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本棚から出てきた100年前の辞書と詩と数学と

ギリコ

ギリコ

築地界隈に暮らす51歳。毎月開催のセミナーやプレゼント、「君島十和子 美の格言」、「隣の50歳」、「女50歳からのキラキラ老後計画」、「十和子道」など担当。セミナーのときは会場にいつもいます!

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前回は本棚の整理中20年前に読んだきりの本『生きがいについて』を見つけ、再び読んでみたら……

ということを書いた。

 

今回も本棚ネタである。

 

******************************

片付けをしてみてあぜんとした。

 

なんと辞書がこんなにあった。

合計26冊。

 

大半が自分で購入したものだが、子どもの頃に母方の祖父の家からもらってきた辞書もまじっている。

それがこれ。

見ての通り、かなり古い。

国語辞典のほか英語、ドイツ語、フランス語も。

今回初めて奥付を確認したら、一番古いものは大正13年発行とあった。

つまり100年前の本である。

これほど古いとは思ってもみなかった。

 

他には90年以上前の昭和3年発行のイラスト集↓なども。

これも祖父の蔵書だった。

「ちょうだい」と言えば辞書もその他の本も一つ返事でくれたのに、このイラスト集だけはしぶられた。

 

「この人の絵が僕は好きで、この画集は大事にしてたんだけど……」

と言ったが結局くれた。

 

中学生のときは、ときどきこの本を引っ張り出してイラストを眺めたが、それ以来しまったままだった。

あの頃は黒一色でこんなにニュアンスのある絵が描けるということに感心していたが、どういう人が何のために描いたものなのかは知らなかった。

 

わかったのは大人になってからだ。

この古いイラスト集は文芸誌『女性』に掲載された挿絵をまとめたもので、著者のひとりは山名文夫といい、後に資生堂宣伝部でも腕をふるった人だという。

社会人になり、仕事のネタになりそうな本を探すため書店をぶらぶらしていたときに偶然見つけた本にそう書いてあった。

(この本も今回本棚の整理をしていて出てきた一冊で、買ったことすら忘れていた)

そのときはもう祖父は亡くなっていた。

 

気品ある女性や花、鳥、月が描かれた〝画集〟。

これを大事にしていたということは、祖父はロマンチックな人だったのかもしれない。

 

古い辞書の方はといえば、開いてみたらどれもあちらこちらに赤線が引いてあった。

祖父が勉強していた痕跡だ。

 

明治時代、福島の小さな村に生まれた祖父は勉強が好きで、片道16キロを歩いて学校に通ったという。

当時としては珍しく、今でいう大学に進学し、将来は詩人になりたかったそうだ。

 

そこであるとき思い切って歌人与謝野鉄幹を訪ねる。

 

弟子にしてもらうためだったが、応対に出た鉄幹の妻・晶子に「あなた、詩歌で食べていくのは大変なことなんですよ」と諭され、あきらめた。

 

以上は祖父が亡くなった後祖母からきいたことである。

 

 

そして鉄幹の弟子になれなかった祖父は……

 

数学の教師になった。

 

詩と数学。

私からすれば全然違うものに思えるが、なぜ祖父が数学の教師を選んだのかその理由はきいたことがない。

 

ただ

「数学には正解がある。

そこがいい」

そう言っていた。

 

一方、文学に正解はない。

(というか正解を求めるものですらないのかも)

 

そのあたりに数学教師になった理由があるような気もするが、今はこうやって想像するしかない。

 

ただ教師という仕事にはやりがいを感じていたようで、昔の教え子のことを思い出しては話す姿は本当に楽しそうだった。

 

詩人になることはあきらめたが、詩作はずっと続けていたようだ。

雑誌に掲載されていたのを見たことがある。

 

祖父にとって文学は生きがいで、数学教師という仕事はやりがいをくれるものだったのかもしれない。

 

生きがいとやりがい。

 

詩人になることをあきらめたときいたときはかわいそうに思ったが、このふたつが揃っているなら、悪くない人生といえるのではないだろうか。

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亡くなってずいぶん経つ祖父のことをこういうかたちで考えたことは初めてだ。

それもこれも『生きがいについて』を久しぶりに読んだ影響だろう。

 

そう思うとあの本が名著といわれるゆえんを実感する次第である。

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