今や美しさには欠かせない食材として注目を集める発酵食品。京都で昔から愛される発酵食品のひとつに「大徳寺納豆」があります。納豆と言っても、粘り気のある糸をひくものとはことなり、もともとは唐から伝えられた古来の姿を留める納豆と言われます。塩味の強いことから、醤油や味噌のように調味料として使われていたそう。「唐納豆」とよばれ、後に、大徳寺第47世一休宗純禅師が、大徳寺に伝え、それから寺内の多くの塔頭で広く作られるようになったとか。
現代においても「大徳寺納豆」は、京都の人達の食によく登場する調味料で、ご飯やお粥に添えたり、酒のつまみ、冷奴や湯豆腐の薬味、また炒め物や煮物の隠し味に愛用している声を聞きます。
またお茶席にも干菓子のように出され、口に含み、お抹茶を頂くと、お茶の味がいっそう甘くまろやかに感じられます。
さて、「大徳寺納豆(唐納豆)」は、毎年、夏の祇園祭の始まる頃から、初秋にかけて2か月ほどかけ作られます。昔ながらの製法で「唐納豆」をご住職が代々作っていらっしゃる大徳寺塔頭のひとつ「瑞峯院」に伺い、その製作工程を特別に見せて頂きました。
毎年、1年分の「唐納豆」の仕込みに使うのは、国産の大豆を120キロ。それを3回に分けて、仕込んでゆきます。大豆を水洗いして、大釜に入れ、一晩、たっぷりと水を含ませ、翌朝、水を半分ほど汲みだしてから、3時間ほど火加減に気を配りながら煮込みます。
程よく煮えた大豆は、大きなザルに上げて、熱を冷まし、はったい粉という麦を炒った粉を大豆全体にまぶします。
それを木箱に均等になるように入れ、室(むろ)に2週間ほど安置し、麹菌を自然発酵させます。
発酵によりひとまわり大きくなった大豆は、あらかじめ用意した塩水の中へ。
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それから熟成し乾燥するまで、1時間ごとに混ぜ合わせる作業を2か月ほど続けてゆきます。
そして、コロコロとした黒い粒になったら出来上がり。
本当に手間のかかる作業です。かつて大徳寺の多くの塔頭で作られた「唐納豆」ですが、今も作り続けているのは、片手で数えられるほどだそう。ご住職自ら、真夏の猛暑の中、仕込みをされたものなのです。
年間を通じ公開されている「瑞峯院」では、お寺に参拝にいらした方に、この昔ながらの製法で作った「唐納豆」をお分けしています。一粒口に含むと、大豆の風味と共に、疲れを癒す塩味が広がる、本場の「大徳寺納豆(唐納豆)」。お茶のおともに、またさまざまな料理の調味料に…。大友宗麟公が寄進した「瑞峯院」や重森三玲作の石庭など、京都の旅を思い出すやさしい味わいです。
大徳寺塔頭 瑞峯院
京都市北区紫野大徳寺山内 ☎075‐491-1454
拝観時間:9:00~17:00 拝観料:400円
希望により茶室での抹茶接待 400円 「唐納豆」は、1箱1000円
小原誉子
ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」