いし こんにちは。ぐうたらライターのいしまるこです。
ハーバード大学医学部根来秀行教授のweb講座「肺年齢を若返らせる!」です。前回は、肺の中にある3億個の袋〝肺胞〟について伺いましたよ。
根来 こんにちは。根来秀行です。今回は、その肺胞の老化についてお話していきましょう。肺胞では、生命活動の要〝ガス交換〟が行われていますが、そのやりとりの現場となるのはどこでしたか?
いし 肺胞に巻き付いている毛細血管です!
根来 その通り! ところが加齢とともに、肺胞を取り巻く毛細血管も徐々に減っていくんですよ。
いし それは肺胞にも影響があるんでしょうねぇ。
根来 はい。肺胞の壁の弾力が失われていきます。
いし ぶよぶよしてくるんですか?
根来 そうですね。肺に病変や炎症が起きると、毛細血管の劣化がさらに進みます。すると、肺胞の袋同士がくっついて表面積が少なくなっていきます。
いし 肺胞がぶどうの房のようではなくなっていくんですね。
根来 ブロッコリーとかカリフラワーのような感じに変形していきます。
肺がダメージを受けると……
いし ブロッコリーやカリフラワーじゃ、呼吸の効率が悪そうです。
根来 はい。呼吸の効率が落ちて息切れや呼吸困難が現われます。
いし 最近、ちょっと動くと息切れがするのは、肺胞がブロッコリー化している!? 想像しただけで息切れしそうですう。
根来 まあ、確かに多少の老化はあるかもしれませんが、肺は非常に丈夫な臓器で、6割を切除しても機能を果たせるほどのキャパは備えているんですよ。
いし な〜んだ。
根来 しかし、いったん壊れてしまった組織は再生することはなく、ダメージが進めば命の危険を招くこともあります。
いし じゃあ、できるだけ肺にダメージを与えないためにはどうすればいいんですか?
根来 炎症の原因となる有害物質を、できるだけ肺に入れないことですね。
肺胞では白血球の一種である〝肺胞マクロファージ〟が、有害物質を感知して除去し、肺胞の機能を守ってくれているんですよ。肺胞マクロファージは有毒なゴミばかり食べているから、真っ黒なんです。
いし なんと健気な!
根来 肺胞マクロファージが有害物質を取り除くとき、活性酸素が発生します。吸い込む有害物質が多いと、活性酸素が大量発生して、正常な細胞まで傷つけてしまう。その結果、肺胞の細胞にがんが発生するリスクが高くなるのです。
いし 肺がんのリスクファクターとなる有害物質といえば、やはりタバコの煙ですか?
根来 そうですね。喫煙により取り込まれた煙が刺激となり、体内で活性酸素が作られますが、タバコ自体にも活性酸素が含まれていて、ダブルパンチで毛細血管を酸化させるんです。
喫煙による肺がん発症リスクは、非喫煙者と比べて男性で4~5倍、女性で3倍程度高いとされています。
いし タバコは百害あって一利なしですね。
根来 はい。次回は、近年、日本人の死亡原因のトップ10にも入っている「タバコ病」〝COPD〟についてお話ししますね。
いし タバコ病! 喫煙者はもちろん、タバコを吸わなくても、受動喫煙の問題があるので他人事ではないですね。
根来 それではみなさん、今日も素敵な1日を!
(次回は、「肺を脅かす“タバコ病”って!?」です。お楽しみに!)
取材・文/石丸久美子 撮影/森山竜男 イラスト/浅生ハルミン