40代、50代の4割以上がひざ痛を感じているそうです。今回は、専門医の銅冶先生が導き出したひざ痛の4つの原因をご紹介します。
お話を伺ったのは…
銅冶英雄さん
Hideo Doya
お茶の水整形外科 機能リハビリテーションクリニック院長。運動療法、オーダーメイド靴、栄養療法を組み合わせた治療が好評
ひざ痛の原因はこの4つだった!!
「ひざの痛みは、ひざ関節だけを診ていても効果が上がらないことも多いんです」と銅冶先生。長年患者と向き合い導き出したのが、ひざ痛の原因を腰椎型、関節型、お皿型、筋肉型の4タイプに分けて治療を行うことでした。
原因1 腰椎型
腰椎のずれなどが原因
腰椎の中には脊髄が通っていて、そこから左右に神経根が枝分かれしています。腰椎の椎間板にヘルニアなどの問題が生じると、腰から離れたひざに痛みを感じることが。なかには、腰痛がなくてもひざ痛が現れたり、ひざに水がたまることもあります。この「腰椎型」の患者は銅冶先生のクリニックでもとても多く、上位を占めるそう。
原因2 関節型
軟骨のすり減りなどが原因
ひざ関節を包む関節包の炎症や歪み、軟骨がすり減ることで生じるひざ痛です。関節包には神経が通っているので、ここが歪んだり炎症があると、すぐに痛みを生じます。一方、軟骨には神経がないため、軟骨の損傷だけでは痛みを感じません。しかし、すり減った軟骨の破片が骨膜を刺激すると、炎症を起こしてこれが痛みの原因に。
原因3 お皿型
ひざのお皿のずれが原因
ひざのお皿「膝蓋骨」が歪んだり、ずれたりすると、お皿が偏った動きをします。お皿の周囲にある関節包や腱、筋肉には神経が通っているので、その動きが刺激になって痛みが生じます。特にひざの前面に痛みを感じやすく、ひざを動かしにくくなるなどの症状が。動かすとコリコリと音がすることもあります。
原因4 筋肉型
太ももやふくらはぎの筋肉が原因
筋肉の異常がひざ痛の根本的な原因となることはありませんが、筋肉の治療を行わないとひざ痛が治らないケースがあります。ひざ関節に異常が起きると、ひざを保護するために筋肉が緊張します。これ自体はいい反応なのですが、この緊張が長く続き、つねに収縮した状態になると、やがて筋肉そのものが痛みの原因になるのです。
銅冶先生が治療したひざ痛111例の原因部位の割合は、関節86%、腰椎68%、お皿20%、筋肉14%。ひざ痛の原因はひとつだけでなく、いくつかの原因が重なっている場合があるからです。その主となる原因部位に限ると、腰椎55%、関節40%、お皿3%、筋肉0%に。次回から順に取り上げる部位別体操は、おもな原因部位で多い順に紹介しています。
原因を4つに分けることで
治療効果がアップ
痛みの原因はとても複雑で、レントゲン写真で見るひざ関節の変形が、そのままひざ痛の原因とは限らないといいます。
「例えば、リハビリでは歩きやすくなっているのに、レントゲンでは以前より関節の状態が悪くなっていることがあります。その逆で、痛みがひどいのに、レントゲンでは異常が見られないケースも」
ひざの痛みにはひざ関節の多くの組織が関係しているため、原因がなかなかつかめないのです。
「試行錯誤しながらそんな患者さんの治療に当たっているうちに、ひざ痛の原因を4つに分けて考えると、治療に結びつけやすいことがわかりました」
その4つの原因とは、①腰椎、②ひざ関節、③ひざのお皿、④ひざまわりの筋肉。この4つのタイプ別に適切な体操"痛みナビ体操"を行うことで、高い治療効果が認められたのです。
「まずはチェック項目(次回の連載以降順に紹介)をひと通り行い、どの動きをしたときに痛みが軽減するかで、自分のタイプを見極めます。そのタイプに即した体操を実践して、痛みが軽減すればそのまま継続を。悪化する場合は、もう一度タイプ診断からやり直して、自分に合った体操を見つけてください」
次回からは、自分がどのタイプかわかるチェック方法をご紹介していきます。
撮影/フルフォード海 イラスト/木下綾乃 構成・原文/山村浩子