2018/02/28
告白しますが、ここで書いていること、デタラメが多いんです。
「ええっ!?」と驚く声が聞こえてきそうですが、実は100%事実と断定できないことがありまして…。というのも、楽しそうに巡礼中の出来事を書き連ねているので、きっと語学達者と思われているのではと想像するのですが、私、英語がとても苦手なんです…。空港の入国審査や駅の窓口の切符購入、レストランでオーダーできるくらいの「日常会話レベル」はどうにかなるものの、それ以上の込み入った会話になると耳は自動的にシャットダウン。英語が共通語である路上のやりとりは、「想像力」という分厚いフィルターを通して、私の脳にインプットされたものばかり。だから恐ろしいかな、まったく見当違いな理解をしている可能性も否定できない訳でして…。
「Buen Camino!(ブエン カミーノ)」。
どんなにシャイな人でも、はたまたひとりで歩きたい人でも、一日中、誰とも口を聞かないなんてことは巡礼にはありえません。誰もが言い、言われる言葉、それがスペイン語で「よい巡礼を!」という意味のこの言葉です。「おはよう」や「こんにちは」だったり、時に「頑張ろう」や「あともう少しだよ」だったり、様々な意味を持って心に響きます。
歩くのが遅い私は後ろから誰かが歩いてくる気配を感じると、こちらから先に言うのか、向こうから言われるのかドキドキしながら、「5、4、3、2…」と心の中でカウントダウン。そして横を向いて、満面の微笑みで「ブエン カミーノ!」を投げかけます。何も言われないで抜かされていくのはイヤだったので(たまにはそういう人もいるのですが)、ほとんどこちらから、自発的にニッポン人女子のイメージアップを図っていました。
ただし、その笑顔が時々、自分自身に試練をもたらすのです…。
たいていは挨拶と二言、三言くらい言葉を交わした後、抜かされて行くのですが、私のスマイルにノックダウンされるのか(苦笑)、スピードを緩めて一緒に歩こうとしてくれる人がいます。そういうフレンドリーな人はほとんどが英語が流暢に話せる人か、英語圏から来た人たち。もちろんおしゃべりは楽しいのですが、聞き取れない英語に頑張って相槌を打っていると、10分、20分、会話は明らかな苦痛に…(涙)。私の鈍いスピードに合わせてもらっているのも申し訳なく、足が痛くなったフリをして「ちょっと休憩するから、どうぞ先に行って」と何度、演技をしたことか…。でも、あまりにその演技がうますぎて(!?)、なかには心配して一緒に休憩してくれた「泣けるほどいい人」もいました。
この日、泊まるのは10世紀にナヴァラ王国の首都だった古都ナヘラから約6キロメートル先にある、アゾフラという小さな村。白亜の回廊の美しいサンタ・マリア・ラ・レアル修道院を見学しにナヘラに滞在してもよかったのですが、身体が慣れて来たせいか「もっと歩きたい」欲求にかられ、ナヘラの公営アルベルゲ(巡礼者向けの宿泊施設)のチェックインを待つ列を横目に、先へと続く赤茶けた岩山の道を登り始めました。
途中でアメリカ・コロラド州出身のコリンに話しかけられ、ホームスクーリング(学校に行かずに家庭で勉強すること)で大学に入学したという息子さんの話を興味深く、一生懸命聞いているうちに、気付けば村の入り口に到着。目抜き通りのバルのテラスで遅めのランチをしていた、私の巡礼の先生的存在の南アフリカのリチャードに「ここまで来て大正解だよ、早くチェックインしておいで」と声をかけられ、向かった公営アルベルゲの素晴らしいこと!! 3階建ての現代的な建物は驚きの全室ツイン利用で、各フロアにシャワーが設置され、広々としたガラス張りのダイニングホールも居心地がよさそうです。
くつろげそうな雰囲気に皆、溜まっていた疲労も軽くなったようで、食堂では自炊した料理を前に笑い声の上がるグループがちらほら。私も看護師のアメリカ人女子・アリシアに「ワインの試飲をしない?」と誘われて、村の小さな食品店へご当地、ラ・リオハ地方のワインとチーズ、オリーブの買い出しに。参加メンバーが英語ネイティブスピーカーばかりだったので、最初は「引っ込み思案」を発揮して、ひたすら飲み&食べるのみだったのですが、そのうち濃厚な赤ワインを味方に、勇猛果敢にどうにか会話に切り込んでいきました。
巡礼をするのに語学力の有無はあまり問題になりません。もちろんスペイン語を少し勉強しておけばよかったなと思ったことはあるものの、英語については「日常会話」レベルで大丈夫。道中、言葉を交わすことになるアルベルゲやバルで働くスペイン人は巡礼を支えるプロ。スペイン語も英語も話せなくても(きっと)どうにかしてくれます。巡礼者にも英語を話さない人はいますし、話せる人は話せるなりの、話せない人は話せないなりの、交流が楽しめるのがカミーノ(巡礼)です。単語レベルのつたない英語しかコミュニケーションを図る方法はないのに、一緒に歩いていたイタリア人のおじいさんとOurAge世代の韓国人女性の仲の良さは羨ましいほどでした。
「思っていることを伝えようとする」というキモチ、そして足りない語学力をフォローする「想像力」が、英語コンプレックスに立ち向かう私のつたない武器なのです。
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