こんにちは。寺社部長の吉田です。
今月から来月にかけて、わたしが愛する滋賀県の旅の情報を4回に渡ってお届けします。
うち3回は、大津市内に新しくできた素敵な宿泊施設「商店街HOTEL 講 大津百町(しょうてんがいホテル こう おおつひゃくちょう)」に滞在して大津市内を歩き、琵琶湖に浮かぶ有人島の沖島まで足を伸ばすお話です。わたしは取材でもプライベートでも何度となく滋賀県を訪れていますが、今回は、意外にもはじめて立ち寄る場所が多く、とても新鮮な旅となりました。
まずは、「商店街HOTEL 講 大津百町」(以下、『講 大津百町』と表記)がどんなところなのかというお話からはじめましょう。大津市は、古くは琵琶湖の水運の要となる港町、東海道五十三次最大の宿場町、また、三井寺(園城寺)の門前町として栄え、にぎわったところです。百もの町がひしめくところから「大津百町」と呼ばれ職住一体型の住宅である町家が軒を並べていました。現在も、江戸時代末期から戦前までに建てられた立派な町家が数多く残っていますが、時代の流れに従って、空き家になったり解体されたりする建物も増えてきました。
「講 大津百町」は、旧東海道と、それに並行するアーケード商店街に残る築百年以上の7軒の空き家をリノベーションして作られた新しいコンセプトのホテルです。オーナーは高品質な木造住宅を作る滋賀県の谷口工務店。新潟県の人気宿「里山十帖」でもおなじみの自遊人の代表、岩佐十良さんと谷口工務店の社長である谷口弘和さんの出会いから企画がスタートしました。貴重な文化財である町家を保存するだけでなく、ステイファンディング(宿泊料の一部を大津の商店街などに寄付する)という日本初の試みを導入し、街自体の活性化の一助となることを目指しています。
7軒は並んでいるわけではなく、それぞれに少しずつ場所が離れています。うち2軒はホテル的な部屋割りタイプで一人旅やビジネスでの滞在にも最適。5軒は一棟貸しタイプで、家族や大人数向き。それぞれに、歴史を感じさせるゆかしい名前がついています。
上の写真は、フロントのある「近江屋」の外観。旧東海道沿い、江戸末期の建築で間口6間という広さを持つ、もともとは呉服屋を営む大旦那の家です。
まずは、この「近江屋」に行き、チェックインを済ませます。こちらは部屋割りタイプの建物(2階に3室)で、自由に飲み物やお菓子をいただけるラウンジもあります。フロントにはコンシェルジュもおり、観光や食事の相談に乗ってくれます。今回は、商店街のお店について、いろいろ教えてもらいました。また、1階にある割烹料理店は2019年4月に本開業の予定で、それまでは朝食をいただけます(要予約)。
「近江屋」からすぐ、もう一軒の部屋割りタイプ「茶屋」にも同様のラウンジがあります。他の一棟貸しタイプの棟に泊まっていても、二つのラウンジには、自由に立ち寄れる仕組みです。
こちらは、菱屋町商店街にある、もと天ぷら屋だった建物をリノベした一棟貸しの「鈴屋」。隣には琵琶湖の淡水魚がなんでも揃う「タニムメ水産」(次回にご紹介)があるので、夕食のテイクアウトなんてこともすぐ。
今回は、取材のための宿泊だったため、滞在者がいないお部屋をあちこち見学させていただくことができました。古民家のリノベーションは、もともとの建具などをできる限り生かし、昔の形の復元を目指すのが一般的ですが、それではどうしても断熱性や防音性などが劣ります。そのためこちらでは、床や壁など古くなったものはすべてはがし、新しい材料でもとのかたちを活かすように作り直してあります。どこも真新しく、快適そうですね。
「茶屋」201号室。
ひとつひとつの部屋は、それぞれにインテリアデザインが異なります。使われているのは、主にデンマーク製の名作家具。一脚100万円以上の椅子も普通に置かれています。
お風呂、洗面などの水回りも、最新の建材で作られています。
各部屋には、お茶、コーヒーのセットも用意され、冷蔵庫内の飲み物も無料です。
左側にあるのは部屋の中のどこでも見られるテレビ、右側は旅の情報を調べたり、フロントへの電話として使うためのタブレットです。必要なものが過不足なく揃っていて、長期滞在も快適。上の部屋は、「茶屋」101号室です。
窓からの風景や周辺の雰囲気もよく、暮らしているような気分になれます。こちらはお庭が見える「茶屋」101号室。
「近江屋」201号室は、旧東街道を見下ろせる部屋で、毎年10月に行われる大津祭りでは目の前を山車が通るのを眺めることができます。
こちらは、懐かしい雰囲気の路地沿いにある一棟貸しの「鍵屋」。フロント棟「近江屋」のすぐ横の路地です。
そしてこちらが、これからお世話になる一棟貸しの「丸屋」。丸屋町商店街の真ん中にあり、ぶらぶら歩き、食事、買い物に便利な立地です。フロント棟「近江屋」から150メートル。
2階建てで、1階には、キッチン、ダイニング、リビングルーム、お風呂、トイレ、坪庭があります。
2階にはベッドルーム、和室、トイレがあります。ベッドは2台ですが、和室で布団を敷けば、全部で5名まで泊まることができます。
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快適な部屋で一息入れたら、さっそくお出かけします。大津市内は京阪電車も走っていて主要な観光地への移動がたいへん便利。場合によっては、京都へも、簡単に出かけることができます。今回は、電車でなく、シェアサイクル「ofo」を試してみました。専用アプリを使えば、市内のあちこちで借りたり返却したりできる、とても便利なものです。
まずは、大津のこのエリアでは必ず足を運ぶべき名刹、三井寺にお参りしましょう。
正式には「長等山園城寺(おんじょうじ)」といい、天台寺門宗の総本山です。はじまりは7世紀、三井寺という通称名は、天智・天武・持統天皇の三帝の誕生の際に 御産湯に用いられたという霊泉があり、「御井の寺」と呼ばれたことに由来します。平安時代、第五代天台座主・智証大師円珍和尚の卓越した個性によって天台別院として中興され、今に至ります。こちらの大門は、徳川家康の寄進によるもので、左右に、室町時代の金剛力士像が祀られています。
広大な境内には国宝を含む美しい建造物や名宝があります。こちらは総本堂に当たる金堂です。桃山時代、豊臣秀吉の正室北政所によって再建された堂々たる建造物です。内部には、秘仏の本尊、弥勒仏及び、数多くの傑作仏像が安置されています。
こちらは三井の晩鐘。近江八景のひとつとして、また、天下の三名鐘のひとつとして知られ、音がよいことと、遠くまで聞こえることで有名です。
こちらは三井寺の初代の梵鐘で、奈良時代の作とされています。通称「弁慶の引き摺り鐘」。武蔵坊弁慶がこの鐘を奪って比叡山まで引き上げたところ、「イノー・イノー」(帰りたい、帰りたい)という音がしたので、弁慶は怒って鐘を谷底へ投げ捨ててしまったと伝わります。 鐘に残っている傷痕は、その時のものとも言われます。
三井寺は他にも見どころがたいへん多く、ゆっくり廻れば何時間もかかります。途中、境内の茶屋で、弁慶の怪力にちなんだ「三井寺辨慶力餅」をいただくこともできます。
三井寺
お持ち帰りしたい人は、創業明治2年、古くから三井寺詣でのお土産として知られた「三井寺力餅本家」のお店に寄ってみてはいかがでしょう。
お土産で買うだけでなく、店内でお茶と一緒に食べることもできます。
柔らかい小さなお餅が、お店独自のみつと黄な粉で味付けられています。黄な粉が緑がかっているのは、少量の抹茶と青大豆が混ぜ込まれているためです。
お店の二階には、やはり古くから大津の名物だった「大津絵」を展示した小さな美術館があります。神仏や娘などの人物、動物たちがユーモラスなタッチで描かれた民俗画で、中には風刺の利いた図柄もあります。江戸時代に東海道を行き交う旅人たちの土産物、護符として大人気でした。
三井寺力餅本家 077-524-2689
http://www.e510.jp/tikaramoti/
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さて、そろそろ夕食の時間です。この日は、宿からほど近い「自然坊(じねんぼう) たなか」という店にうかがいました。こちらの店主は、京都の名店「草喰 なかひがし」にいらした方で、大津の商店街活性化の目玉のひとつとして、こちらに開店なさったとのこと。
一枚板のカウンターからは、手際よく調理をする店主とその奥様の様子がよく見えます。どんなお料理が出てくるのかと、わくわくしますね。
地の食材を多く使った美しいお料理の数々。
鮎はカウンター奥の生け簀で泳いでいたものを、炭火で焼き上げます。
特注の土鍋で炊くご飯は、お米からご飯に変わる直前のものをいただいたり、おこげも美味しくいただく、「なかひがし」スタイル。小さなお惣菜、お漬物も美味でした。
大津をはじめとする滋賀県は美味しいものが多いところではありますが、これだけ洗練されたお料理がいただけるとは、少し意外。この街が、これからどんなふうに発展していくか楽しみですね。
※「自然坊 たなか」の詳しい記事はこちらにあります。
自然坊 たなか 077-525-4555
商店街HOTEL 講 大津百町(しょうてんがいほてる こう おおつひゃくちょう)
滋賀県大津市中央1-2-6 近江屋(フロント棟)
棟数: 全7棟 うち5棟貸切タイプ、うち2棟に8室(1棟3室+1棟5室)
客室単価: 9,900円 〜(1室2 名利用時の1 名料金/税別・サービス料込)
電話番号:077-516-7475(10:00〜21:00)
吉田さらさ
公式サイト
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