新型コロナウイルスに感染して起こる「肺炎」って他とどう違うの? 対策する方法は? 呼吸器外科医の奥仲哲弥先生に詳しく解説していただきました。
奥仲哲弥さん
Tetsuya Okunaka
呼吸器外科医。医学博士。山王病院副院長・呼吸器センター長。国際医療福祉大学医学部呼吸器外科教授。専門は肺がん治療で、呼吸法や呼吸筋ストレッチなどの普及にも尽力。著書に『医者が教える 肺年齢が若返る呼吸術』(学研プラス)
新型コロナはウイルスが直接肺を攻撃する!
「肺炎」とは、気管支や肺に炎症を起こし、肺の機能が著しく低下した状態です。分類方法はいろいろありますが、一般的には、気管や肺に炎症を起こす原因となる微生物の種類によって大きく3種類に、炎症を起こした肺の組織によって2種類に分けられます(下記参照)。
代表的なのがインフルエンザウイルス。ほかに水ぼうそうの原因となる水痘ウイルス、新型コロナウイルスも含まれます。一般的な風邪の症状で、激しい咳や高熱、倦怠感が出るのが特徴。
圧倒的に多いのが肺炎球菌。ほか、インフルエンザ菌や黄色ブドウ球菌などの細菌が原因で起こります。湿った咳とともに、黄色や緑色を帯びたたんが出るのが特徴です。
マイコプラズマ、クラミジアなど、ウイルスと細菌の中間の性質を持つ微生物が原因の肺炎です。たんが比較的少なめで、乾いた咳が長引くことの多いのが特徴です。
肺の末端にある、ガス交換をする組織「肺胞」が炎症を起こす肺炎です。高熱が出て、咳とともに、膿(うみ)のような黄色や緑色、時には茶褐色のたんがたくさん出ます。
肺胞のまわりにある「間質」という組織で炎症を起こす肺炎。たんを伴わない、乾いた咳が続き、呼吸困難や呼吸不全を起こします。新型コロナウイルスの肺炎にはこれが多く見られます。
でも、新型コロナウイルスは、これらとはまた違った感染の仕方をするのだそう。
「インフルエンザウイルスは上気道周辺に留まり、気管支の炎症程度で治まることが多いのですが、新型コロナウイルスは肺胞にまで侵入し、肺胞のまわりの壁に炎症を起こす“間質性肺炎”を生じさせます。
呼吸不全や呼吸困難に陥るのが特徴で、今のところ特効薬はなく、自分の免疫力が頼りです。呼吸困難がひどくなると人工呼吸器、さらに進むとECMO(人工肺)をつけて自己回復を待つことになります。
しかし、もともと肺の機能がしっかりした“肺年齢”が若い人なら、こうした処置をすることなく回復することができます」
肺の機能アップと免疫力の強化がコロナ重症化を防ぐ
感染症がどこまで重症化するかは、その人の免疫力にかかっています。免疫には自然免疫と獲得免疫があり、ウイルスや細菌が侵入したら、真っ先に駆けつけて戦うのが自然免疫です。
一方、自然免疫では防げなかったときに、その異物の特徴を記憶し、的確に攻撃をするのが獲得免疫。ワクチンは獲得免疫のシステムを応用したものです。
「例えば風邪やインフルエンザのウイルスが侵入すると、のどの痛みを生じる咽頭炎(いんとうえん)、声がかれたりする喉頭炎(こうとうえん)、たんや咳が出る気管支の炎症などが起こります。
しかし、自然免疫がしっかり働いていれば、その奥の肺にまで炎症が至らず、より軽い症状で治ってしまいます。微生物の侵入を防ぎ、免疫の第一関門として働くのが、のどや気管の繊毛や粘膜。
また、肺の機能を健全に保っておくことが重症化を防ぐポイントになります。だからこそ、日頃から免疫力を強化し、のどや肺の機能を高めておくことが重要なのです」
イラスト/Marcus Oakley(CWC TOKYO) 取材・原文/山村浩子