HAPPY PLUS
https://ourage.jp/life/more/384757/

「定年クライシス」を招く、男の「心の生活習慣病」とは?/定年後の夫との付き合い方

「定年クライシス」とは、定年後の男性が社会から取り残される孤独感に悩み、夫婦関係までがギクシャクする現象のこと。夫の意固地な言動に振り回されないためにも、妻は「定年夫の心のうち」を知っておくとよいでしょう。多くの定年夫婦の相談に乗り、自身も「定年クライシス」を乗り越えたキャリアコンサルタントの原沢修一さんに伺いました。

【お話を伺った方】

原沢修一
原沢修一さん
キャリアコンサルタント・シニアライフアドバイザー

大学卒業後、大手エンターテイメント会社に勤務し、58歳で早期退職。定年後、キャリアカウンセラー(現国家資格キャリアコンサルタント)、シニアライフアドバイザーの資格を取得。現在では、定年退職前後のシニアを対象としたカウンセリングやライフプランセミナーなどの講師を多数務めている。 自身の退職後のことを具体的に考えずに会社を辞めたことによる苦悩、定年後の生きがい探しの体験をリアルに綴った著書『男のロマン・女の不満…あゝ定年かぁ・クライシス』(ボイジャー)が好評発売中。

 

かつて私も「定年クライシス」を経験。“自分ファースト”で妻の気持ちを知ろうともしなかった

 

私は日頃、40代~50代以降の人たちを対象に、定年後の生活にかかわるセミナーやシニア向けの講演活動を行っています。セミナーでは「定年後の生きがい探し」「定年夫婦の関係性をいかにしてリフォームするか?」などのお話をしたり、相談を受けたりしています。

 

要するに、「この先、夫婦で居心地よく暮らすにはどうしたらいいのか」を、自分の体験も踏まえてお話ししているのです。

 

実はかつて私も「定年クライシス」に陥り、熟年離婚寸前の危機を経験しました。当時の私は「夫に対する不満」をため込んでいる妻の気持ちを知ろうともしなかった。そして、妻が担ってきた家事を軽んじていました。

「自分はこれまで家族のために身を粉にして働き、家を買い、わが子を大学まで行かせたじゃないか」

「定年してやっと仕事から解放された夫を、なんでもっとねぎらってくれないんだ」

「いったい何が不満なんだよ。オレがいちばん大変なのに」

と、“自分ファースト”の考え方だったのです。

 

そして、ある日、売り言葉に買い言葉で、妻をとことんやり込めてしまった。その後、数カ月にわたって、妻と口をきかない日々を過ごしました。

最初のうちは「離婚してもかまわない」とさえ思っていましたが、冷静になるに従い、思い浮かぶのは妻の顔ばかり。

 

「夫には夫の思いがあるけれど、妻にも妻の思いがあった」「オレのことをもっと理解しろと思っていたけれど、妻もまったく同じ気持だった。お互いに誤解だったんだ」と気づいたわけです。

 

会社組織で生き抜くなか、男は次第に「心の生活習慣病」におかされていく

 

結婚したばかりの頃は、夫婦が同じ景色を見ていたはず。当時は幸せいっぱいで、「結婚によって、喜びは2倍、悲しみは半分になるに違いない」と信じていました。

思い返せば、子どもができてから、妻は子育てに一生懸命になり、夫の自分は仕事第一で、家のことは妻任せでした。

 

多くの男性がそうだと思いますが、会社という競争社会の荒波にもまれるうちに、当時の私は、「男の見栄・意地・プライド・嫉妬」が培われてしまったのだと思います。

私はこれら4つの感情を「心の4大生活習慣病」と名づけているのですが、なかでもいちばん厄介なのが「意地」と「プライド」という病です。

 

意地やプライドでがんじがらめの定年間際の男性

 

男には、「自分が稼いでいるからこそ、家庭が成り立っている」「自分が家族を支えている」という「意地」と「プライド」があるんですよ。「妻が働いたところで、夫の稼ぎには追いつかないだろう」とね。実は私自身も40代以降、こうした言葉を妻に投げつけてきました。

「オレより稼いできたら、家事をやってやる」と言ってしまったとき、妻は黙り込んでいましたっけ。今にして思えば、妻を「意地」と「プライド」でやり込めても仕方ないのに、なんて傲慢だったことか。まさに「心の生活習慣病」の弊害です。

記事が続きます

 

夫婦の間に生じる軋轢、温度差は、時代が変わっても永遠のテーマ

 

「そうはいっても、今の時代は昭和や平成の頃とは違うし、男女平等の時代なんじゃないですか?」「最近はフルタイムでバリバリ働く女性が増えている。男だって家事や育児をする人が増えているのでは?」と言われることもあります。でも、夫婦間の行き違いで生じる軋轢、温度差というのは普遍的なもの。時代が変わってもなくなることがないんです。ある意味、永遠のテーマといえるのかもしれませんね。

 

ちなみに、30代の私の娘は子育てしながら共働きしています。

「夫は、休日には育児をサポートしてくれるけど、子どもが病気のときは私が会社を休まなくてはいけない。結局、妻の負担のほうが大きい」とため息をついています。ネット上にも、妻たちの夫に対する不満の声があふれていますよね。

 

ところが、男性側は「自分は家族のために一生懸命にやっている」と思っている。男性と女性の双方が「自分のほうが大変」と思っていて、相手のことを理解できていない。そんな調子で定年まで進んでいったら、どうなることやら…。

 

やがて迎える定年後の生活で、男性側は「これからは妻と一緒にのんびり過ごそう」「あれもやりたい、これもしたい」などと、能天気に「男のロマン」を思い描きます。実は私もそうでした。でも、妻のほうは「女の不満」を抱えていて、すでに温度差が生まれていました。それなのに定年直後の私は、その事実に気づいていなかったのです。

 

「心の生活習慣病」を抱えた定年夫に対し、妻の不満はピークに!

 

当時の私は、仕事から解放されてウキウキしていました。でも、3カ月くらいたった頃、これまでとは違う環境変化に気づいて、あれ? と思ったんですよ。

 

例えば、会社員時代の名刺がなくなったことで、組織に属していた自分というアイデンティティを失ったことを実感しました。また、私は郊外に住んでいるため、映画館や美術館、友人に会うために外出すると、交通費が思いのほかかさみます。すると「節制しなくては」と、だんだんと外に出なくなってしまう。

地域の図書館に行けば、行き場所に困ってやって来るシニア世代がたくさんいて、身につまされる気持ちになりました。

 

そうこうするうち、社会から取り残されたような疎外感や孤独感を感じるようになっていきました。

 

でも、「男の意地」もあって、自分のそんな思いを周囲には悟られたくない! 知り合いから「定年後、どうしている?」と聞かれても、「何かと忙しいんだよ」と「見栄」を張ってしまう。そして、自分の不機嫌な気持ちを妻にぶつけ、居丈高に振る舞ってしまうんですよねぇ。イキイキしている同世代の男性が視界に入ると、うらやましく思ってしまったりしてね。

 

一方、そんな夫たちの胸のうちを、妻たちはつゆ知らず。「夫の在宅時間が長くなった」ことへの不満を募らせ、定年夫を「粗大ごみ」のように疎ましく思うわけです。

 

この時期の定年夫は、自分のことで頭がいっぱいですから。自分の主張が通らないと大声を出し、たとえ妻が言っていることが正しいと思っていても、正論を歪めてでも「意地」と「プライド」を通そうとします。そうした葛藤がこじれたときに、熟年離婚の危機に発展するケースがあるわけですよ。この葛藤たるや、すさまじいものがあります。妻を言い負かしたところでしようがないのに。男って、哀れな生き物なんです。

記事が続きます

 

私の場合は、かつての仕事つながりの50代の女性たちと話す機会があり、「原沢さん、それはダメよ」と指摘されたのが、自分を省みるきっかけとなりました。

このままでは、まずい。もしもこの先、真っ暗な家に一人で帰ることになったら、どうしよう…。そう思ったら、正直言ってゾッとしました。熟年離婚というのは男にとって、それほど恐ろしいことなんです。

 

やはり定年後の人生において、夫婦の関係は非常に重要。この先、自分の居場所を居心地のよいものにしたいですよね。そのためには、どうすればいいか? 次回以降、さまざまな夫婦の事例とともに、男と女の胸のうちや、妻が困ったときの対処法のアドバイスをお伝えします。

 

イラスト/カツヤマケイコ 取材・文/大石久恵

MyAge

大人のからだバイブル vol.2 「痛み知らずの体になる!」

OurAgeの人気記事が1テーマムックに!
何度も読み返せる保存版OurAgeです。

MyAge
試し読み Amazon Kobo 7net

この特集も読まれています!

子宮筋腫特集~症状から治療まで
フェムゾーンの悩み解決
ツボ・指圧で不調を改善
40代からでも「絶対痩せる」
広瀬あつこさんの「若返りメイク」
閉経の不安を解消
記事が続きます

今すぐチェック!

第2弾『男で受けた傷を食で癒すとデブだけが残る たるんだ心に一喝!! 一条ゆかりの金言集2』が、電子書籍で発売に!

第2弾『男で受けた傷を食で癒すとデブだけが残る たるんだ心に一喝!! 一条ゆかりの金言集2』が、電子書籍で発売に!

この連載の最新記事

「定年クライシス」を招く、男の「心の生活習慣病」とは?/定年後の夫との付き合い方

第1回/「定年クライシス」を招く、男の「心の生活習慣病」とは?/定年後の夫との付き合い方

この連載をもっと見る

今日の人気記事ランキング

今すぐチェック!

OurAgeスペシャル