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親の介護は、未来の「自分の介護」のエクササイズになる!?

親の介護を経験することは、「幸せなコロリ」を考える第一歩になるかもしれません。介護や福祉のプロを対象にした研修講師、コンサルタントとして活躍している高室しげゆきさんにインタビュー。今回は「親の介護や自分の病気、ケガは、未来の自分が要介護となったときのエクササイズになる」というお話です。

【教えていただいた方】

高室しげゆき
高室しげゆきさん
ケアタウン総合研究所代表
公式サイトを見る

地域福祉を支える「地域包括ケアシステム」づくりと、「新しい福祉の人材育成」を掲げ、行っている。ケアマネジャーや地域包括支援センター、社会福祉協議会、介護福祉施設のスタッフを対象に、研修や講演活動を行い、受講者数は延べ23万人以上になる。著書に『子どもに頼らないしあわせ介護計画』(WAVE出版)など多数

 

 

親の介護経験は、未来の自分の介護生活の予行練習

 

40~50代は親の介護が始まるお年ごろ。「親が脳梗塞などで救急搬送され、退院後から自宅介護が始まった」など、初めてのことに四苦八苦している人も少なくないと思います。でも、高室さんによれば、親の介護経験を通して学んだ知識が「未来の自分の介護生活」に役立つのだそう。まずは客観的な目線で、未来の自分をイメージするところから始めましょう。

 

今は「介護は親の問題だし、自分が介護を受けるイメージがわかない」と思う人が多いかもしれません。でも、20~30年先には私たちも通る道。そう遠くない未来に、突然の病気や入院によってQOLが低下する可能性もあるので、介護生活は決して他人事ではないのです。この先、要介護になったら、あなたはどんなサポートを受けたいですか?

 

「その際、『親の介護は、未来の自分の介護生活のためのエクササイズ』と考えるといいですね。たとえば『要介護2の段階は、転倒に注意しながら自分で歩くことができそう』『要介護3になったら、自分で立ち上がったり、歩くのが大変になる』など、客観的な目線で親の日常動作を見ることによって、自分自身が要介護になった状況をイメージしやすくなります」と高室さん。

 

また、子どもは親から体質や生活習慣を受け継ぐため、親が患った病気を子どもが経験するのもよくあることです。もしも、あなたのお母さんが骨粗しょう症だったり、血管系、循環器系の病気を持っていたり、またはがん家系だったりした場合、あなた自身にも発症リスクがあるため注意が必要です。

母親が骨粗しょう症だと自分もなる可能性があるイラスト

 

「たとえば、お母さんが大腸がんの手術をしてストーマ(人工肛門)を装着しているとします。その場合、お母さんと一緒に外出するために、ストーマの交換ができるスーパーやショッピングモールを調べることが、あなた自身の『もしも』の備えになるかもしれないのです。

 

人はみな、誰もが介護を受ける可能性があります。親の介護を通して知識を得て、『自分のときはこうしよう』と、前もってイメージできるのはラッキーなことと考えましょう」

思いがけないケガや病気の経験も、将来に備えたエクササイズに

 

同世代の女性同士でおしゃべりしていると、病気や体の話になることが多いもの。更年期まっただ中の今、大汗をかいて体がほてるホットフラッシや関節痛など、不快症状を抱えている人も多いでしょう。「乳がんの手術後、片方の腕が上がりにくくなって、理学療法士さんからストレッチを習った」とか、「足を痛めて以来、冷えると痛みが出やすいから、冷やさないようにしている」など、症状やセルフケアの仕方をシェアしあうのは、今後の介護にも役立ちます。

 

実は、病気やケガなどの経験は、『未来の自分のQOLが低下すると、こういう状態になる』とシミュレーションできるチャンスでもあります。「かつて、おばあちゃんが言っていた関節の痛みって、こういうことだったのか」と、ようやく理解できるようになるのです。

 

「高齢期の要介護状態というのは、小さな不調がずーっと続くものと考えるといいかもしれません。それを乗り切るノウハウをたくさん持つことが、ハッピーな老後につながります。病気やケガをしたときには、落ち込んだり、自分を責めたりするよりも、痛みや不快症状を和らげる方法を見つけることが大事。『これは将来、高齢になったときに役立つエクササイズ』と意味づけすると、備えになるんですよ」

 

友だちと病気やケガの話をするときには、「利き腕が使えなくなったときには、どうやって牛乳パックをあけていた?」など、生活の中の不自由さをどのように工夫していたのかを聞いておくと、この先のノウハウとなっていきます。自分なりのノウハウを見つけることが、老後をポジティブに生きていくためのシニア戦略となります。

 

地域包括支援センターで高齢者疑似体験をしてみよう

 

「要介護レベルのQOLって、どんな感じなんだろう」と知りたいときは、〈高齢者疑似体験〉をしてみるのがおすすめです。

 

手足の重り、特殊眼鏡、ヘッドフォンなどの疑似体験装具を装着することによって、加齢によって起こる筋力や視力、聴力の低下などを体験することができます。高齢者支援の拠点となっている地域包括支援センターや社会福祉協機会などに問い合わせてみましょう。

 

「高齢者疑似体験をしてみると、『今までできていたことができなくなる』という状況をリアルに実感して、高齢者の気持ちに触れることもできますよ」と高室さん。

 

また、体に障がいを持っている友人などに、「日ごろ、どんな工夫をしているのか」を聞くのも、目からウロコの情報源になります。
「『これまで見えていたのに見えなくなった』『これまで歩けていたのに、車いすの生活になった』など、中途障がい者の人たちのノウハウはすごく参考になると思います」

 

まずは「高齢者となった未来の自分」をシミュレーションするところからスタートしましょう。キッチンのコンロを消し忘れ防止機能がついているタイプに変えたり、取り出しやすい収納を工夫するなど、50代の今から取り組める改善点を見つけてみましょう。

 

イラスト/内藤しなこ 取材・文/大石久恵

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