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人は、特に女性は環境に……(君島十和子 美の格言⑰)

君島十和子

君島十和子

1966年生まれ。モデルとして活躍後女優に。1996年、結婚を機に芸能界を引退。現在は自身のコスメブランド「FTC」のクリエイティブディレクターとして数々のヒットを生み出している。2女の母。

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君島十和子さんの大ヒット書籍「十和子道」から抜粋した言葉を美の格言としてお届けします。「十和子道」担当編集者ギリコから見たその言葉(格言)の背景や取材時のエピソードも合わせてお読みいただけます。

人は、特に女性は環境に同化しやすい生き物です。

どんな環境にも良くも悪くも慣れてしまうもの。

だったら「キレイ」な部屋と暮らしに慣れてしまおうと思いました。

目に見えなくても「清潔」「清廉」という空気は人を確実に美しくしてくれる。

一番確実で手ごたえのあるアンチエイジングは「掃除という自分磨き」かもしれません。

書籍「十和子道」P9より~


<担当編集者からみたこの言葉の背景>

書こう書こうと思いながらつい後まわしにしてしまったが、この連載の第14回目ラストに書いた〝生きた心地がしなかった〟という一文の件。

今回、書くことにする。

 

自宅で撮影、私服で登場など無理をお願いしてスタートとした〝十和子さん50歳の記念の本〟の取材。

ところが出だしは思うように取材がはかどらなかった。

 

台所のシンクの蛇口を磨いている十和子さん、お茶を淹れている十和子さん、フローリングを掃除している十和子さん。

取材は作業をしている横にライターとカメラマンが張り付き、話をききながら撮影も平行して行うというスタイルを主にとった。

それは「家族が見ているふだんの十和子さんを読者にも見てもらいたいから」。

そしてその取材意図は事前にライターとカメラマンにも伝えたつもりだった。

が、いざ取材が始まると困ったことがおきた。

 

カメラマンが「ここぞ」というときシャッターを押さないことが何度もあったのだ。

 

例えば十和子さんが夕飯の準備をしていると、隣にご主人がやって来て何か話しかけている。

台所で食材を切っている妻と、冷蔵庫の中から飲み物を取り出したりしながら話しかけている夫。

それは普通の夫婦の日常によくある光景で、それこそ私が欲しい場面だった。

それで「撮って」とそばにいるカメラマンを促す。

 

ところが

「ご主人とお話をしている最中に撮るのは失礼では」

「今撮られるとは思ってないだろう、不意に撮っては悪いのでは」

と遠慮してしまうらしく、シャッターが押されないのだ。

「もし怒られたら、それは私があなたに撮るように指示しているからだと話すから。

だから撮って!」

そう言っても〝遠慮〟は簡単には治らなかった。

何度ももどかしい思いをし、そのうち数回は

「ほら、今!早く(撮って)!」

と叫んだ。

カメラマンが遠慮してしまう気持ちはわからないでもなかったが、取材を終え家に帰っても撮り逃した〝ベストショット〟のことを思い出しては悔しさに悶々とし、ろくに眠れなかったことが何度もあった。

それぐらいふだんの十和子さんの日常を〝記録〟することに私はこだわっていた。

 

そんなある日、取材が終わり帰ろうとした私に十和子さんが言った。

「今日このあとお時間はありますか」

その声音と表情から嫌な予感がした。

 

********************

私は表参道のフルーツパーラーで十和子さんと夫の誉幸さんと向き合って座っていた。

十和子さんは厳しい顔つきだった。

そして私の目を見て言った。

 

「ねぇ○○さん(←ギリコの名前)、本の取材が始まって数か月経ちましたけど……

ずっと私がふだんやっていることばかりを取材しているけど大丈夫?

それで本のネタになる?

……私、本のためならどこか話題のお店や場所へ行ったり、何かやってみてほしいことがあるなら挑戦します。

そのための時間なら、つくりますから。

だからやったほうがいいことがあったら遠慮しないで言って」

そしてテーブルに置いていた手を私の方へ伸ばした。

 

お、

怒っている!

 

厳しいまなざしをそのように受け取った私は生きた心地がしなかった。

頭が真っ白で何を言ったらいいのかわからず黙り込んだ。

 

十和子さんは私の顔を見続けていた。

視線は変わらず厳しいものだった。

美人から、しかも十和子さんほどの美人から至近距離で厳しいまなざしを向けられるとそれだけでこんなに迫力があるものかと思い、変な話だがあらためて〝真の美人だけが持つ威力〟を思い知った。

そして長年にわたりいつもそばにいる誉幸さんはすごいと思った。

 

「読んだ人が元気になる本、読んだ人が十和子さんと友達になったような気持ちになる本をつくりたいんです。

それにはいつもの十和子さんの生活、ふだんやっていることを見せていただくのが一番なんです。

十和子さんにとってはふだん当たり前にやってきたことばかりで、どうしてと不思議に思うのでしょうけど、それが読者が見たいもので新鮮な驚きになるんです」

そう言うのがやっとだった。

 

が、説得力のない説明だと自分でも思った。

辛かった。

 

他に言葉が出てこず、目を合わせる気力もなく、黙ってテーブルを見続けた。

同席していた誉幸さんも横で何かおっしゃったと思うのだが、申し訳ないことに私の記憶はとんでいる。

ただ誉幸さんが電話を掛けるためか何かで少しの間席を立ったのだが、ふたりきりになると余計いたたまれなかったことを覚えている。

 

途中ウエイトレスが十和子さんが頼んでいたハーブティー(確かローズヒップかハイビスカスだった)を持ってきていたのだが、それがガラスポットの中でどんどん赤くなっていき、ついには真っ赤になった。

真っ赤なポットをひたすら見続けていたら、胃だけではなく目の奥も痛くなってきたような気がした。

参った……と思ったそのとき

「わかりました」

と十和子さんが言った。

「○○さんがそうおっしゃるなら、わかりました」

厳しい表情をさっと引っ込めると、話題を変えた。

 

今これを書きながらあのときのことを振り返ってみると、十和子さんは怒っていたわけではないと思う。

本の内容について不安、それもかなりの不安を感じていて、読者に喜んでもらえる本にするためなら自分は何でもやるという強い思いだけがあったのだと思う。

あの厳しい表情は不安と真剣さと必死さゆえだったのだろう、と。

 

 

店の外へ出ると寒かった。

取材を始めたときは真夏だったのに、もうそこまで冬がきていた。

十和子さんたちと別れてひとりになってみるとこの数か月やってきたことが無駄だったように思え、そこへ数日前にライターから言われたことも思い出されて、さらに気持ちが落ち込んだ。

 

「十和子道」のライターはこれ以上優秀な人はいないというほど、取材力と文章力のある人だ。

この人の協力がなければ私が目指す本はつくれないと思いお願いした、経験も豊富なベテランだった。

 

その人が

「この取材って毎回ガサ入れ、いや、もはや現場検証っていうくらいひたすら十和子さんのふだんの生活のことばっかり細かくきいてるけど、大丈夫なの?

この前なんてフキンとか、食器を洗うときのスポンジのことまできいたよ。

 

確かにシミひとつないフキンでさすが十和子さんと思ったけど、フキンの写真を撮って、話をきいてさぁ……

もちろん担当(編集者)がそれでOKっていうなら、私はフキンの話でも何でもきくよ……

……でも……本にまとめるんだよね?」

と言ったのだ。

そこには

「ここまで雑多なことをどういう風に本にまとめるんだろう、大丈夫かな」

という心配があるのが感じられた。

 

目指す本のたたずまいが自分には見えていた。

けれど自分が見ているものがどんなものなのかを十和子さんやスタッフと共有できていなかった。

これではプロデューサー役としては失格である。

 

自分のレベルにがっくりくるばかりだったが、一方ではそれだけ今作ろうとしている本が従来のライフスタイル本にはなかったもの、巷のよくある本とは違うものなのだと再確認もした。

 

その表参道での出来事から約1年後。

積み重ねてきた〝ガサ入れ〟と〝現場検証〟で拾いに拾ったネタは『十和子道』という一冊の本にまとまり、書店に並んだ。

 

出だしは美容のことではなく、インテリアにした。

それも家を整える際大切にしているという「君島家のルール」の紹介から。

フキンもスポンジも本の前半に掲載した。

 

あるとき本を読んだという女性に会う機会があった。

『十和子道』を読んで十和子さんに取材を申し込んだメディア関係者だった。

 

彼女は私が本の担当編集者だと知ると、言った。

「フキンまで載っていて、しかもフキンに半ページも割いているなんて、こんな本があるんだとびっくりしました。

 

母に〝読んでみる?〟って本を渡したら、やっぱり十和子さんの真っ白なフキンを見て

〝十和子さんがきれいな理由がわかったわ。

私のフキンはシミだらけ。

それを気にもとめないような生活を送ってきちゃったのね〟

としみじみ言っていました」

 

読んだ人それぞれ気になるページは違うだろう。

フキンが印象的だった人もいれば、愛用している石鹸が「ウタマロ石鹸」であるのが印象的だったという人、冷蔵庫の中を写した大きな写真が印象的だった人もいた。

掲載してある十和子さんの愛読書や本棚の中を見て、意外なラインナップに君島十和子さんという人に一目置くようになったという人もいた。

 

どこで「十和子道」を読むのか、その場所も人それぞれだった。

本を寝室に置き寝る前にランダムに開いてそこに書いてある言葉を拾い読みし、よし明日も頑張るぞと自分を励ましているという人もいたし、台所に置き家事へのモチベーションが下がっているなと思ったら見返しているという人もいた。

 

中でも入院してくる患者が持参している本に「十和子道」が多いことに気づいた看護師さんが、患者から

「この本を読んで十和子さんから元気をもらっているんです」

と持ってきた理由を言われ、半信半疑で読んでみたら自分もすごく励まされて患者さんたちの気持ちがわかったというブログをたまたま目にしたときは心底うれしく、この本に注いだ全てのものが報われたと思った。

(白さをキープしているのはフキンだけではない。真っ白なクッションや家電など君島家の見事なまでに白さをキープしているアイテムをたくさん載せた。このダイニングチェアもそのひとつ/『十和子道』P15)

撮影/冨樫実和、本多佳子

★この連載は毎週木曜日更新です。次回は2020年2月20日配信です。お楽しみに!

*オールカラー、自宅で撮影、オール私服、収録写真400点

「十和子道」大好評発売中!

電子版には特典としてプライベートを含む計276点の写真とコメントを特別編集した「エブリディ十和子」がついています!

 

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