20年後、30年後の自分を想像すると、なんだか怖い。でもこんなカッコいい先輩がいると、勇気が出ます。若い頃も素敵だったけれど、年齢を重ねた今も、どんどんその魅力を更新している宮本信子さん。その秘訣は、極上の笑顔にありました!
若い頃から、いぶし銀のような女優と言われて
こんなふうになれるのなら、年齢を重ねるのも怖くない。そう思わせてくれるのが、女優の宮本信子さん。ふわっと優しくて、ぴりっと厳しくて。頼りがいのある大人の女性です。
そんな宮本信子さんが、近日公開の映画『キネマの神様』に出演します。演じるのは主人公ゴウ(沢田研二さん)の妻・淑子(よしこ)。若き日に映画青年のゴウと出逢い、どうしようもないぐうたら亭主になってしまった今も彼を支える、素敵な妻の役です。
作品全体にあふれるのはキネマ(映画)へのリスペクトと愛。実は宮本信子さん自身、映画というエンターテインメントにすっぽり包まれて育った人でした。
「父の兄が映画館をふたつ持っていまして、小さい頃からそこに通っていました。フリーパスなんです。『こんにちは』って、さーっと入り口を抜けて、『ニュー・シネマ・パラダイス』みたいに2階に駆け上がると映写室があって、映写機の横から映画を観ていました。『シェーン』とかジョン・フォードの映画とか、ドキドキしながら観ましたね。東映の時代劇も好きでした」
ラジオからいつも流れていた浪曲や流行歌、家の向かいにあった黒塀から漏れ聞こえてくる三味線の音色、お姫さまみたいな衣装がうれしかった日本舞踊。さまざまな要素が重なり、宮本信子さんは長じて、女優を目指したのです。
とはいうものの…。
「自分でわかっているんです。みんなが振り返るくらいの美貌を持っている人がヒロインを演じる時代がずっとあって、それはそれですばらしいと思うんですけど、あの、私はそういうの、持ち合わせていないから(笑)。フランス映画とかイギリス映画とかが好きなのね。ですから好きな女優もジュディ・デンチとかジャンヌ・モロー、アメリカの女優さんならフランシス・マクドーマンドとか」
そういえばね、と、宮本信子さん。
「20代の頃に私、『いぶし銀のような女優だね』って言われたんです。普通、年齢を重ねた方に言う言葉ですよねえ。若い頃は『えー、いぶし銀?』って思ったけれど、今はとても気に入ってます。なるほど…よく私を見ていてくださったんだな、って」
存在感がありながら品がよく、知的で粋なそのいぶし銀の魅力は、数多くの作品で生かされて、今や宮本信子さんは国民的女優に。大人の女性のたたずまいは、私たちのお手本です。
宮本信子さん Nobuko Miyamoto
1945年3月27日、北海道生まれ。63年、文学座附属演劇研究所に入所。69年に伊丹十三氏と結婚し、二児の母に。84年の映画『お葬式』以降、『タンポポ』『マルサの女』など伊丹監督作品全10作に出演。ドラマ「あまちゃん」「ひよっこ」、資生堂のCMなど多方面で活躍中
※映画『キネマの神様』は8月6日(金)全国公開予定
撮影/萩庭桂太 ヘア&メイク/奥川哲也(dynamic) スタイリスト/石田純子(office DUE) 取材・原文/岡本麻佑