正論は、誰にでも当てはまるものではありません。
以前、コスパ最高で大評判の鮨屋に入って、遅いランチをカウンターで楽しく食べておりました。お店がすいていたせいか、そばに座っていたカップルの会話が聞こえてきました。30歳過ぎくらいの小金を持っていそうな水っぽい女性と、同世代の地味で貧乏臭い男性という二人で、話の内容はこんな感じ。
女「そうやって生活にメリハリがないと、せっかくの休日も台無しになっちゃうでしょ。休むときは、仕事のことは全部忘れて楽しまないとダメだよ」
男「でもさ、どうしても頭の中でネタのこととか考えちゃうんだよね」
女「そんなんじゃ、かえっていいネタできないよ」
男「そうは言っても頭から離れなくて」
話の内容からすると、男は売れない芸人らしくて、そんな彼に彼女は説教めいたことをず~〜〜〜っと言ってるのよね。自分は正しい、だからそうするべきだとばかりに。
確かに休日は仕事を忘れて楽しむというのは正論かもしれない。でも、それを聞きながら、私は彼が言っていることに、「それ、わかる!!」「その通り!!」と加勢したくなりました。
私もマンガのストーリーを考えている時は、休みなんか関係ないし、寝ても覚めてもそればかり!!クリエイターって、そういうものだと思うのよね。休みの日も彼女と一緒の時もネタばかり考えてしまう芸人の彼氏は、私から言えば間違ってないと言うか、『モノを作る人間というものはそういうもんじゃ(怒)!!ましてやこれから成り上りたいと思っている奴がそうじゃなかったら、絶対売れるもんか!!』と思いますね。
でも、彼女は「そうやって成功した自分が言うんだから間違いない」的な感じで、ずっと上から目線で言っていて…あ~久しぶりの鮨が不味い!!言ってやりたい!言ってやりたい!このくそ女を怒鳴りつけていじめてやりたい、というヤバい感情があふれ出そうになり、危険を感じた私は鮨屋をあとにしたのであった。
とにかく!自分の物差しで人を判断するのはある程度は仕方がないけど、人に当てはめてはダメです!!クローンでもない限り無理です!
まあ、彼もお鮨代を彼女に払ってもらうんだろうから、そのくらいの小言を言われても仕方ないけどね(笑)。
「プライド」コーラス2006年5月号扉
取材・文/佐藤裕美