自分には関係ないと思っていたけれど
昨今では乳がんに悩む女性が増えたこともあり、「こんなに?」と驚くほど多くの支援団体があります。私も自分が当事者になるまでまったく知りませんでした。
マンマチアー委員会もその一つ。NPO法人女性医療ネットワークが主催する、”女性の乳房の健康を応援する”会です。
実は、この会の実行委員で医療ジャーナリストである増田美加さんには、今回をはじめこの連載の医療的な内容の監修をしていただいたこともあるのです。
こちらで月1回行われている “チアー活動”(セミナー)の今回のテーマは「乳房再建」。コロナ禍で三井記念病院形成外科の棚倉健太先生がオンラインで登壇され、乳房再建の医療現場の最前線がどうなっているのかあれこれ語ってくださいました。
しかーし!
実は、以前から乳房再建はしないと思っていた私は基礎的な部分(例えば用語とか)で話についていけず、?が頭の中を飛ぶ展開に。
結果、ほんのり凹む結果になってしまったのでした。
乳房再建、する?しない?
乳がんに限らず、がんは基本的に外科手術で患部を取り除くことが基本治療になります。乳がんの場合、それは乳房の一部分ですから、全摘の場合はいわゆる「おっぱい」が丸っとなくなるわけです。
この場合、考えなければいけない点が「乳房再建をするか、しないか」ということ。単になくなった乳房をどうするか、ということだけでなく、治療方針にも密接に関わっていることは、以前の連載記事に書きました。
この時には書かなかったのですが、実は私は万が一全摘を選んだとしても、再建手術はしたくないとひそかに思っていました。こんなことを書くと笑われそうですが、がんの怖さよりも、体に人工的なものを入れることにものすごく抵抗感があったからです。
その気持ちはいまだに変わらず、そういう意味合いでも乳房再建というワードは私には縁がないものだとずっと思っていた、というわけなのです。
あらためて、乳房再建ってどういうこと?
それこそ上のイラストレベルの認識しかなかった私ですが、一念発起!
あらためて増田美加さんに教えて頂きました。
以下の【乳房再建の保険適用について】【乳房再建手術には2種類あります】【乳房再建手術を行うタイミングには4種類あります】の部分は、増田さんが教えてくださった基本的な用語や情報になります。
【乳房再建の保険適用について】
2006年に自家組織による乳房再建の保険適用がはじまりました。その後、2013~2014年にかけて、シリコンインプラント(人口乳房)にも拡大しました。
シリコンインプラントだと100万円以上かかった治療費が、保険での自己負担(3割負担の場合)は約30万〜40万円。高額療養費制度を使えば、さらに負担が軽減され、実質的な負担は9万~14万円程度になります。
【乳房再建手術には2種類あります】
1 自家組織(自分の体)を使う方法
お腹や背中の筋肉や脂肪組織をとって、乳房に移植する方法。背中やお腹に傷が残り、手術時間(5~10時間)、入院期間も1~3週間と長くかかるが、柔らかく温かい自然な乳房が再建できる。
2 シリコンインプラント(人工乳房)を使う方法
事前に、ティッシュ・エキスパンダー(組織拡張器)を入れて、胸の皮膚と筋肉を拡張してから、後日シリコンインプラント(人工乳房)を入れる方法。やや硬いが新たな傷あとがなく、手術時間、入院期間も短くてすむ。
【乳房再建手術を行うタイミングには4種類あります】
乳がん手術と同時に行う「一次再建」
1 「一次一期再建」 乳がん治療の手術と同時に、一回で乳房再建を完成させる方法
2 「一次二期再建」 乳がん治療の手術時に、ティッシュ・エキスパンダー(組織拡張器)を入れ、一定期間、皮膚や筋肉を拡張してから、後日手術で完成させる方法
長所
・乳房の喪失感がない
・入院期間が短く、経済的・身体的負担が少ない
・一次二期再建では、エキスパンダー挿入中に、再建方法を熟考する時間がある
短所
・一次一期再建では手術について熟考する時間があまりない
乳がん手術後、一定期間をおいてから行う「二次再建」
3 「二次一期再建」 乳がんの手術とは別に、機会を改めて、一回の乳房再建手術で完成させる方法
4 「二次二期再建」 乳がんの手術後、機会を改めて、ティッシュ・エキスパンダー(組織拡張器)を入れる手術を行い、皮膚や筋肉を拡張してから、その後完成させる方法
長所
・まず、乳がん治療に専念できる
・再建手術についての情報収集と熟考の時間がある
・乳がん手術とは別の施設で再建を行うこともできる
短所
・再建手術の回数が増える(最低でも2回)
・入院手術費用が増える
参考資料/『乳房再建手術Hand Book』(NPO法人E-BeC http://www.e-bec.com/ )
※次回は、ニュース等で話題の「シリコンインプラントの回収問題」の最新情報等を増田美加さんに教えていただき、お伝えします。
理解してから判断することの重要性
こうやって改めて具体的におさらいしてみると、私の貧しいイメージの中では、前述したようにぷよぷよしたシリコンを体の中に入れるレベルで止まっていたことが理解できました(汗)
インプラントにいたっては、「どうしてここで歯の話が出てくるの?」と最初思ったくらいでしたから、改めて反省しきりです。
一口に乳房再建と言っても、これらの要素だけでなく、最新技術やトレンドなどもすべて考えあわせて決めなければいけないのですから、経過観察になったからと言って目を背けず、しっかり新しい情報を得ていくことは大事なことだなと再認識しました。
白状すると、自家再建であってもインプラントであっても、今の自分のメンタルでは避けたいという気持ちがまだ強いです。
けれども、以前のように「嫌」という気持ちですべて避けるのではなく、もし生活に不自由を感じるようなら改めて冷静に考えてもいいのかもしれない、と思うようになりました。
何事も「自分には関係ない」はダメですね。
そう決めつけることによる弊害を、改めて実感しました。