4回に分けてお届けしている、バセドウ病眼症に悩まされたライターSの治療と手術の軌跡の最終回です。
④眼症を克服!
日帰り手術で、眼球突出21㎜から本来の目つきに!
今年4月に初診を予約。当日に持参したのは眼窩(がんか)のMRIと眼症発症前の写真です。診察時に測った眼球突出度(目がどれくらい出ているか、目の横の骨のきわから眼球表面までを測った数値)は21㎜と、以前かかった眼科での計測値と同じまま。MRI画像での診断では眼窩の脂肪が増えている眼症で、その脂肪を切除すれば眼球全体が引っ込んでまぶたの腫れや目の不調も改善されるとか。
私が持参した写真を見ながら「目が大きい人の場合、眼球突出度は日本人平均の15㎜より出ているもの。Sさんは17〜18㎜までへこめば自然になるはず」と鹿嶋先生。なるほど、発症前の写真は本来の目つきを参考にするために必要だったのです。術後の目に満足できるかは本人次第で、追加の手術も可能、また、手術時や後遺症のリスクについての説明も受けました。内容に納得した私は、手術を2週間後にお願いしました。
●手術を担当してくれた先生
鹿嶋友敬さん Tomoyuki Kashima
眼形成専門医師・医学博士。オキュロフェイシャルクリニック 東京院長。今までに日米通算で5,000件以上の眼窩・眼瞼疾患の手術を担当。海外の学会で年4回ほど講演を行い、つねに最先端の知見を追求している
◆手術前に準備するもの
「眼窩減圧術は病気による変化の治療なので健康保険が適用となりますが、その基準は都道府県によって異なります」(鹿嶋先生)。手術費用約30万円のうち、健康保険の窓口で発行された「限度額適用認定証」を持参すれば、例えば70歳以下で年収約370万円以下なら5万7600円と、会計時の支払額は法律で決められた自己負担限度額に。ほかに手術時に血液循環トラブル防止目的で着用する着圧ソックス、骨の位置や厚さを確認するCT画像、全身麻酔のため胸部レントゲンなど。
※2019年4月取材時の情報です
◆いよいよ手術です!
手術当日、日帰りとはいえ全身麻酔なので、付添人を友人に頼み、一緒にクリニックへ。麻酔担当医から説明を受け、手術着に着替えてからオペ室に入って…。
「大丈夫?」と付き添ってくれた友人に声をかけられ、麻酔から覚めたときには手術は終わっていて回復室のベッドの上でした。看護師さんが圧迫眼帯を取ってくれたときの「目が全然違う!」という友人の驚いた声はうれしかった〜。自分でも早く見たくて手鏡を持たせてもらいましたが、麻酔がまだ抜けきっていないので視界はぼんやり。よくわかりませんでした。
感染の心配があるためタクシーで帰宅したあと、改めて鏡で自分の顔を確認すると…、下まぶたが大きく腫れているものの懐かしい昔の目つきです。下まつ毛は血でガビガビしていましたが、自分の目を見て憂うつにならなかったのは何年ぶりだったろう?
手術について、もう少し詳しくご紹介します。
◆目の奥の脂肪を切除する手術、その実態は!?
「眼窩減圧術は両目1時間ほどで終了。そこに麻酔が効くまでと覚めるまでの時間がかかります。1回の手術で片目につき平均4㏄程度の脂肪を切除することが可能で、約1㏄につき平均で1㎜ほど出た眼球がへこんでいます」(鹿嶋先生)。
ライターSは朝クリニックに行き、お昼には帰宅。切開した下まぶたの奥は縫合せず自然治癒させるので、術後は目から血の涙。でも、アイマスクで冷やしたおかげで痛みはほぼなく、処方された痛み止めは出番なし。術後1週間、目の中に軟膏を塗りました。
◆手術してから完治までどれくらいかかる?
手術当日は麻酔の影響から複視になりやすいそうで、ライターSも左右の目でひとつの物が高さ違いで見え、ダブっていました。翌日には目からの出血や複視がなくなったものの、目の充血や腫れ、内出血がすごいことに! まったく痛みはないのに、見た目はかなり痛そうでした。1週間後からアイメイクOKでしたが、コンシーラーでは隠しきれず。下まぶたの腫れは約2週間ほど、内出血は赤、紫、黄と色の変化とともに濃く出る部分が下の方に移動し、3週間ほどでほぼ気にならない状態に。
〈手術当日〉
〈手術翌日〉
◆術後1カ月たった目つき
1カ月後検診での眼球突出度測定結果は18㎜とねらい通り、内出血、充血はほぼなくなりました。
実は内出血が激しい状態の頃から、うれしくて自撮り写真を友人たちにLINEしまくり。「二重の幅が普通に」「見比べると以前はこの目だったかも」。なぜか「鼻が高くなった」と褒めてくれた(?)友人も。自分としては目つきが優しくなった気が。そして、まばたき時にはまぶたが軽く、触るとまぶたがへこんでいて、目も乾きにくくなり、外を歩いても涙が出ないのを実感! 本来の目つきに戻ったと大満足しています。
◆術後3カ月の検診でも問題ナシ!
7月には3カ月後検診に。複視などの後遺症もなく、発症前の目つきにすっかり戻りました。そして術後半年を過ぎた今も目の調子は上々。喉もと過ぎれば何とやらで、あんなに悩んでいた気持ちも忘れつつあります。抗甲状腺薬の服用も、内科医からそろそろ卒業できるはずだと言われていて、次回の検診できっと…と密かに期待しています。バセドウ病が寛解となるまで、あともう少しです!
◆追記
先日、前回までの記事を読んだというSNSつながりの友人(猫好き仲間)から「実は私もバセドウ病眼症で悩んでいる」とメッセージが届きました。直接会ったこともあるのですが、その時すでに発症していたと書かれていたのでビックリ。まったく気づきませんでした。一方彼女はライターSの目を見て「この人もたぶん眼症じゃないかな。でも、突然その話をしたら失礼よね」とモヤモヤしていたのだそう。
病気のことって、何となくコンプレックスでなかなか人に相談しづらいものだけど、同志となると話は別ですよね。今回自分の体験談を記事にしたいと思ったのも、私と同じように悩んでいる人達が治療の参考にしてもらえれば、という気持ちからでした。
この治療についてもっと詳しく知りたいという人は、私の手術を担当してくれた鹿嶋先生が東京・丸の内にて行う講演会があります。開催日は11月10日(日)、テーマはずばり「バセドウ病眼症への治療」です。詳しい情報や参加申し込みはオキュロフェイシャルクリニック東京のHP内、医院からのお知らせに書いてあります。会場に行くことが出来ない人のために、YouTube配信もするとのこと。
バセドウ病眼症で悩んでいる皆さん、その目のままあきらめずに済む道はあって、早めに治療を始めることが肝心ですよ。どうぞ、納得のいく治療が受けられますように。
イラスト/中野久美子 原文/佐藤素美