究極の対立。その時どうする? 話題の映画を「読む」


 『おクジラさま ふたつの正義の物語』

(佐々木芽生 著)

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 プロフィールおおくに

 読んだ人:おおくにあきこ ライター&アースカルティヴェイター。
アートや旅、暮らしなど、 持ち前のグローバルな
アンテナと美意識を生かした分野で執筆&活動。
Earth Cultivateする人=地球を耕す人、として、
インドの学校をアートで支援する
『ウォールアートプロジェクト』http://wallartproject.net
を主宰。その一環で立ち上げた、身体を優しく包む
インドの服や小物のセレクトブランド『ツォモリリ』
http://www.blue-bear.co.jp/shop/ も、
センスの良い品揃えで人気を博している。

 

 

わたしはどこからきてどこへゆくのか

 

 

慣れ親しんだコミュニケーションだけでは
済まなくなってしまったこの国の片隅で。

 どれだけ泣いて叫んで反論しても、わかってもらえなかったことがあるだろうか。そんなとき、あなたはどうする?

 

 

 日本ほど人と人が自然と解り合えてきた国はないかもしれない。アメリカ在住の著者が、捕鯨問題の病巣をまるで“腑分け”のように綴った本書を読み進むと、つくづくそれを感じる。

何しろ島国日本は、閉じられた中でのつながりがとても深い。「ソレってアレだよねー」みたいな会話で通じ合える。「忖度」という言葉も許される。欧米から見たら、それこそテレパシーレベルだろう。

 けれど海外がぐんと近づき、Facebookの友だちリクエストが海外から舞い込むようなボーダレスな現代ともなると、多くを語らずとも理解しあえるある意味洗練されたコミュニケーション文化は、たちまちフリーズする。クジラとイルカを巡る問題は、まさにその象徴だ。

プロテスター子どもたち            映画『おクジラさま ふたつの正義の物語』より 

 

 

 捕鯨と反捕鯨を巡るこの冒険譚は、心温まる夫婦の姿を描いて話題を呼んだ初の作品『ハーブ&ドロシー  アートの森の小さな巨人』を世に出さんとしていた著者、映画監督の佐々木芽生(ささき・めぐみ)が『ザ・コーブ』というドキュメンタリー映画に出会ったことから始まった。

 

 

 400年間クジラ漁をしてきた小さな漁師町VS.ハリウッドの有名人をはじめ数十万人の支援者のいる環境保護団体。「捕鯨」の是非をめぐり、小さな地域社会のひとりひとりと、その一方にあるSNSやメディアを背景にしたグローバル社会が、ひとつの土俵で闘わなければならなくなった運命のいたずらに、読んでいて目眩がした。

 それまでは単に「クジラを捕って食べなくてもいいのでは……」くらいにぬるく思っていた捕鯨問題だったけど、実はその根っこには人が生きるための尊厳に関わる深い問題が横たわっていることが、容赦なく突きつけられる。

 

 

イルカ漁                映画『おクジラさま ふたつの正義の物語』より 

 

 

 和歌山にある人口3000人の太地町の鯨類追い込み漁を残酷な行為と糾弾する2009年の映画『ザ・コーブ』は、ドキュメンタリー部門でアカデミー賞を受賞した。しかし、これまでも仕事で何度か太地町を訪れ、捕鯨番組も扱ったことのある佐々木がこの映画に感じたのは、手のひらにじっとり汗をかくような違和感と不快感だったという。

 

 

『ザ・コーブ』には、残酷な殺戮シーンがあり、それを告発するクールなヒーローが登場する。目的を隠したクルーが、太地町の豊かな自然を撮影したい、とだけ申し入れて町に入ったことや、物語性を高めるための小さな改ざんの数々は、観客には見えない。太地の漁師たちはヒーローを排除しようとする得体の知れない怪物のように扱われ、人としての声はまったく聞こえてこない。

 そこで佐々木は、太地町の漁師たちはもちろん、内外の反捕鯨活動家の双方にインタビューし、国際捕鯨委員会(IWC)の国際会議も取材。調査捕鯨の最新事情にも当たり、イルカの体を蝕む水銀の問題にも触れるなど、さまざまな角度から緻密に検証していく。映画のそれを上回る情報量や深度に比例し、読み進むにつれ、ひたひたと知的興奮が高まる。

 →対立の一部始終を撮りながら、佐々木監督が見つけたもの、それは・・・?

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