その昔、私がまだ結婚しているとき、近所に住んでいる姉が我が家にフラッとやってきました。そのとき、私は連載の締め切り明けで、徹夜続きからやっと解放されたところでありました。
「はぁ~、疲れた!」「いい仕事した~!」って感じで、ほっと一息ついて、ソファーに横になってマンガを読んでいて、そしてその横では夫が掃除機をかけておりました。
一応言っておくけど、私も忙しく仕事をしてるので家事担当は決めておりました。旦那は週に一度の家の掃除とゴミ出し当番とペットの散歩。その他は全部私の担当です!つまり!!週一では足りない掃除全般と、買い物、食事、洗濯etc…全部やっておりました!!
まあとにかく旦那の姿を見た姉が、「アナタ、何やってるの」と怒り始めたんですね。「夫に掃除をさせて、その横でマンガを読んでるなんて。世間さまが許すと思ってるの!!」って。姉は専業主婦で、家事は女がやるべきという典型的な戦中の女なので、そのさまは許せなかったのでしょうね。
しかし!!私はアメリカ文化も入ってきた戦後の女。しかも自立した漫画家!当然戦います!!
「あのさあ、あなたの言うところの‟世間様”って何?世間様が何かしてくれたの?助けてくれた?
私は私の周り、つまり私の世間様にはちゃんと誠実に接してるわ。人の家庭に口出さないでほしい。私はあなたの家庭の事で、文句言ってないじゃない。だからあなたの常識を私に押し付けないで」
悔し気に黙る姉。勝ち誇る態度のデカい妹。
下剋上成功で、それ以来姉は文句を言わなくなりました。
まったくねぇ、世間って、人のやることにいちいちケチつけるけど、何も手助けはしてくれないのよ。だとしたら、そんなもののために自分のやりたいことを我慢したり、曲げたりする必要はないと思う。
というわけで、みなさんも世間の目を気にするのはほどほどに。
「天使のツラノカワ」コーラス1999年10月号扉
取材・文/佐藤裕美