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松本千登世/ひと言の余白

松本千登世

松本千登世

美容エディター。客室乗務員、広告代理店勤務、出版社勤務を経てフリーランスに。心に届く美しい言葉で綴られたエッセイや美容特集は、つねに多くの女性の支持を集める。著書に『いつも綺麗、じゃなくていい。50歳からの美人の「空気」のまといかた』(PHP研究所)ほか多数
撮影/目黒智子

朝は、「今日が、素敵な一日でありますように」。夜は、「明日も、素敵な一日でありますように」。この「ひと言」をメールの着地点に据えると、メールの内容や文章も、パソコンに向かうときの表情も、何より心のあり方そのものが、柔らかく穏やかになる…。

 

無意識だとそうでなくなる自分をよく知っているからこそ、私は、強く意識してこれらの言葉を使うよう心がけている。メールは簡便かつ敏速というメリットがある半面、ともすると、ぬくもりや味わいが奪われ、思いが伝わらなかったり、誤解が生じたりというデメリットがある。

 

加えて、文字に個性が出る直筆と違い、誰が打っても同じフォントだからか、その人らしさが漂わない気がして。メールに添える結びの言葉は、そんな苦い経験を重ねる中で身につけた知恵なのかもしれない。

 

遡ること、30年以上。航空会社に就職して1~2年がたった頃、生意気にも、仕事に対する「不満」を抱いたことがある。

 

まだ、キャビンアテンダントとして一人前の動きもできないのに。振り返れば、憧れの職業だったはずなのに。「『私』の代わりは、いくらでもいる。自分じゃなくちゃいけない理由なんて、何もない」。

 

仕事に慣れるに従って、しだいにそんなふうに考えるようになったというのが、私の不満の正体。尊敬している先輩に、何気なくその話をしたところ、こんな答えが返ってきた。

 

「お客さまにとって、飛行機に乗る『目的』はただひとつ、出発地から目的地まで無事に移動すること。そういう意味で、あなたがどんな仕事をしようと、正直、関係ない。『仕方なく』働こうと、『なんとなく』働こうと、ね。

 

でも…あなたの働きで、たまたま乗り合わせた人の機内で過ごす時間が、快適かそうでないかが決まると思うの。時間のクオリティを『創る』仕事って、楽しいと思わない?」

 

目から鱗が落ちる思いがした。旅先に向かう時間がさらにワクワクする時間になったら。出張から戻る時間が深呼吸できる時間になったら。単なる移動を超える時間になったら。

 

そう思うだけで、それまでと同じ仕事が驚くほど輝いて見えた。マニュアルに書かれていない「余白」に自分らしさが宿る。そう教えられた気がしたのだ。

 

そして、今になって、しみじみ思う。私が心がけている「素敵な一日でありますように」は、この言葉との出合いから生まれたのじゃないか、と。

 

ひと言の余白

 

 

素敵な一日を祈る前に、空を見上げたり、風を感じたりして、季節の移ろいや気候の変化に思いを馳せる。良くも悪くも、世の中で起きているさまざまな出来事に思いを馳せる。忙しくても疲れていても、無理にでも思いを馳せる。その心がけが、心の幅や奥行きを広げ、余白を創る。

 

そして、余白が「余裕」を生み、「余韻」を育み、さらなる余白につながる…。これこそが大人の醍醐味に違いない、そう思うのだ。

 

ところで、メールの着地点を定めるもうひとつのメリット。それは、仕事上、避けては通れない「言いにくいこと」を言いやすくすること。

 

ネガティブなことを単刀直入に伝えても、締めに相手にとって自分にとって、世の中にとっても素敵な一日を祈ることで、自分の感情がクリアであり、ことは前に進んでいるという「約束」になるから。

 

たったひと言がもたらす余白は、計り知れないパワーを秘めている。

 

 

原文/松本千登世 写真/興村憲彦

 

 

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