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【専門医に聞きました】更年期女性に多い「微小血管狭心症」。胸の痛みや息苦しさなど症状の特徴と治療法を解説

更年期世代の女性に多発する「微小血管狭心症」は2018年に世界的な診断基準が示されたばかりで、診断がむずかしく、見逃されがちな病気。典型的な胸部圧迫感のほか、息苦しさや吐き気が起こる、喉、あご、背中など広範囲に違和感や圧迫感がある、そんな症状が10分~1時間以上続いたら専門医に。

教えてDr.!

 

相談

時々、胸が痛み病院に行ったのですが、循環器系の疾患ではないと言われ、原因がよくわかりません。なんの病気ですか?

答え

従来の狭心症の症状に当てはまらないことから、見逃されがちでしたが、微小血管狭心症の可能性があります。

 

微小血管狭心症(CMD)
微小冠動脈が原因で起こる狭心症で、胸の痛み、苦しさが長く続くのが特徴です。

 

心臓に酸素と栄養を送っている血管を冠動脈といいます。その冠動脈が狭くなり、十分な血液が送れなくなるのが狭心症です。

 

冠動脈は心臓の筋肉の中で樹枝状に分岐して段々サイズが小さくなり、毛細血管となります。この微小冠動脈がなんらかの理由で障害を起こすのが微小血管狭心症です。

 

男女問わず、幅広い年齢層に起こり得ますが、特に40代後半~50代の更年期世代の女性に多発します。

 

典型的な胸部圧迫感だけではなく、息苦しさや吐き気、喉、あご、背中という広範囲に違和感や圧迫感が起こることも多く、その持続時間が10分~1時間以上と長いのが特徴です。通常の狭心症では5~10分で終わることから、循環器系の疾患ではないと診断されることがよくあります。

 

こうした状態になる原因は、①微小血管が発作的に収縮して痙攣(けいれん)を起こす、②微小血管が拡張できないなどの機能障害、③筋肉に対して微小血管自体が少ないケースです。

 

その状態の誘因のひとつは、更年期に女性ホルモンが減ることにより、微小血管が拡張しにくくなることが考えられます。

 

この病気のやっかいなところは、診断が難しいことです。微小冠動脈は心臓の動脈の約95%を占めますが、0.3㎜以下の細い血管は心臓カテーテル検査の冠動脈造影などに映らないので、見逃されてきました。

 

診断はまず、同じような症状を起こすほかの心疾患、食道や胃などの消化器疾患、胸部の整形外科的疾患などの可能性を排除します。

 

そのうえで、心臓カテーテル検査で薬剤による負荷検査を行い、冠動脈の痙攣が起こるか、胸痛や心電図の変化が誘発されるかを調べます。同時に冠動脈と冠静脈の乳酸値を調べる検査を行うこともあります。最近では冠動脈に柔らかいワイヤーを入れて、微小冠動脈の機能を評価することも行っています。

 

この病気の世界的な診断基準は2018年に示されたばかりで、対応する医療機関が限られます。

 

治療方法は、原因に応じた内服薬による薬物治療と生活指導が中心になります。微小血管の痙攣が原因の場合はカルシウム拮抗剤が、拡張障害にはβ遮断薬が有効なことが多く、症状に合わせて複数の薬を併用することもあります。

 

自分で行うことは、禁煙、飲酒を控える、精神的ストレスをためない、定期的な有酸素運動で全身の血管機能の改善に努め、発作が起きないように注意することです。

 

まとめ

自分で行う対策

  • ●喫煙、飲酒を控える
  • ●ストレスをためない
  • ●適度な有酸素運動を習慣にする

 

病院で行う治療法

  • ●投薬療法
  • ●心臓リハビリテーション
  • ●禁煙などの生活指導

胸が痛む女性、微小血管狭心症/イラスト

 

 

【答えてくれた先生】

清岡崇彦
清岡崇彦さん
池上総合病院 循環器内科科長、ハートセンター長

東海大学医学部内科学系准教授。原因不明の持続性胸痛「冠微小循環障害CMD」の診断治療に、この疾患がまだ知られていない15年以上前から取り組むスペシャリスト

 

イラスト/macco 取材・原文/山村浩子

 

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