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50代なら知っておきたい年金の「繰り下げ受給」。本当にお得? 年金が増えるって本当?

「将来もらえる年金、少ないのでは…」と不安に思っていませんか? 実は、年金の受け取り時期を変えれば、年金を増やすこともできるんです。老後資金が足りるのかなんとなく不安…という人に、ぜひ知っていただきたいポイントをお伝えします。

年金の受け取りを遅らせれば、年金額がアップ!

西山美紀
西山美紀さん
マネーコラムニスト・ファイナンシャルプランナー
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単に貯蓄額を増やすのではなく、潤いのある毎日のためのお金の使い方・貯め方・増やし方について女性誌やWEBなどで発信するほか、取材・執筆・監修・講演を行っている。現在は早稲田大学人間科学部(eスクール)にて心理学も学ぶ。著書に『お金が貯まる「体質」のつくり方』(すばる舎)、『お金の増やし方』(主婦の友社)など。

 

「私たちの老後は、受け取る年金が今よりも少ないですよね?」と不安に思っている人も多いでしょう。確かに、昔に比べればやや減っているかもしれませんが、だからといって先行き真っ暗というわけではありません。いろいろ打つ手はあるのです。

 

そのひとつが、今回お伝えする「年金を増やす方法」です。

 

65歳から年金を受け取るのが一般的ですが、その時期を後ろにずらすことで、受け取る年金額がアップするのです。これを、年金の「繰り下げ受給」と呼びます。逆に「繰り上げ受給」といって、65歳より前に、例えば60歳や61歳など早めに受け取る場合は、受け取る金額が少なくなります。

年金の繰り下げ受給 イメージイラスト

70歳からなら42%アップ、75歳からなら84%アップ

では、年金を遅らせたら、いったいどれくらい増えるのでしょうか。

 

最大75歳まで遅らせた場合は、年金額は84%もアップします。70歳までなら42%のアップです。1カ月単位で遅らせることができ、1カ月遅らせるごとに0.7%増額されるので、65歳から75歳まで120カ月(10年×12カ月=120カ月)遅らせると、0.7%×120カ月=84%になるわけです。意外と大きなアップだと思いませんか?

 

ちなみに、逆に早く受け取る場合は、1カ月早めるごとに0.4%減額されます。65歳ではなく、60歳から受け取ると、24%ダウンします。この増えたり減ったりした金額は、一生続きます。長生きをする女性の私たちは「年金の受け取りを遅らせて、アップした金額を長~く受け取る」のも、よい方法ではないでしょうか。

 

でも、女性は長生きする人が多いとはいっても、「自分は何歳まで生きるのかわからないから、どうしたらいいのだろう…」と思いますよね。もし、年金の受け取りを65歳から遅らせて、受け取らないまま万一、67歳や70歳で亡くなってしまったら、「あのとき、年金を受け取ればよかった」と後悔するのでは、という人もいます。でも、よくよく考えてみれば、亡くなるその瞬間に「ああ、年金を受け取ればよかった」と考えることはきっとないでしょう。

 

ただ、年金の受け取りを遅らせてから、それまで受け取るはずだった年金を取り戻す手立てもあるので、安心できます。

 

例えば、70歳から年金を受け取ろうと考えて、65歳から年金を受け取らない状態で、67歳で病気がわかって余命が短いとわかった場合などは、その時点から受け取り始めることもできます(特にそういった理由がなくても可能です)。ただし、遡れるのは過去5年分までです。

 

その際の選択肢は、大きくふたつ。

 

●2年間(65歳から67歳まで)分の繰り下げ受給となり、アップした年金を受け取り始める
●65歳から67歳まで受け取らなかった2年間分をまとめて受け取り、さらに67歳から年金を受け取り始める

 

です。65歳より遅れて年金を受け取る「繰り下げ受給」は、意外とメリットが多いのです。

 

ふたつの年金は、別々に繰り下げ受給ができる

これまで厚生年金に加入していた人は、「老齢基礎年金」「老齢厚生年金」のふたつの年金を受け取れます。このふたつは、別々に受け取る時期を変えられます。「どちらかは65歳から受け取り、どちらかは65歳より遅らせる」という選択肢もあるのです。

 

また、夫婦の場合、「夫は65歳から受け取る」「妻は70歳から受け取る」などと、時期を分けることもできます。夫婦で考えると、遅らせるのは妻のほうがお得なケースが多いでしょう。一般的に女性のほうが長生きで、年金額アップの年数が長くなる可能性が高いですし、男性のほうが年金受給額が多いことが多く、受給額が少ない人を遅らせたほうが、増えた年金に対する税負担を抑えられるからです。

 

年金の受取額は、さまざまな条件によって変わり、細かい注意点もあります。50代後半くらいになったら、自分やパートナーの年金額を確認して、プランを立てるのもよいでしょう。具体的なプランを考える際には、年金事務所に行って相談することもおすすめです。

 

老後に受け取る「年金」は、「長生きのための保険」と考えよう

とはいえ、「老後に受け取る年金」は、「老後のご褒美」というよりも、「保険」としてとらえることが大切です。「保険」といえば、海外旅行で急病や盗難などに備える保険や、日常生活で病気やケガに備える保険などがありますよね。「保険=万一のリスクに備えるもの」です。老後に受け取る年金とは、実は「長生きするリスク」に備えるものなのです。

 

極端な話、事前に「65歳で亡くなること」がわかっていれば、65歳から年金をもらう準備をする必要はありません。でも、「90歳、100歳、いったいいつまで生きるのだろう…」と思いながら長生きする可能性があって、いったいどれだけお金を準備しておけばよいのか想像がつきませんよね。

 

そのために、一生涯受け取れる「年金」があるというわけです。どんどん取り崩して減っていく預貯金とは異なり、年金なら、一定額を一生、つまり死ぬまで受け取ることができるわけですから、長生きをしても、一定額を受け取れる安心感があるのです。「長生き」はおめでたいことなのですが、お金の面では「リスク」として考える必要性もあることを念頭に置いておきましょう。

 

65歳から数年間年金なしでも大丈夫な準備をしよう

特に女性は平均寿命が長いため、年金を受け取る期間も長くなります。そのため、もし年金の「繰り下げ受給」によって、年金額を増やすことができれば、その増やしたメリットを長期間享受できます。そのため、65歳から数年間は年金を受け取らずに、生活していけるような家計や貯蓄を作っておくことを目指すのもよいでしょう。月当たりの支出を増やしすぎないようにしたり、65歳以降も収入を得られるような仕事を考えておいたり、貯蓄の一部を投資に回してお金にも働いてもらったりと、今からできることがたくさんあります。

 

合わせ技で、老後の安心をつくっていきたいですね。

 

 

イラスト/平松昭子 文/西山美紀

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