『60歳 ひとりぐらし 毎日楽しい理由』という本を出したことで、ヘア&メイクアップアーティストである山本浩未さん自身にも大きな変化が。
ブックツアーで各地を巡り、さまざまな読者と触れあうことで、美容の奥深さをあらためて実感しているとか。
今の彼女を支えている美と健康のノウハウ、そして自身の更年期について、たっぷり語ってくれた。
(大人の女性に提案する「メイクの松竹梅」についてのインタビュー前編はコチラ)
撮影/富田一也 取材・文/岡本麻佑
山本浩未さん
Profile
やまもと・ひろみ●1964年、広島県福山市生まれ。資生堂美容学校を卒業後、資生堂ビューティークリエイション研究所でヘア&メイクアップアーティストとしての仕事をスタート。1992年フリーランスとなり、雑誌、広告、CF、カタログなどでヘア&メイクを担当。自らの体験と経験をもとに独自の美容メソッドやキレイになる情報を発信してきた。毎日12時15分から10分間インスタグラムのライブ配信『毎日Beauty Live』が人気を集めている。インスタグラム @hiromicoy
リアルな大人女子のみなさんを
キレイにしたい!
『60歳 ひとりぐらし 毎日楽しい理由』を出してから、山本さんはブックツアーを始めた。この本を買った人、興味のある人が20人ほど集まってくれれば全国どこにでも出かけて、実演とトークで盛り上がる。
「この本の思いを伝えるには、直接読者の方たちと触れあうのがいいんだと思って。全国にいる私の知り合いに声をかけて、お友達を集めてもらって、あまりお金のかからない会場でやっています。
少人数だから、ひとりひとりの方とフェイス to フェイスで話が聞けるし、私も伝えることができる。これがもう、私にとってはすごい財産になっています。
以前の私は、女優さんとかモデルさんをキレイにするのが仕事でしたけど、今は普通に暮らしているリアルな大人女子の皆さんをキレイにしたい。
それほど美容に熱心なわけでもないし、もう若くはないけれど、それでも人生を楽しみたいし、そのためにもできるだけキレイでいたい。そんな方たちに私のヒントやノウハウを届けたくて。
ブックツアーのあとは、本の感想とかいろいろアンケートに書いていただくんですけど、それを読むと本当に元気がでます」
このブックツアー、山本さんの天職かもしれない。本の中にもある、今の自分を知るための四か条には、こうあるのだ。
『何が好き?』『何が得意?』『何をすると喜ばれる?』『何をすると心が落ち着く?』
「私は、みんなが楽しそうにしているのが好きなんですよ。人が争っているのは嫌いだし、楽しそうじゃないと、楽しくさせたくなるタチなんです。
そして圧倒的にメイクをするのが得意だし、メイクや美容の話をするとみんな喜んでくれる。だからブックツアーは私にぴったりの活動なの!」
「集まって下さる人たちをがっかりさせたくないし、期待を裏切りたくないから、自分がちゃんと納得できる自分でいたいと思うと、旅支度が大変!(笑)」
旅先に持って行くのは、デモンストレーション用のメイク道具だけでなく。ベストの自分をキープするための化粧品、サプリメント、信頼しているシャンプー&リンスや美顔器、マッサージ器から筋膜剥がしのローラーまで、本に登場するアイテムをフル装備。
「やっぱり、リアル大人はそこまでしないとキープも回復もできないから(笑)」
もちろん、道具を使わない美容テクも、本にはいろいろ書いてある。中でも気になったのが、おでこマッサージ。
「たぶんみんな気づいてないと思うけど、おでこって凝っているんです。眉の上から生え際あたりまでを指でもみほぐすと、気持いいですよ。まず目がちゃんと開きます。
私はおでこにラインのような横ジワがあったんですけど、これを続けていたら本当に薄くなりました! こういう小さなことの積み重ねが、大事なんですよ。
あれもこれもやるのは大変だけど、自分ができそうなことを集中してやれば、それだけで絶対変われるから」
キャリア十分な山本さんが自身の経験をもとに語ると、ヒントがすっと胸まで届く。
山本さんは20代から30代、ヘア&メイクアップアーティストとしてバリバリ働いていた。
「ブルドーザーのように、ね(笑)。でも40代になったときに体力が落ちてきた自覚があって、ちょっと自分を見直そうとしたらメイクの仕事自体に興味が薄れてきたんです。なんかもう、ダメだなって。
そんなときに宝塚を知って、生き返りました。『メイクとヘアで性別を超えられる、国籍や年代まで変えられる、性格も変われる。メイクってすごい!』って。そこからけっこう理論的なものをメイクに組み入れるようになりました。その頃からメイク本なんかもたくさん出して。
でもまた今度は49歳頃、50代を前にして、絶望感にさいなまれるようになったんです。『あとはもう下り坂しかない、今度こそもう本当にダメかもしれない』って」
それが山本さんの、更年期の始まり。
「私の更年期は精神的なものでしたね。気分の上がり下がりが激しくて。でもそれ以前から、まわりのみんなから更年期の話を聞いていたから、『これはホルモンのせいだからしょうがない』と思うことができた。
知らなかったら不安だったかもしれないけど、ある程度覚悟していたから、『あ、私の更年期ってこれなのね』って」
助けてくれたのは、スタイリストの地曳いく子さんの本。
「大人になったからもうベーシックな服でいいやと思っていたけど、大人になったからこそ、旬のものに挑戦しないとダメなんだと気づかされて。すぐに最新のバッグとコートを買って、そうしたら本当に気持ちが変わりました」
さらに、大好きなお風呂と猫も、助けてくれた。
「お風呂に入って温まると、いろんなことがリセットできるんです。リラックスできるし、やる気も出る。夜だけでなく、仕事のある日は朝も入ります。シャキッと目が覚めるので。自分を湯煎するような感覚ですね。朝、白湯を飲むんですけど、それも腸の中を湯煎しているような感覚です。
あと猫は、実はそんなに猫好きじゃなかったんですけど、私のまわりにいる優しい人は、みんな猫を飼ってるな、と気がついて(笑)。
私はわりと真面目なので、けっこう自分を責めたり、人に完璧を求めてしまう傾向があるんです。でも猫を見ていると『ま、いっか』という気持ちになれる。猫ってこっちの思うようにはならない、どうしようもないから、『ま、いっか』と思うことで自分のガス抜きをすることができるようになりました。
それにモフモフして温かい猫に触っていると、それだけで癒されちゃうし。私はひとり暮らしで家族がいないから、猫がその役目をしてくれているのかもしれないけど。家族がいる人は、お子さんとか家族とのスキンシップとか、そういうのが効果があるんだなと思います」
60歳、これから先も山本さんは、みんなのキレイを目指して、活動を続けていく。
「でもね、この先の自分なんて、わからないです。気持ちって変わるから。今のまんまである必要はないと思っています。
変わることをおそれずに、きっと70歳になったらまたちょっと今とは違う自分になっているんじゃないかな」
『60歳ひとりぐらし 毎日楽しい理由』
著者:山本浩未(小学館 1,650円)
〈自分を心地よくできるのは自分だけ!〉という信念をベースに、健康と元気を作る、キレイな人になる、ハッピーに生きるためのヒントを大公開。さらに心も体もそれまでとは違う60代を、快適に楽しく生きるためのアイデアやノウハウがてんこ盛り。読み終わる頃には元気100倍。家族がいてもいなくても、自分の力で自分なりに、これからの人生を楽しもうという勇気がわいてくる。