高齢化が進む現代、浮き彫りになってきたのは年齢と「老い」は比例するものではないということ。いくつになっても若々しく元気な人、久しぶりに会ってみたら急に老け込んだと感じた人…。老化の進み具合は人によってかなり差がありますよね。では、この差は何から?
「老いはどうして起こるのか、細胞分裂限界説やフリーラジカル説、外的要因などそのメカニズムには50以上の仮説があり、長い年月をかけて検証されてきています」とは、医学博士・久留米大学医学部教授の山岸昌一先生。
分裂を繰り返す細胞には寿命があるという細胞分裂限界説は、細胞分裂しない脳や心臓の老いが早いので矛盾が生じます。また、細胞が酸化するフリーラジカル説も、抗酸化力が低くても長寿な生き物がいることから疑問視されてきているのだそう。そんな中で、近頃注目されているのが老いには糖化が関係しているという説です。
砂糖(糖)や卵(タンパク質)を混ぜたホットケーキの生地を焼くとこんがりと焼き色がつきます。これが糖化反応で、食事から摂った過剰な糖と、体を構成するタンパク質が体温で熱せられることで私たちの体にも起こります。
そこで問題となるのが、糖化により人体のタンパク質が劣化したAGE(終末糖化産物)になってしまうこと。私たちの体にはもともと傷ついた細胞を修復する力が備わっていますが、過剰に蓄積してしまうと修復できない状態に!タンパク質は、血管や筋肉、皮膚、骨など体のあらゆる部分に存在しているだけに、AGEに変化するとさまざまな障害を引き起こすと言われているのです。
「最近では、脂肪肝や肝硬変などがAGEによって進行しやすくなるとわかってきました。骨のしなやかさが失われた骨粗しょう症、血管のしなやかさが失われて引き起こされる動脈硬化にもAGEが関与しています」
そしてもちろん、皮膚にあるコラーゲンはタンパク質ですから、AGEは見た目を老けさせる原因にも!体内老化が一番最初に現れてくるのが見た目、すなわち「老け顔」だということが多くの研究でわかってきているそうです。
AGEの蓄積に関与しているのは喫煙、運動不足、精神的ストレス、睡眠不足、朝食抜き、甘い物の過食、と山岸先生。暑い今の季節は、ビールなどの飲料、紫外線の影響もあるそうです。思い当たる節だらけのわたくしライターM(52歳)。セミナー会場で糖化年齢を測定してみたところ…結果は約70歳!!これはかなりの危険レベル…(涙)。
次のページで、AGEの対策についてご紹介します。
食事や生活習慣に気をつけることでAGEを抑えることができる、と山岸先生。
そんな抗糖化を実践する食事のポイントについて、レクチャーしてくださったのは管理栄養士の浅野まみこさんです。
「まずはパスタ&パンといった炭水化物の多い食事や調味料の糖分に気をつけて糖質の摂取量を減らすこと、次に食物繊維の量を増やしたり精製されていない穀物を選ぶなどして糖質の吸収を抑えることも意識なさるといいですね」
糖質の吸収を抑えるには、酢もおすすめとか。酢に含まれる「酢酸」には急激な血糖値の上昇を抑える働きがあるんですって。
3つめは、食事のAGE量を減らすこと。ホットケーキの焼き色が糖化ですから、揚げ物やこんがり焼くなどの調理法はAGEを増やしてしまうわけです。AGEの量は、生<蒸す・茹でる<煮る<炒める<焼く<揚げるの順番で増えてしまうそうですよ。
そしてぜひ取り入れたいのが、4つめのポイント、抗糖化食材を使うこと。トマトやホウレンソウ、インゲンに含まれるαリポ酸には抗糖化作用があります。もうひとつ、ブロッコリーなどアブラナ科野菜に含まれる成分スルフォラファンも見逃せません。スルフォラファンはファイトケミカルの1種で、抗糖化作用のほか抗酸化作用、解毒作用、メタボ予防なども報告されています。成熟したブロッコリーよりもスルフォラファンを多く含んでいるのが、発芽直後の新芽「ブロッコリー スプラウト」や「ブロッコリー スーパースプラウト」です。
セミナーの最後に、浅野さんが考案した抗糖化メニューを試食することができました。豚肉と野菜のトマト煮込みに、雑穀ごはん、大根とゴーヤの浅漬け、ツナと大根とブロッコリースーパースプラウトのサラダ、具だくさん味噌汁。
特に気に入ったのがコレ、「ツナと大根とブロッコリースーパースプラウトのサラダ」です。糖化年齢が危険レベルだっただけに、セミナー以来このレシピを定期的に食べています。材料はツナ缶と千切りした大根、大葉、ほぐしたブロッコリースーパースプラウト。これに酢、醤油、ごま油、すりごまで味付けして混ぜれば完成と簡単。しかも、ブロッコリースーパースプラウトはスルフォラファンを成熟ブロッコリーの約20倍含んでいて、その効果は約3日感持続するそう。私の糖化、改善してるといいなぁ。