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コロナ後遺症は体内の「慢性炎症」が引き起こしていた!/根来秀行教授「慢性炎症が万病のもと」

根来秀行 さん

根来秀行 さん

医師、医学博士。1967年、東京都生まれ。この連載から生まれた『ハーバード&ソルボンヌ大学 Dr.根来の特別授業 病まないための細胞呼吸レッスン』『ハーバード&パリ大学 根来教授の特別授業 「毛細血管」は増やすが勝ち!』(いずれも集英社)が好評発売中。ハーバード大学医学部&ソルボンヌ大学医学部客員教授のほか、奈良県立医科大学、信州大学特任教授、高野山大学など、複数の大学の客員教授・教授を兼任。専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、睡眠医学など多岐にわたり、世界の最先端で臨床・研究・医学教育にあたる。

Hideyuki Negoro MD and PhD

Professor of Medicine, Director, Visiting Professor

Harvard Medical School
University of Paris
The Graduate School of Project Design
University of Tokyo
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新型コロナウイルスは、季節性インフルエンザと同じ「5類」感染症に移行。その一方でパンデミック以降、不調を訴える人が後を絶ちません。「症状はさまざまなれど共通するのは体内の炎症です」と指摘するハーバード大学&ソルボンヌ大学医学部客員教授・根来秀行さんに、ぐうたらライター・いしまるこがお話を伺いました。

気づかぬうちに進むサイレントキラー

いし 新型コロナ対策もずいぶん緩和されましたが、すっきり収束とはいかないですね。

 

根来 今も新型コロナ感染での症状に苦しむ患者さんをたくさん診ていますし、ワクチンを打っていても重症化する人もいます。軽症ですんだ人でも、後遺症に悩まされている人は意外にいるんです。

 

いし 後遺症はどんな訴えが多いですか?

 

根来 得体の知れないだるさとか疲労感とか、ちょっとした負荷での倦怠感とか。味覚や嗅覚の異常、急な頭痛や片頭痛が続いている人もわりといます。

 

いし つらい…。これまでのような生活が送れなくなって、精神的にも落ちてしまいますね。

 

根来 うつに陥る人も多いです。

 

いし ワクチン接種後からの不調を訴えている声もよく聞きます。帯状疱疹(たいじょうほうしん)にかかった人は、私の周りでもけっこういますよ。

 

根来 ワクチンによって免疫系がバランスをくずして、不調を引き起こしている可能性も否定できませんね。いずれにせよ、新型コロナ以降のさまざまな不調の根っこに、慢性炎症があることは確かです。

 

いし 慢性的な炎症ですか?

 

根来 はい。炎症は体が何かしらの負荷を受けた際に体が起こす反応のことですが、急性炎症と慢性炎症があるんです。

急性炎症・慢性炎症/イラスト

●急性炎症

外敵を排除したり、外傷を修復しようとする過程で起きる炎症反応。比較的短期間で治まります

●慢性炎症

全身の臓器などに起きる持続的な弱い炎症。自覚症状は少なく、長く続くと臓器の機能が損なわれます

 

いし 風邪をひいたときに喉が赤く腫れて痛くなったり、熱が出たりするのは急性炎症?

 

根来 ですね。「熱くなる」「赤くなる」「腫れる」「痛みを伴う」といった兆候が見られます。

 

いし 口内炎や関節炎、日焼けや虫刺され、打ち身も炎症ですか?

 

根来 はい。異物が侵入するなど、体に非常事態が起きると、現場の細胞は「炎症性サイトカイン」という情報伝達物質を出してSOSを発令し、全身から免疫細胞を呼び寄せます。その際に炎症が起きるわけですが、炎症によって血流が上がることで、免疫細胞が現場に集まりやすくなったり、発熱で体温を上げることでウイルスの活性を弱めているんですね。

 

いし つまり、炎症は体がウイルスなどの異物と戦ったり、ケガや病気を治そうとしている証拠でもあると。

 

根来 その通り。炎症は免疫反応なんです。

本来は体の防御反応ですから、通常であれば一定の期間が過ぎれば炎症は治まり、病気やケガは回復するんです。そのように比較的早く治まる炎症が急性炎症です。ただ稀に、急性炎症が急激に悪化することもあります。

 

いし パンデミック初期には、急激に悪化して肺炎に陥り、重症化するケースが続出しましたね。

 

根来 免疫細胞がウイルスと戦うために作った炎症性サイトカインが過剰に放出されると、制御不能になって自分の細胞まで傷つけてしまうんです。サイトカインストーム、いわゆる免疫の暴走です。

 

いし 慢性炎症はもっと緩い?

 

根来 慢性炎症は急性炎症と比べると低レベルの炎症で、炎症が長時間持続して慢性化した状態です。サイトカインストームのように大火事を起こすのではなく、小さな火種がくすぶり続けている感じですね。

鎮火! くすぶってますね/根来秀行教授

いし 体の中に火の不始末があるみたいで、なんだか不穏だなあ。

 

根来 そうなんです。慢性炎症は炎症レベルが低いため、自覚症状を持ちにくい。気づかぬうちに炎症が継続してしまうと、「線維化」を起こして臓器が硬くなったり、本来の機能を果たせなくなったりして、さまざまな病気を引き起こします。慢性炎症が「サイレントキラー」と呼ばれるゆえんです。

 

いし 静かな殺し屋…。

 

根来 コロナ後遺症も、ウイルスが検出されなくなり急性炎症が治まっても、炎症が慢性化して体調不良が続いている状態と考えられます。新型コロナは無症状や軽症の人も多いので、知らぬ間に感染し、無自覚なまま回復したものの、慢性炎症に陥って不定愁訴を招いている人もいるかもしれません。

 

 

いし では、次回は「慢性炎症」が体と心にどんな影響をもたらすのか、さらに詳しく伺っていきます!

 

皆さん今日も素敵な一日を!

 

 

根来秀行
根来秀行さん
医師・医学博士。ハーバード大学、ソルボンヌ大学、奈良県立医科大学、高野山大学ほか、複数の大学の客員教授を兼任。
公式サイトを見る

専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、睡眠医学など。『ハーバード&ソルボンヌ大学 Dr.根来の特別授業 病まないための細胞呼吸レッスン』『ハーバード&パリ大学 根来教授の特別授業 「毛細血管」は増やすが勝ち!』(ともに集英社)など著書多数

 

いしまるこさん プロフィール画像

いしまるこ(いし)

サボリ癖が抜けないぐうたらライター。締め切り前でもやる気が起きないのは、慢性炎症のせい!?

 

 

撮影/角守裕二 イラスト/浅生ハルミン 構成・原文/石丸久美子

 

 

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