人それぞれ、じつにさまざまな症状が現れる更年期。うまく乗り越えるには、どうすればいいのか? どんな心構えが必要なのでしょうか?
今回は、女優の奈美悦子さんに更年期体験についてお話を伺いました。いつの日からか理由もないのにネガティブになっていた 、と語る彼女に訪れた心と体の異変、その対策として取り組んだこととは、どんなことだったのでしょう?
更年期の始まりは
ネガティブな心から
40 代半ばくらいから体力の衰えを自 覚するなど、いろいろな意味で本調子 ではなかった、と奈美悦子さん。
「息子は言うことを聞かないし、些細 なことで気が重くなってしまうことが 増えた時期でした」
どこかいつもとは様子が違う奈美さ んに、"あなた、更年期なんじゃな い?"と声をかけてくれた先輩の女優 さんがいたものの、「更年期はイライラするものというイメージを持ってい たので、それとは違う。しかも私には まだ先のことと決めつけて、そのときはあまり真剣に考えることはありませ んでした」
その後、意味もなく落ち込む日があっても元気に過ごせる日も多く、仕事も忙しいことから、流されるままの毎日に。そんなある日、いつものように 「行ってきま~す」と息子さんが玄関 のドアを閉めた瞬間、涙がウワーッと あふれ出てきてしまったのだそう。
「自分でもなぜなのか、何が悲しいの かわからない。そのとき初めて、やっぱり私は、少しバランスがくずれているのかも、と思うようになりました」
そのうち、なかなか寝つけない、寝 ても眠りの浅い日々が続きます。
「まるでもう一人の私が出てきたような感じ。今までは翌日を楽しみにしな がらすーっと眠りにつけていたのが、 ネガティブなことを考えて目がさえて しまうのです」
答えを探して ふたつの病院に
友人に相談してみると、紹介されたのが心療内科医でした。
「軽いうつで自律神経失調症という診断です。う~ん、それは違うでしょう って納得できませんでしたね」
次にほかの友人からの提案で、産婦人科を訪ねます。
「血液検査をしてみたら、エストロゲンの量が少なくなってきているので、 更年期に入りましたねって。もやもや落ち込んでいた原因がわかった途端、 気持ちが楽になりました」
更年期とはわかったけれど、その当初は、周囲の人たちに伝えるつもりはなかったそう。
「だって、母や祖母からも更年期だと打ち明けられたことはありませんし、 そぶりを見た記憶もありません」
しかし、ホットフラッシュや激しい 動悸などの症状も加わり、隠していることでイライラも募ります。そんなとき、先輩の女優さんから「更年期は女なら誰でも通る道なんだから、重篤になる前にまわりに言っちゃいなさい」 とアドバイスされたのです。
そこで、まずはいちばん近しいマネ ージャーに、それから息子さん、おつき合いしていたパートナーに。宣言したことは、診断されたとき以上に気持ちを楽にさせてくれるものだったと言 います。また、息子さんには「何でも 更年期のせいにしている」と笑われる ほど、ある種便利な言葉でもあったよう。
次回は、奈美さんが「更年期対策として取り組んできたこと」をお届けします。お楽しみに。
撮影/冨樫実和 ヘア&メイク/石丸真之輔 スタイリスト/小川未久 取材・文/佐藤素美