80年代、英国美青年俳優たちが映画ファンをドキドキさせました。コリン・ファース(『英国王のスピーチ』(2010年)で、アカデミー賞主演男優賞授賞)ヒュー・グラントなどは今も素敵に活躍していますが、この美青年たちが50代の美中年になった今、彼らに追いつき追い越した若手英国俳優はたくさんいます。
パーフェクトなアメリカ英語を使う英国俳優たちが、確実にハリウッドに進出しています。英国風気品と、舞台で鍛えた演技力をもって、明るい笑顔と完璧に鍛えた肉体を持つ、ハリウッドの美しい俳優たちに果敢に立ち向かっているのです。肉体は鍛えればほとんどの人が何ヶ月間で希望の体型になれますが、英国仕立ての気品と舞台俳優としての厳しい経験は、長い時間と、知性を伴った修練が必要です。
ハリウッド組は、いつも英国俳優の進出を恐れているのは真実です。現在、世界を相手に活躍している英国美青年の代表2人が エディ・レッドメインとトム・ヒドルストン。アメリカ英語を完璧に話すのはハリウッドで仕事をする必須条件ですから、彼らも当然、英米英語を行ったり来たりできる“バイリンギュアル”です。
エディ・レッドメインは『レ・ミゼラブル』のマリウス役で、本格的に世界の檜舞台に踊り出ました。この『レ・ミゼラブル』のオーデションを受けたきっかけが最高です。彼がカウボーイ役で出演していた映画『HICK ルリ13歳の旅』の撮影時のこと。共演者のクローエ・グレース・モレッツ、ブレイク・ライブリーとブレイクの家でカラオケを楽しんでいた時、彼の歌に感動した2人が 「『レ・ミゼラブル』の撮影があるのよ。オーディション受けなさいよ」とすすめたのです。
翌日、自分のトレーラーの中でiPhone で”レ・ミゼラブル“の中の”Empty Chairs, Empty Tables”を歌う動画を自撮り、プロデューサーに送ったエディ。この後は説明する必要はありませんよね。映画の中でエディが熱唱する“Empty chairs, Empty Tables”に涙した女性は大勢いるはずです。
その後 、『博士と彼女のセオリー』 (2014年,アカデミー主演男優賞授賞), 『リリーのすべて』(2015年,アカデミー主演男優賞候補) そして去年の暮れ公開され4億ドル近い興行収入をあげたヒット作『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』と 素晴らしい作品に恵まれて前進しています。
もう一人の英国美青年俳優は、 いっとき“ネクスト・ジェームス・ボンド”と騒がれたトム・ヒドルストン。シェークスピアもこなす演技力と鍛え上げた肉体とアクションは、アメコミ映画『マイティ・ソー』の悪漢ロキ役で全開してます。彼も2015年の“アイ・ソー・ザ・ライト”でカントリーシンガーのハンク・ウィリアムスを演じ、歌唱力とギターの腕前を披露しました。
この二人は年齢や生い立ちの背景が似てるのですが、個性が全く違うので同じ役を挟んでぶつかり合うことはありません。偶然にも、トムはエディのイートン校(英国超エリート中高一貫の全寮制男子校)での一年先輩。二人ともプリンス・ウィリアムと同時期にこの学校に寄宿して、将来の英国王と日常を分かちあった仲だったことはすでに知られています。
エディはその事を質問されて「確かに13歳から18歳までプリンス・ウィリアムと同級だった。でも接点はラグビーを一緒にやったくらいで友だちというわけではなかったし、彼も目立たないように気を使っていたと思う。普段と違うことが起こるのは、毎日曜日のチャペルの時間。 爆弾を嗅ぎ分ける犬が何頭かチャペルの中で、オルガンの周辺とかのにおいを嗅ぎまくってチェックするんだ」と笑ってました。
その後トム&エディは 共にケンブリッジ大学に進み、エディは美術史、トムは古典文学を専攻して卒業しました。二人とも家庭環境、受けた教育、共にまぎれもなく、英国の超エリートです。
そして二人に共通する英国らしさは、自分たちの背景を絶対に吹聴しない、聞かれても謙遜しながらちょっと自嘲気味に話すおくゆかしさです。無限の可能性を持った、現・英国美青年組です。