に店を構えたのが、現在の店主から遡ること15代前。秀吉の時代になり、比叡山の再建が許可され、それにより多くの寺院の修復が始まり、京都に店をもつ初代「吉田源之丞」も比叡山諸寺への出入り商人を束ねる「大仏師」として再建に尽力します。禁裏(きんり)御用も務め、仏師の最高位の「法眼」(ほうげん)の位も賜るという、まさに京仏具の老舗なのです。現在の三条通に移転したのは、明治になってから。今も、比叡山はもとより、知恩院、妙心寺など数多くの京都の寺院の御用を務めます。
仏具というと、一般家庭の仏壇を思い浮かべますが、ここのメインは、昔から御用を務める寺院で、そこに納める仏具は、特別注文のものがほとんど。それぞれのご要望に沿った品を、今も大仏師の称号を受け継ぐ15代店主をはじめ、確かな技術をもつ職人たちが手掛けているのです。
さて、そんな格式ある店…敷居が高いのではと思いがちですが、三条通アーケードという場所柄から、とても入りやすい雰囲気。一般の人向けの品々が、店内に種類豊富に並んでいます。仏具と一口に言っても、その種類の多さに改めて驚くはず。まずは、仏壇…「最近は、リビングにも置けるモダンなものが人気なんです」とお店の方。ローズウッド仕上げのシンプルな小さなものなど、扉を閉じているととても仏壇とは思えません。家の建て替えや住み替えで、親の代の仏壇をお祀りできなくなったという人も増えているのだとか。
「マンションなどにお住まいで、仏壇は無理でも、仏様などをお祀りなさりたいという方も多くいらっしゃいます」と。自分が崇敬する、阿弥陀様、大日如来様などの仏像などをお祀りしたいと思っている人は多いもの。また、さまざまな種類の仏像のなかでも「恵比寿、大黒」の木像は、人気で、「こちらは御商売などなさっている方がお店にも祀られるんですよ」と。外国人観光客もリビングなどの飾りに木像を求めるケースも多いそう。
家のどこかにご先祖様や崇敬する仏様に手を合わせる場所を持つことで、心が落ち着く気がします。私も、ここで、小さな厨子と鈴などを揃えました。あらゆる宗派に対応する品揃えの豊富さと確かな品々で、京都を訪れる友人を案内することも。「仏具もホントいろいろあるのね~」と、店の中をあれこれ見て回る友人。珠数や線香などの種類も多く、京土産に求めるのもおすすめです。
各宗派の御本山が集まる京都。仏具を求めるには、それほどふさわしい場所はありません。多くの御本山の御用を務めるお店の方々の知識も深く、仏壇をはじめ、仏具一般に関して気軽に相談もできます。今の暮らしにあった仏壇…ご先祖様も喜ばれる心地よい仏壇を見直してはいかがでしょうか。
京仏具 吉田源之丞老舗
京都市中京区三条通寺町東入ル石橋町23
☎075-221-4642 営業時間11:00~20:00 無休
交通/地下鉄東西線「京都市役所前駅」徒歩5分。
小原誉子ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」