ではさっそく、老後の支出平均額を確認していきましょう。
「総務省 家計調査報告〔家計収支編〕2024年」の「65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)」と「65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)」のデータから、夫婦世帯の場合と、単身世帯の場合、それぞれで見ていきます。
「65歳以上の夫婦」の支出はどれくらい?
「65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)」のデータによると、1カ月当たりの消費支出が25万6521円、非消費支出(税金、社会保険料)が3万356円です。
消費支出(25万6521円)の内訳は、食料7万6352円、住居1万6432円、光熱・水道2万1919円、家具・家事用品1万2265円、被服及び履物5590円、保健医療1万8383円、交通・通信2万7768円、教養娯楽2万5377円、交際費2万3888円などです。
消費支出・非消費支出を合わせて、月に28万6877円です。
「65歳以上の一人暮らし」の支出はどのくらい?
「65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)」のデータによると、1カ月当たりの消費支出が14万9286円、非消費支出(税金、社会保険料)が1万2647円です。
消費支出(14万9286円)の内訳は、食料4万2085円、住居1万2693円、光熱・水道1万4490円、家具・家事用品6596円、被服及び履物3385円、保健医療8640円、交通・通信1万4935円、教養娯楽1万5492円、交際費1万6460円などです。
消費支出・非消費支出を合わせて、月に16万1933円です。
あくまでも平均値ではありますが、自分の老後のイメージと比べていかがでしょうか。
それぞれの費目を見て、「これよりは自分は少ないだろう」「自分はこれより多く使いたいな」などと少しイメージが沸いてきたのではないでしょうか。
老後に支出が多くなりがちな4つのケース
人によって、老後に必要なお金は大きく異なります。特に、平均より多くなりがちで、注意したいケースを4つお伝えします。
ケース1)現役時代から「生活費」が多い
老後を迎える前の現役時代に、生活費が多いかどうかもポイントとなります。
現役時代に生活費が多くかかっている場合は、仕事を引退して老後生活に入ったとしても、急に生活費が減ることはあまりないでしょう。
「外食が多かったけれど、料理に目覚めた」「野菜を作るようになって、食費が減った」「仕事柄、交際費や洋服代などにお金がかかったが、老後はかからなくなった」という場合もあるかもしれませんが、ライフスタイルや好きなものがあまり変わらなければ、支出が突然大きく減ることは稀なので、老後もある程度の支出が想定されます。
しかし、現役時代から生活費をコンパクトにしておけば、老後も生活費があまり必要ではなくなります。現役時代に必要最低限+αまで絞れておくと、老後の生活にゆとりが生まれるでしょう。
ケース2)高齢出産で教育費がかかる
高齢出産の方の場合は、65歳以降も教育費等がかかっている場合があります。
例えば、42歳で出産した場合、65歳になるときには子どもは23歳です。
大学4年生、もしくは大学院生かもしれませんし、6年制の学部に通っているかもしれません。留学をしたり、資格取得のための準備をしていたりという可能性もあります。
もうしばらく学費がかかることが考えられますので、多めの支出を見込んでおきましょう。
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ケース3)賃貸に住んでいる
先ほどのデータでは、住居費の月平均額が、夫婦世帯の場合は1万6432円、単身世帯の場合は1万2693円でした。
賃貸住まいの人は、「いやいや、月1~2万円では住めない」と感じたかもしれません。
この平均額には、住居費がほとんどかからないマイホームのローンを完済している人や実家住まいの人なども含まれているため、低めになっています。
賃貸住まいの場合は、もっと多くお金が必要になることは確実ですので、想定しておきましょう。
ケース4)親の介護などに費用がかかる
家族の大変な姿というのはあまり想像したくないものですが、親の介護に直面することも考えられます。
生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(2021年度)によると、介護費用は、住宅改造や介護用ベッドの購入など、一時的な費用の合計が平均74万円、さらに、月平均8万3000円かかっています。
介護期間は平均5年1カ月で、10年以上というケースも17.6%あります。
介護費用を親が払うのではなく、自分が負担する場合は、その金額についても心づもりをしておきましょう。
「自分の場合」の老後について考えてみよう
平均額ではありますが、具体的な数字をチェックしてみて、自分の老後のイメージが少し沸いてきたのではないでしょうか。
老後の支出については、実は現役時代から下げることができるものもあります。
先ほどの、注意したいケース1に挙げたように、生活費をコンパクトにしておくこと。
例えば、スマホ代やサブスク代、保険料などで、下げられるものがないかを見直しておくことも効果的です。
それには、現役時代の今、月々どんな支出があるかを一度チェックしてみることがおすすめです。銀行口座の入出金情報やクレジットカード明細、スマホ決済の履歴、ECサイトの購入履歴などを見ると、「これは不要だな」「これは金額を下げられそうだな」というものが見つかるかもしれません。
上手に支出を下げられれば、現役時代にゆとりができますし、老後にもゆとりができます。ぜひ一度、今の生活費についてもチェックしてみてください。

単に貯蓄額を増やすのではなく、潤いのある毎日のためのお金の使い方・貯め方・増やし方について女性誌やWEBなどで発信するほか、取材・執筆・監修・講演を行っている。現在は早稲田大学人間科学部(eスクール)にて心理学も学ぶ。著書に『お金が貯まる「体質」のつくり方』(すばる舎)、『お金の増やし方』(主婦の友社)など。
イラスト/平松昭子 文/西山美紀