暗い場所で横向きで寝るのが基本!
「家でも外出先でも、めまいが起きたときは、『とにかく安静』が基本です。めまいが生じても、激しい頭痛、意識の薄れ、しびれ、麻痺などが伴わない限り、正しく対処すれば生命にかかわるようなことはないので、冷静に行動してください」(新井基洋先生)
基本の対処方法とは?
① 安静にできる場所に移動する
転倒しないように注意しながら、座れる場所や横になれる場所に移動します。できれば、家なら暗くて静かな場所、外出先なら日陰を選び、30分くらい安静にします。
② 呼吸を整える
できるだけゆっくりと深い呼吸をしてください。無理やり息をしようとして過呼吸にならないように注意しながら、楽な姿勢で呼吸を整えます。吐き気がある場合には、仰向けを避けて、誤嚥(ごえん)しないような姿勢、左右どちらかの横向き寝がいいでしょう。どちらか少しめまいが楽になる側があると思います。
③ 異常のある耳側を上にして横になる
横になる場合には、衣服をゆるめて、顔を横に向けて寝るのがポイントです。これは、突然、嘔吐しても吐しゃ物が気管に入らないようにするためです。そして異常のある耳の側が上になるような姿勢をとります。どちらの耳に異常があるのかわからない場合は、両方試して、楽なほうを選びます。その理由は、耳石器は重力のセンサーなので、異常のあるほうの耳を下にすると重力刺激を受けてめまい症状が強くなるからです。
④ 常備薬があれば服用する
処方されている吐き気止めなどの薬を携帯している場合は服用します。常備薬がない場合には、市販の「トラベルミン」などの乗り物酔い止めの薬でもOK。30分経っても治らない場合は、救急車を呼ぶことも考慮します。病院で点滴を打ってもらったり、脳の検査をしてもらうと安心です。その後もめまいを繰り返すようなら、専門医を受診してください。
これらの対処法は、本人だけでなく介助する側も知っておくと、同伴者や通りがかりの人に起きたときにも役に立ちます。
めまいの受診…何科がいい?
めまいの原因は、約90%は耳にあります。しかしながら、ほかの病気も考えられます。正しく診断することがなにより重要です。
「例えば、『片頭痛性めまい(=前庭性片頭痛)』は『メニエール病』と鑑別するのが難しいのです。『片頭痛性めまい』や『持続性知覚性姿勢誘発めまい症(PPPD)』などは、近年、知られるようになった病気なので、診察したことがない医師も少なくありません。また、脳梗塞や脳腫瘍などの脳の病気でもめまいが現れることがあります。その場合は、脳の検査を受ける必要があります」
では、まずは何科を受診したらいいのでしょうか?
「私がすすめているのは、まず主治医(内科)に相談して、脳神経外科でCTやMRIなどの画像検査をし、脳に異常がないか調べます。脳に問題がなかったら耳鼻咽喉科へ。まずは脳の病気の可能性を排除した上で耳鼻咽喉科を受診するほうが、スムーズで安心です。特に、脳の疾患が増える65歳以上の男性は脳検査をおすすめします。また、更年期世代の女性は婦人科を受診する人も多いのですが、めまいの症状自体は耳鼻咽喉科、めまい治療を得意としているめまい相談医を受診したほうが安心だと思います」
主治医→脳神経外科→耳鼻咽喉科・めまい相談医 がおすすめ。
脳に問題がなかったら耳鼻科を受診! しかし、それでもめまいが改善しない場合は、「日本めまい平衡医学会」のホームページを検索して、「めまい相談医」を受診するといいでしょう。
どんな診察・検査をするの?
では、実際にはどんな診察・検査をするのでしょうか? 今回は「めまい相談医」のケースを紹介します。
① 問診/いつ、どのようなめまいが起きたのか、その頻度などを確認します。
② 聴力検査/聴こえ方を調べます。
③ 重心動揺検査/目を開けた状態、閉じた状態の直立姿勢に現れる重心の動揺を調べます。
④ CCDカメラを用いた眼振検査/目の動きの異常(眼振)から、体の平衡機能異常を検査します。
これらから、メニエール病ではないか? 加齢による体や頭のふらつきがないか? 良性発作性頭位めまい症であれば、剥がれた耳石がどちらの耳にあるのか? などを確認していきます。
治療法は、必要に応じた投薬療法(めまいの特効薬はない)、めまい改善訓練(前庭リハビリ)、生活習慣の改善などを行います。
【教えていただいた方】
1964年生まれ。横浜市立みなと赤十字病院 めまい・平衡神経科部長。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医、日本めまい平衡医学会専門会員・代議員。北里大学医学部卒業後、国立相模原病院、北里大学耳鼻咽喉科を経て現職。『全国から患者が集まる耳鼻科医の めまい・ふらつきの治し方』(KADOKAWA)など著書多数。
イラスト/内藤しなこ 取材・文/山村浩子