『MyAge 2015 Spring号』に、「S-Joy~素敵女医~」シリーズ『健康で太らない体をつくる素敵女医的「食の秘策」』が掲載されています。その中の「糖質制限の真実」という鼎談に参加されている「青山エルクリニック」院長の杉野宏子先生にご登場いただき、お話をうかがうこの連載。今回は、話題の「ファイトケミカル」について解説していただきます。
こんにちは、杉野宏子です。
今回は、ファイトケミカルと抗酸化作用についてお話ししたいと思います。
最近よく耳にする「ファイトケミカル(phyto chemical)」という言葉。この“phyto”はギリシャ語で植物を意味し、“chemical”は英語で化学成分という意味になります。続けて訳すと「植物性の化学物質」ということになります。うちのクリニックでは「フィトケミカル」という読み方を採用していますが、どちらも意味は同じです。
野菜や果物、海藻、お茶、ハーブなどに含まれるファイトケミカルとは、色素や香り、アク、辛み、渋み、苦みなどなどの成分から発見された化学物質のこと。たんぱく質、炭水化物、脂質といった3大栄養素以外の成分で、ビタミン、ミネラル、食物繊維に続く「第7の栄養素」として注目されています。医学的にはまだはっきり解明されていない部分も多いものの、抗酸化作用や、免疫力をアップさせる効果があるとして期待されているのです。
植物が持っている抗酸化作用や生体防御作用、自己修復作用、免疫力をアップさせる機能は、もともとは自分を守るための自己防衛本能です。動物と違って自由に動けない植物は、害虫などの敵からも逃げられず、雨や風、紫外線といった過酷な環境の中で生き抜かねばなりません。つまりファイトケミカルとは、植物が身を守るために自らが作り出したものなのです。
生物が健康に生きていくためには、活性酸素による酸化(体の錆び)を防がなくてはなりません。人間も同様で、呼吸をして常に活性酸素を作っている以上、それを中和させる抗酸化作用のあるものを摂取し、体の酸化を防止することが大切。抗酸化は、がん、生活習慣病、認知症などの予防などのほか、アンチエイジングにも有効です。
1万種類以上あるとされるファイトケミカルのなかでも、抗酸化物質としてよく知られているのが「カロテノイド」という色素です。カロテノイドは緑黄色野菜に多く含まれ、代表的なものとしてはβ-カロテン(カロチン)やリコピン、ルテイン、ゼアキサンチンなどがあります。これらの成分は活性酸素から身を守るほか、美肌、シミの予防、目の健康などにも効果があると言われています。
多く含まれる食品としては、次のようなものが挙げられます。なお、β-カロテンは脂溶性なので、油で調理すると吸収率が高くなります。
β-カロテン・・・ニンジン、パセリ、かぼちゃ、しそ、バジル、ほうれん草、ゴーヤ
リコピン・・・トマト、スイカ、柿、レッドグレープフルーツ、あんず
ルテイン・・・ブロッコリー、ほうれん草、ケール、グリーンピース、ラズベリー
ゼアキサンチン・・・パプリカ、トウモロコシ、パパイヤ、ほうれん草
そしてもうひとつ、抗酸化作用で知られているのが「ポリフェノール」です。ポリフェノールとは植物が光合成を行う際にできる物質の総称で、アントシアニン、レスベラトロール、カテキン、ルチン、イソフラボン、カカオマスなどがそれに当たります。認知症予防、血管の強化、アンチエイジング、目の健康、コレステロールの減少、脂肪燃焼効果などがあると言われています。
水に溶けやすく吸収されやすいのが特徴で、熱に強い性質を持っていますが、酸化しやすいので調理後はできるだけ早く食べてください。成分は皮や種の部分に多く含まれており、皮ごと食べるのがおすすめです。
ポリフェノールを手軽にとりやすいブルーベリーやラズベリー。生を手に入れるのが難しい場合は、冷凍でもOK。私もジュースを作る際には、手軽に使える冷凍ブルーベリーや冷凍ラズベリーを使用しています。
多く含まれる食品は次のとおり。
アントシアニン・・・赤ワイン、なす、黒豆、小豆、ブルーベリー、紫いも、プルーン、ラズベリー
レスベラトロール・・・赤ワイン、ピーナッツの皮、ココア、アーモンド
カテキン・・・緑茶
ルチン・・・そば
イソフラボン・・・大豆
カカオマス・・・ココア
いずれにしても、体にいいからと特定の食品だけを大量に摂取するのは逆効果。さまざまなものをバランス良く食べることが大切です。また、最近の果物はむかしに比べて甘くなっていますので、糖分のとり過ぎにも注意してください。
次回も引き続きファイトケミカルについてご紹介していきます。
◆杉野先生おすすめのアンチエイジングジュース
ブルーベリーのジュース
材料2人分:
冷凍ブルーベリー 大さじ4.5杯
バナナ 1本
キャベツ 2枚
水 150ml
栄養 ポイント:
ブルーベリーのアントシアニンには抗酸化作用があり、老化防止、癌予防に効果的です。
それ以外にも、眼精疲労を回復する効果が有名ですね。高血圧、動脈硬化の予防にも良いと言われています。
ラズベリーとピンクグレープフルーツのジュース
材料2人分:
冷凍ラズベリー 大さじ3,4杯
グレープフルーツ 半個
セロリ 1本
白菜 1枚
炒りごま 大さじ1
エゴマ油 大さじ1
水 150ml
ターメリック、シナモン、クローブ、カルダモン 各少々
栄養ポイント:
ラズベリーはビタミンC、クエン酸が多く、カロテノイドの一種ルテイン、ポリフェノールのエラグ酸、アントシアニンなど抗酸化成分を多く含みます。癌予防、老化防止、美白効果が期待できます。
取材・文/上田恵子