20代の頃に私、『いぶし銀のような女優だね』って言われたんです。とお話ししてくれた宮本信子さん。今回は、新作映画撮影時のエピソードなど盛り上がる内容になりました。
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若い頃からいぶし銀のような女優だねって/宮本信子インタビュー①
欲張りな人間には神様は何もしてくれない
クランクイン前から話題を集めていた『キネマの神様』。初の主演予定だった志村けんさんが急逝、新型コロナウイルスの猛威により、撮影の中断や台本の修正など、さまざまな困難とぶつかりながらの撮影現場でした。
「大変厳しい、特別な現場だったと思います。私は最初の緊急事態宣言が解除されたあとでしたが、本当に大変な時期に撮影をさせていただきました。いちばんつらかったのはマスクですね。
マスクして芝居するなんて、初めてですから。やっぱり芝居って、目だけじゃなく口元も大事なんです。ほかにもいろいろありましたけど、だからみんな、ギュッと団結したのかもしれません。なんとかこの作品を撮りきろう、公開して皆さんに見ていただこうって、最後まですごい緊張感がありました」
印象に残っているのは御年89歳の山田洋次監督の、熱血ディレクション。
「私のアップを撮るとき、カメラの真横からすごい眼力で私を見つめているんです。ああ、これが山田組なんだなって、うれしかったです」
無事クランクアップして、公開も間近。きっと映画の神様が、見守っていてくれたのでしょう。宮本信子さん、映画の神様と会ったこと、ありますか?
「そう、私は森羅万象どこにでもヤオヨロズの神様がいらっしゃるという日本的なイメージを持っているので、映画の神様も、芝居の神様や音楽の神様、踊りの神様同様、いらっしゃるんでしょう。私はそう思います(笑)」
そんな思いから、神社にお参りするのも、お墓参りも大好きなのだとか。
「でもね、神様に頼みごとはしないの。若い頃はあれこれお願いして『もうちょっとなんとかなりませんか?』なんて言っていましたけど(笑)。今はつらいことも苦しいことも、そんなにあるわけではないので、手を合わせて『お預けします』って、それだけです。あまり欲の皮の突っ張った人間には、神様は何もしてくれないと思うんです。『それは自力でおやりなさい』って言うと思うの」
苦しいときの神頼み、なんて言葉もありますが。
「できることもできないことも、自分自身の結果だと思うんです。神様のせいじゃないの。神様は公平だし、自分のしたこと、しなかったことは全部自分に返ってくる。何かできないことがあるとしたらそれは、自分がまだそれにふさわしい人間になっていないから。できる人は、きっと準備ができていたんでしょう。自分を棚に上げて神頼みばかりしていたら、失礼ですよね」
それでもやっぱり神様に手を合わせるのは?
「神様は自分の心の中にいると思っていますし、何をしてもしなくても、神様は見ていると思うんです。ですから甘えないで、手を抜かないで、ちゃんと、しっかり生きていないとね」
宮本信子さん Nobuko Miyamoto
1945年3月27日、北海道生まれ。63年、文学座附属演劇研究所に入所。69年に伊丹十三氏と結婚し、二児の母に。84年の映画『お葬式』以降、『タンポポ』『マルサの女』など伊丹監督作品全10作に出演。ドラマ「あまちゃん」「ひよっこ」、資生堂のCMなど多方面で活躍中
※映画『キネマの神様』は8月6日(金)全国公開予定
撮影/萩庭桂太 ヘア&メイク/奥川哲也(dynamic) スタイリスト/石田純子(office DUE) 取材・原文/岡本麻佑