いし こんにちは。ぐうたらライターのいしまるこです。
今回は、根来教授が取り組んでいる腎臓研究について、ご紹介したいと思います。
根来教授って、背は高いけど腰が低いから、つい忘れちゃうんですけど、世界最先端で活躍するスゴイ研究者なんですよ〜。
根来 いやいや、そんな全然スゴクないです。
でも、僕の研究の一端を知っていただけるのはとてもうれしいです。
あ、根来秀行です。よろしくお願い致します。
いし ほんとに謙虚ですよね〜。まずはニュースでも大きく取り上げられた、あの大発見について聞かせてください。
根来 急性腎不全治療の鍵となるタンパク質の発見ですね。
いし ですです! 腎臓病の中でも、急性腎不全は最も回復が難しい病気で、治療は透析などの対症療法しかなく、死亡率は5割にも上るんですよね。
根来 そうですね。急性腎不全は尿細管にある細胞同士の結合が、血栓などがきっかけで壊されることで発症します。どのようにして急性腎不全が発症するのか、その正体は長い間謎でした。
いし しかーし、2012年、ハーバード大学根来研究チームが、ついにその正体を突き止めた!
根来 はい。急性腎不全の発症のスイッチとなるたんぱく質〝Gα(ジーアルファ)12〟です。
いし ジーアルファ12! …よくわからないけど、スゴイ発見なんですよ。
実際、この研究成果は学術雑誌『PNAS(米国科学アカデミー紀要)』に掲載され、日本でもテレビや新聞各紙のトップニュースとして報道されました。
根来 Gα12の働きを抑える薬を開発すれば、急性腎不全を防ぐ新たな治療につながります。今、着々と研究を進めているところです。
いし ゆくゆくはノーベル賞ですね〜。
いし 2016年11月には、シカゴで開催されたアメリカ腎臓病学会50周年の総会でも、ご自身の研究の発表で登壇されましたよね。
根来 はい。腎臓病の発症における体内時計と毛細血管の関係についての研究成果を発表しました。
いし 簡単に説明していただけますか?
根来 遺伝子操作で作成した生体リズムを刻む時計タンパク(ビーマル1)がないマウスを使った実験を実施したんですね。
いし まず、遺伝子操作で時計遺伝子をなくしたマウスをつくるところから大変そうですねぇ。
根来 ええ、けっこうむずかしいんですよ。
根来 その実験で、時計遺伝子が働けなくなったマウスは、体内のリズムが崩れ、毛細血管がしだいに劣化。血管が詰まりやすくなり、腎機能不全などの障害が起こりやすくなりました。
いし ふむふむ。
根来 つまり、この実験によって、体内時計が腎臓に影響していることや、毛細血管の重要性がますます明らかになったわけです。
この研究が上手く応用できれば、体に負担の少ない効率的な投薬の時間帯などもわかってくると思います。
いし 医学の進歩はそういう地道な研究によって支えられているんですね。
根来 それではみなさん、今日も素敵な1日を!
取材・文/石丸久美子 撮影/森山竜男 イラスト/浅生ハルミン