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横森理香 連載小説「大人のリアリティ小説~mist(ミスト)~」シーズン1 終わらない春

横森理香

横森理香

作家・エッセイスト。1963年生まれ。多摩美術大学卒。 現代女性をリアルに描いた小説と、女性を応援するエッセイに定評があり、『40代 大人女子のためのお年頃読本』がベストセラーとなる。代表作『ぼぎちんバブル純愛物語』は文化庁の主宰する日本文学輸出プロジェクトに選出され、アメリカ、イギリス、ドイツ、アラブ諸国で翻訳出版されている。 著書に『コーネンキなんてこわくない』など多数。 また、「ベリーダンス健康法」の講師としても活躍。 主催するコミュニティサロン「シークレットロータス」でレッスンを行っている。 日本大人女子協会代表

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仲の良かった従姉の亜希が、脳梗塞で倒れた。私たちは、いつのまに死を意識する年齢になってしまったのだろう・・・・・・ 一見、幸せそうに見える大人女子も、実はセツナイ内情があるもの。横森先生がお届けする、乾いた心を癒す、フェイシャルスチームならぬマインドスチーム~mist~をどうぞ。

横森理香 小説 mist

第2話 命のクッキング

亜希と最後に話したのはいつだったろうかと、佐知はラインの履歴を遡った。亜希とは折につけラインはするが、ときどき興が乗ると無料電話で長話をする。

電話マークは9月8日、27分29秒話している。その日は佐知の誕生日の前日だった。

 

「今年はコロナで会えないからさ、お祝いの料理、作って送るよ。クール宅急便で送るから、明日の午前中に着く」

 

亜希は料理上手で、ちょっとしたレストランレベルのものが出来た。お祝いともなると、きっと腕を振るったのだろう。

 

「ありがとう。ゴートゥーイートって言われてもさ、まだなんかちょっとねー」

 

佐知も家族と近所にはぼちぼち出かけていたが、都心のレストランに出かける気にはまだなれなかった。

 

「ちゃんと三人前用意したから。チンするだけで食べられるよ。ポークリエットとピクルスも入ってるけど、フランスパンだけは近所で買ってね。焼きたてじゃないと美味しくないから」

「オッケー」

 

佐知の長男はとっくに独立していないが、遅ればせながらできた長女が、まだ家にいた。コロナ禍で大学を卒業し、IT企業に就職したが、リモートワークで会社には数回しか行っていない。

 

「チーズドレッシングに、ブロッコリーとジャガイモ茹でたの、それからキャロットラペ入ってるから、レタスだけ洗ってほぐして」

「おおっ、亜希ちゃんのチーズドレッシング? 美味しいんだよね」

「一週間ぶんぐらいあるから、しばらく楽しめるよ。クルトンも入れといた」

もちろんクルトンも亜希の手作りだ。

「楽しみ~」

 

メインはビーフシチューだという。手の込んだ亜希のビーフシチューは天下一品だった。こんなに上手く煮込まれて、牛も本望だろうと思うぐらい。

 

「ケーキはウィークエンドだよ。アイシングでメッセージもデコった」

「わーいわーい!! ねね、亜希ちゃんもラインビデオで乾杯しようよ。明日はシャンパン開けるからさ」

「えー、私はいいよ。コロナ太りでさ、人様に見せられる状態じゃないから」

「・・・え、また太ったの?」

「だって、楽しみ食べることしかないじゃん」

 

いや、それはもともと・・・。言いかけて、やめた。

 

 

亜希は専業主婦になってからというもの、料理研究家になれるぐらい、料理にのめり込んでいった。夫の海外赴任で行く先々の料理を覚え、帰国後はみなに振る舞った。しかし最後のロンドンが良くなかった。アジアならばヘルシーな料理が多いが、イギリスは肉料理と焼き菓子が名物、亜希の食いしん坊魂に火がついた。

 

帰国後、亜希は人が違ったように太っていた。せっかくの美人が肉に埋もれて、見る影もなかった。ちょうど更年期が重なったせいか、それともイギリスの水が合わなかったのか、肌はボロボロ、髪もおさみしいことになっていた。

 

佐知が見るに見かねて、

「亜希ちゃん、美人なんだから、少し痩せなよ、もったいないよ」

と言っても、

「私はいいのよ。どうせどこにも出かけないしさ」

と開き直る。かつて絶世の美女だった自慢の従姉が、いつもジャージか、毛玉のついたセーターにストレッチパンツの、太ったおばさんになってしまった。

 

そのこと自体、佐知は悲しかったが、それよりも、メタボをなんとかしようとしない亜希が心配だった。

 

「でもそのままだと、成人病になっちゃうよ」

「大丈夫だよ~。犬の散歩、してるしね。結構歩くよ。昨日なんか一時間ぐらい」

「・・・ルシェル君、痩せた?」

 

いまどき珍しいシベリアンハスキーを買っている亜希だったが、手作りの美味しい餌を食べさせ過ぎるせいで、太っていた。シベリアンハスキーに見えないほど。

 

「また太ったよ。おなか凄いよ!! メタボ。お腹ふとし君って呼んでるの」

などと言って笑っていた。

ハスキー 原知恵子

イラスト/原知恵子

亜希は佐知の実家がある横浜に住んでいるから、実家に行ったついでに寄り、母親が通う近所のヨガ教室に連れてったことがある。

 

「歩くだけじゃ運動足りないよ。ここなら近いから通えるでしょ?」

と言って、嫌がる亜希を家から引っ張り出した。

「十一時のクラスだから、終わったらランチ行こう、ね」

と食べ物で釣ったのだ。亜希はヨガが終わった後の、ランチを楽しみにしていた。

「ねね、どこで食べる? 元町のバーガージョーズ、久しぶりに行ってみない?」

 

マジか?! ハンバーガーとフライドポテトか?! と佐知は呆れたが、亜希がヨガに通う気になってくれなきゃ困ると、同意した。

 

「いいよ~。あそこのチーズバーガー、美味しいよね!」

自分はバンズを残せばよい。フライドポテトは二、三本。あ、ダメだ、残すと亜希が食べちゃう・・・。

 

もやもやしながら行ったヨガのクラスで、前屈をした亜希は、腹の肉に押されてか、みんなの前でおならをしてしまった。それっきり、ヨガには行っていない。

 

食いしん坊で、人に食べさせるのも大好きだった亜希。男の子のママだったからいけなかったのか。子供が女の子で、もっとさっぱりした料理が好きだったら、運命も変わっていたのかもしれない。

 

「お肉より、お魚を食べなきゃ」

と何度も言ったのだが、亜希は、

「ええー、でも、お魚よりお肉の方が美味しいじゃん?」

と、聞く耳持たずだった。

「・・・・」

 

こんなことになる前に、自分がなんとかしてあげられなかったのかと、佐知は胸が締め付けられる思いだった。

 

第1回は、こちらからどうぞ

次回は、3月18日配信予定です。お楽しみに。

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