日本の色を指先に纏う
東京の画材店で、4年ほど前、初めて目にした「胡粉ネイル」。どうして、ここでネイルコートを売っているのか、不思議に思ったものです。店の人に尋ねると、実は、このネイルは、日本画材や京人形の顔料として、古くから使われてきた「胡粉」からできたものでした。製造元は、京都にある創業260年という老舗の顔料メーカー「上羽絵惣」。創業以来、名だたる日本画家が贔屓にする店で、美術館に並ぶ日本画や寺院などの襖絵も、この店の品で描かれたものも…。
爪にやさしい 「胡粉ネイル」 10ml 1,200円
さて、この「胡粉ネイル」なるものを開発したのは、創業家の石田結実さん。京都に暮らし、いろいろなご縁から親しくなった石田さんは、20代のお嬢様をもつ素敵なourage世代。もちろん、いつも爪には美しい色が輝いています。
そもそも「胡粉」の原料は、ホタテ貝の貝殻。つまり天然のカルシウムで、それを画材としてではなく、もっとほかの分野に応用できないかと、あれこれ思案なさったそう。店に並ぶ顔料の美しい色を見て、女性ならではの発想で誕生したのが、なんと私が、偶然、画材店で目にした「胡粉ネイル」だったとは…。
実は、色の美しさだけではないのが、このネイルコートの魅力。石田さん自身、爪が弱く、ずっとネイルのオシャレは控え気味だったそう。そんなご自身の苦い経験から、この「胡粉ネイル」は、爪にやさしいものを作りたいと、ツンとする刺激臭を排除、着け心地も軽やかに、そして、なにより爪に負担をかけやすい除光液ではなく、アルコールで落とせ、さらに胡粉に含まれる真珠層が、爪に自然な艶を与えるという、爪の弱い人でも、安心して使えるうれしい製品に。
ネイルの色は、日本画の顔料メーカーらしく、「珊瑚」「鶯緑」「水浅黄」など日本伝統の色を中心にラインナップ。四季の草花など自然の色から生まれた日本の色は、はんなりと爪を彩り、和服などにもふさわしいもの。
現在は、その魅力が、多くの女性たちに評判になり、画材店だけでなく、化粧品や雑貨コーナーにも並んでいます。女性の美しい指先の動きほど、目を引き付けるものはありません。京都生まれのネイルコート、艶やかな京の色を、指先に纏う悦びをぜひ…。
上羽絵惣 UEBA ESOU
京都市上京区東洞院通松原上ル燈籠町579 ☎075-351-0693
小原誉子
ブログ「ネコのミモロのJAPAN TRAVEL」 http://blog.goo.ne.jp/mimoron/