人生100年時代の今、健康寿命を延ばすことやアンチエイジングが気になるところですよね。最近の研究では老化のメカニズムが遺伝子レベルで解明されつつあり、「細胞再活性化」が老化研究やアンチエイジング研究の主役として注目されています。
この研究のカギを握る、「オートファジー」研究の権威である大阪大学の吉森保先生と、「サーチュイン遺伝子」研究のスペシャリストである九州大学の片倉喜範先生によるセミナーに参加し、「細胞再活性化」について学んで来ました!
◆細胞自体の新陳代謝を促し、細胞を元気にすることが大切
まず、吉森先生の「オートファジー」による「細胞活性化」についてのお話からスタート。「細胞は生命の基本単位。人間の体はすべて細胞でできています」と吉森先生。そして、体をつくる細胞が元気かどうかが、健康やアンチエイジングの重要なポイントになるそう。ところが、年齢とともに細胞の新陳代謝が損なわれて機能が低下すると、病気になったり老化が起きたりしてしまうんだとか!
細胞の機能が低下していると、しっかり栄養を与えても機能は戻らないのだそう。アンチエイジングになると思って頑張ってみても、細胞が元気でないと意味がないとはショック!だからこそ細胞の代謝を促して、もう1回元気にすることが大切です。
そこで注目なのが、細胞内部の代謝と健康維持をするシステムである「オートファジー」。
オートファジーの役割の一つとしてはまず、「細胞の新陳代謝」があります。細胞の部品を少しずつ壊し、新しい中身に入れ替えることで、いつまでも新品状態にしてくれるんだそう。つまり、オートファジーがうまく働いていれば細胞が元気な状態をキープできるということなんですね。
そしてもう一つの役割が、「有害物質の除去」。細胞の中に侵入してきた病原体や、活性酸素を放出する壊れたミトコンドリアを回収して排除すること。細胞にとって良くないものを排除することで、細胞の元気がなくなり機能が低下するのを防いでくれます。
◆オートファジーの働きで免疫力アップ&健康寿命を延ばせる
このようにオートファジーは、細胞の機能を維持して細胞が元気であるために大変重要な役割を果たしています。オートファジーの機能は加齢により低下してしまい、うまく働かなくなるとアルツハイマー病や糖尿病などが引き起こされると考えられているのだとか…。でも逆にオートファジーがうまく機能して細胞ケアができれば、細胞が再活性化して免疫力が高まり、病気や老化の予防にもつながることに!
◆「細胞再活性化」のもうひとつのキーワード、長寿遺伝子「サーチュイン遺伝子」
次は、「サーチュイン遺伝子」の専門家の片倉喜範先生が登壇し、サーチュイン遺伝子の働きとそれを活性化する食品についてお話しいただきました。
「サーチュイン遺伝子は、延命・抗老化が期待できるため、別名長寿遺伝子とも言われています」(片倉先生)。個体が老化するとDNAが傷つき細胞の機能が低下してしまいますが、サーチュイン遺伝子は傷ついたDNAを修復し、細胞を再活性化してくれるのだそう。
サーチュイン遺伝子が活性化できれば、下図のように、認知機能の低下や視力低下、免疫機能低下などをはじめ、全身のあちこちで良い効果が期待されるんだとか。サーチュインの活性化ができれば老化せず若い状態に導いてくれるそうで、これはかなり気になります!
◆天然成分「ウロリチン」が、オートファジーもサーチュイン遺伝子も活性化させる!
オートファジーの研究家、吉森先生。サーチュイン遺伝子の研究家、片倉先生、二人とも注目している食品成分があります。それは、ザクロ由来の「ウロリチン」。ウロリチンはサーチュインとオートファジーの両方を活性化することができるのです。サーチュインとオートファジーの両方を活性化することで、オートファジーがダメージを受けたミトコンドリアを分解し、サーチュインが新しいミトコンドリアの合成を促進して新陳代謝を高めてくれる相乗効果があるのだとか。
◆ウロリチンの効果で肌や髪への嬉しい効果も!
ウロリチンでサーチュインとオートファジーが活性化すると、健康効果はもちろんのこと、肌へのいい効果も。2つが活性化することでヒアルロン酸の合成を増大して保湿力をアップすると同時にコラーゲンの分解酵素を抑制し、シワを改善しハリのある肌に導きます。
また、ウロリチンがメラニン産生を抑制し、メラニン合成に使う酵素のチロシナーゼの働きを阻害するので、メラニン合成ができにくくして美白に導いてくれるんだとか。
ほかにも育毛効果が確認されるなど、ウロリチンは肌や毛髪に関する実験効果が確認できているのだそう。健康効果だけでなく、見た目の若々しさにも貢献してくれるなんて、魅力的なお話ですね!これからのトレンドとなる「細胞再活性化」を促進する「ウロリチン」に要注目です!
大阪大学栄誉教授、生命機能研究科長、生命機能研究科及び医学系研究科教授。オートファジー研究のパイオニアである大隈良典先生が国立基礎生物研究所にラボを立ち上げた際に助教授として参加。オートファジー研究の第一人者として研究を続ける。
片倉喜範先生
九州大学大学院農学研究院・教授。アンチエイジング食品創製に向けた食品機能学的研究や老化・寿命制御の分子基盤の解明とアンチエイジング創薬への応用、テロメラーゼ転写制御機構の解明にむけた研究を⾏っている。
◆資料提供/ウェルネス総合研究所
取材・文/倉澤真由美