がんサバイバー素敵女医の「私の場合」
今や2人に1人はなるともいわれる「がん」。素敵女医の皆さんは、この病気にどう向き合っているのでしょうか? 皮膚科・形成外科の水野寿子先生にお話しを聞きました。
がんを目の敵にするのではなく、 どう共存していくかが重要
水野寿子さん
Hisako Mizuno
56歳 皮膚科・形成外科 旭川皮フ形成外科クリニック
水野先生の経緯
●28歳のときに子宮がんに
●化学療法をしたのちに手術
●術後、薬物療法と放射線治療を受ける
●治療に8カ月を費やす
●治療を終えて1カ月後に仕事に復帰する
●リンパ浮腫に悩まされる
●術後28年が過ぎた今も、半年に一度、腫瘍マーカーを含む血液検査と超音波、組織検査などを受けている。PET検査は医師と相談しつつ継続
●現在も2年に一度、リンパ浮腫の手術を受けている
がん治療を終えたあとの QOLも上げていきたい
水野寿子先生は、28歳のときに子宮がんになりました。検査を受けたときにはかなり進行していて、原発巣がどこかわからない状態だったのだとか。
「臨床的にも病理学的にも子宮体がんか子宮頸がんか同定できず、原発部位は不明のまま。でも当時、自覚症状はほとんどなく、たまに不正出血がある程度だったんです。ほかには腹痛も貧血もありませんでした。不正出血の量が多かったので、たまたま手があいていた院内の婦人科の医師に診てもらったら見つかった、という感じでした」
手術の前に、薬物療法でがんを小さくすることになった水野先生。脚の動脈の中に管を入れ、そこから抗がん剤を注入する治療を受けたそう。
「餅は餅屋で、すべてプロである先生にお任せしていました。私の場合は、抗がん剤の副作用で落ち込むとか、うつっぽくなることはなかったですね。ある程度がんが小さくなったところで、広汎全摘手術とリンパ節郭清(病巣付近のリンパ節の切除)をしました」
手術後にもう一度抗がん剤治療をし、さらに放射線治療を実施。短期の入退院を繰り返しながら、約8カ月を治療に費やしたといいます。
「その後、1カ月ほど休んで仕事に復帰し、復帰してからは普通に当直もこなしていました。ただ、自分ががんになってわかったことですが、治療する医師の側は『命が助かったんだからいいじゃない』という感じで、患者のQOLを考えていないこともあるのです。例えば手術後のリンパ浮腫にしても、外科が婦人科と連携しておらず、医師がうまく対応できない。私は現在も2年に一度リンパ浮腫の手術をしていますが、それですごく調子がよくなるかというと、そうでもないのが残念です」
水野先生は今も半年に一度のペースで、がんの検査を受けています。
「PET検査(陽電子放射断層撮影。検査薬を点滴で人体に投与し、がん細胞だけに目印をつける検査)は、普通は5年くらい様子をみて卒業になるのですが、私は腫瘍マーカーがずっと高めなのもあり、状況が特殊なので、医師と相談して続けています。今はがんを目の敵にするよりも、どう共存していくかが重要だと考えています。健康のためにサプリメントをとったりもし て、体調を整えながら、上手にがんとつき合っていきたいです」
イラスト/ミック・イタヤ 取材・原文/上田恵子