ドキドキさせてくれる俳優だ。大げさな芝居はしないのに、引き寄せられる。
いつの間にかその台詞に耳をすませ、物語の流れの渦に巻き込まれている。
9月16日に公開される映画『沈黙のパレード』でも、メインキャストのひとりとして、強烈な存在感を発揮した。
ベテラン俳優となった今、仕事にプライベートに自分自身のために、まだまだ熱い思いを、この人は胸に秘めているらしい。
撮影/富田一也 ヘア&メイク/安井朋美(T-FACE) スタイリスト/kaz(Balance) 取材・文/岡本麻佑
北村一輝さん
Profile
きたむら かずき●1969年7月17日、大阪府生まれ。’99年『皆月』『日本黒社会 LEY LINES』でキネマ旬報新人男優賞など数々の賞を受賞。以降、映画、ドラマ、CMで活躍中。近年の主な映画出演作品に『劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班』『るろうに剣心 最終章 The Beginning』など。9月16日公開の映画「ヘルドッグス』にも出演。2023年 Netflix映画『ゾン100 ~ゾンビになるまでにしたい100のこと~』全世界配信予定。
53歳。俳優として今、
変化の時を迎えている
『ガリレオ』シリーズの最新作『沈黙のパレード』で北村一輝さんが演じている草薙俊平は、警視庁捜査一課の刑事。あの福山雅治さん演じる主人公・天才物理学者の湯川学とは、同じ帝都大学出身で親友同士。数々の事件を共に解決してきた。
湯川のバディ的存在、捜査一課刑事の内海薫(柴咲コウ)を交えた3人のショットは、それだけで期待値MAX。どんなミステリーが始まるのか、ワクワクする。
『ガリレオ』はそもそも人気作家・東野圭吾さんの連作推理小説を原作として、15年前にスタートした連続ドラマ。人気が沸騰して、これが映画化3本目。
最初の頃、北村さんが演じる草薙はそれほど目立つ存在ではなかったけれど、回を追うごとに重要なレギュラーメンバーとして存在感を増してきた。天才にして変人の湯川とは対称的に、情熱を内に秘めたナイスガイとして、物語の軸となっている。
そして今回、草薙俊平はかなり重要な役回り。
かつて草薙が少女殺害事件の容疑者として逮捕したものの、証拠不十分、完全黙秘を貫いて釈放された男が、再び殺人事件の容疑者として目の前に現れたのだ。さらなる不可解な事件が起こり、草薙はまたしても関係者たちの「沈黙」に追い詰められていく。
「ですから僕は今回、一切笑顔がないですね。ニッコリするのは最初だけで、あとはずっと、ほぼツラいシーンですよ。でも被害者少女の家族や友人たちに比べれば、僕のツラさなんて・・・。みんなの気持ちがわかればわかるほど、どんどん苦悩が増していく。
でもだからといって、暗い映画かといったら、そうではなく。エンターテインメントに仕上がっています。よく宣伝のために『面白い面白い』と言ったりしますけど、これについては本当に、共演者全員が試写を見たあとに『うわー、面白いね!』と。僕も心からそう思ってます(笑)」
作品に入る前には、徹底的に役作りをするのが彼のやり方。
「今回、こだわったのは“気持ち”ですね。草薙と湯川の距離感、湯川には正面切っては甘えない、思っていることを全部言うわけでもない、そこを薫が取り持ってくれるという3人の、絶妙なトライアングルの見せ方だったり。
西谷弘監督は、最初の頃は『なんでこんなに細かいことを言うんだろう?』って思ったけど(笑)、すべて緻密に計算して演出してくれる方なので、今は本当に信頼しています。監督の言う通りにやれば間違いない。オーケストラの一員になったつもりで、指揮者の思うままに演じようと決めました」
濃い顔のヴィジュアルのせいか、どっぷり役になりきる憑依型のイメージがあるせいか、30歳でブレイクした直後はアクの強い役、エキセントリックな役柄を任せられることが多かった。(中でも『テルマエロマエⅡ』の古代ローマ人役はハマり役だった!)
けれど今や、映画やドラマに欠かせないベテラン俳優。刑事や指導教官、大河ドラマの武将、朝ドラの父親役などもビシッと決めて、守備範囲は拡大中。
「今はちょうど、変わり目に来ています。これから、まわりの状況も考えた上で、いろいろなことにチャレンジしていきますよ」
どうやら、守りに入る気はないらしい。
「今までたくさんの人に出会い、お世話になってきた。それにはすごく感謝していますが、1回の人生、限りある時間、自分が本当は何がしたいのか、考えているところです。
この先、何が起こるか、いつどうなるか、誰にもわからないのだから、やりたいことにチャレンジするべきでしょう。なぜ今までトライしなかったんだろう? どこかで臆病になっている、どこかで怠惰になっている。
今、ある程度の仕事をいただけるようになって、背負うものも大きくなっている分、動きにくくなっているのは事実です。でも、それじゃダメだと思うんです」
熱い熱い、言葉が続く。『何かするぞ!』という情熱がヒシヒシと、伝わってくる。
「今回、福山雅治さんとは久々の共演でした。彼がなぜ福山雅治として、ああいうカリスマ的存在として君臨しているのか。僕から見るとそれは、彼が人の何倍も努力しているからなのです。常に好奇心のカタマリだし、知らないことはトコトン吸収しようとする。そしてまだまだ、いろんな歌を作りたがっている。貪欲だし、自分に対して厳しいからこそ、今がある。刺激を受けます」
北村さん自身、さてこれからと前を向いて、何をするにも必要なのは健康な体。
「もちろん! そこ一番大事です」
健康のため、体ために北村さんはいったい何をしているのか。続きは後編へ!
(ユニークな食生活と健康法について語った、インタビュー後編はコチラ)
『沈黙のパレード』
女子学生殺害の容疑者は、かつて警視庁捜査一課の刑事・草薙俊平(北村一輝)が担当した事件で完全黙秘をつらぬき、無罪となった男・蓮沼寛一(村上淳)。蓮沼は今回も黙秘し、証拠不十分で釈放され、女子学生の住んでいた町に戻ってきた。町全体を覆う憎悪の空気・・。そして夏祭りのパレード当日、事件が起こる。天才物理学者・湯川学(福山雅治)は、沈黙に隠された真実を解き明かすことができるのか?
2022年9月16日(金)より全国東宝系にて公開
配給:東宝
原作:東野圭吾「沈黙のパレード」(文春文庫刊)
脚本:福田 靖
監督:西谷 弘
出演:福山雅治 柴咲コウ 北村一輝 飯尾和樹 戸田菜穂 田口浩正 酒向芳 岡山天音 川床明日香 出口夏希 村上淳 吉田羊 檀れい 椎名桔平ほか
主題歌:KOH+「ヒトツボシ」
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