本誌にて好評連載中の「S-Joy~素敵女医~」シリーズ。
『MyAge 2015 Autumn/Winter号』の「体が悲鳴を上げたとき、素敵女医の駆け込みプレイスはここ!」にもご登場いただいている、「青山エルクリニック」の杉野宏子院長にお話をうかがうこの連載。
今回は「飽和脂肪酸」について、まとめの解説をしていただきます。
こんにちは、杉野宏子です。
前回、飽和脂肪酸は「長鎖脂肪酸」「中鎖脂肪酸」「短鎖脂肪酸」の3つに分けられることを説明しました。今回は引き続き、それぞれの特徴についてお話ししたいと思います。
まず短鎖脂肪酸ですが、腸内環境を弱酸性にし、悪玉菌の活性化を抑える働きがあります。
またミネラルを吸収しやすくするほか、大腸のバリア機能を高める、大腸がんを予防するなどの効果もあります。
免役機能の調節にも関わっていると言われる、極めて重要な脂肪酸です。
多く含まれる食品としては酢酸(お酢)、バター、チーズ、牛乳などがありますが、牛乳には乳糖が含まれているため糖質が高く、血糖値を上げてしまいます。くれぐれも飲み過ぎには注意してください。
中鎖脂肪酸は腸管から吸収され、肝臓へつながる静脈からダイレクトに肝臓に送られた後、すぐにエネルギーへと変わります。
中鎖脂肪酸を摂取すると体の脂肪をエネルギーに変えるサイクルが早くなるので、できるだけ朝摂ることをおすすめします。
多く含まれる食品としては、ココナッツオイル、バター、パームオイル、牛乳などがあります。
最後に長鎖脂肪酸。この脂肪酸は腸から吸収されて全身をまわり、肝臓に帰ってきます。
いったん肝臓に蓄積されてから全身に運ばれるため、エネルギー源になるまで時間がかかるのが特徴です。
熱に強いというメリットがあるので、炒め物や揚げ物など熱を加える料理に向いています。
多く含まれる食品は、魚油、牛脂、豚脂、ラード、大豆油、コーン油、オリーブオイルなど。
いわゆる“サラダ油(植物油)”もここに含まれますが、サラダ油に含まれるリノール酸の過剰摂取は、認知症の原因のひとつになると言われています。
(サラダ油に含まれるリノール酸が、加熱するとヒドロキシノネナールという神経毒に変わり、神経細胞を死なせて脳の海馬を委縮させるという研究結果による)
ご家庭で、料理にはずっとサラダ油を使ってきたという人も多いと思います。今からでも遅くないので、揚げ物や炒め物にはできるだけサラダ油以外の油を使いましょう。
必須脂肪酸のリノール酸は植物油に多く含まれていますので、現代人の食生活では不足することはほとんどありません。むしろ、オメガ3脂肪酸であるα-リノレン酸を摂取するように努めましょう。
以上、飽和脂肪酸について説明して来ましたが、脂肪酸は「糖質を抑える食事=糖質制限食」と並行して摂取するのが理想的。
ご飯やパスタ、パンなどの炭水化物(糖質)を普段どおり食べたうえで油(特に長鎖脂肪酸)を摂っていては、余分な油が体に蓄えられてしまいます。
いつまでも健康であるためには、まず糖質を減らし、足りないエネルギー源を脂肪酸で補うことが重要なカギになります。
写真は、ある日の私の糖質制限ディナー。この日は、お野菜やキノコ類とともに白身魚をいただきました。
もちろん 野菜もたっぷりいただきます。写真は届いたばかりの旬の野菜です。
糖質制限は難しいと思う人もいるかもしれませんが、本当に大変なのは最初の1週間だけ。1週間厳密に実践して体の中の回路が機能するクセをつけたら、その後はゆるい糖質制限でも大丈夫です。
アラフィフ時代を元気に若々しく過ごすためにも、ぜひトライしてみてください。
杉野先生のアンチエイジングジュースのレシピは、次ページに!
◆杉野先生おすすめのアンチエイジングジュース
<柿と大根、ニンジンのジュース>
材料:2人分
柿 1個
大根 100g
赤パプリカ 半分
ニンジン 50g
国産レモン(皮ごと) 半分
エゴマ油 大さじ1~2
シナモン 少々
古くから日本人に親しまれ、秋から冬に欠かすことができない柿。
「柿が赤くなると医者が青くなる」といわれるくらい、高い健康促進効果があることで知られています。
ビタミンCやビタミンAが豊富で、免疫力を高めてくれる柿は、この時期たっぷり摂りたい果物です。
パプリカにはポリフェノールが多く含まれ、抗酸化作用が期待できます。
<バナナとアボカドのジュース>
材料:2人分
バナナ 小1本
アボカド 半個
国産レモン(皮ごと) 半個
カーボロネロ 2枚
オークリーフ(葉野菜) 3,4枚
ミントの葉 3,4枚
フェンネル 一房
シナモン 少々
クローブ 2粒
エゴマ油 大さじ1~2
水 150ml
不飽和脂肪酸やビタミン類、食物繊維が多くふくまれるアボカドは、美容にも良い果物。
ジュースにすると粘り気が出るので、少し水を多く加えて作るのがコツです。
カーボロネロは黒キャベツともよばれる、イタリアの葉キャベツ。
濃い緑色が美しい、これから人気が出そうな野菜のひとつです。
栄養的にも優れているので、お料理にもどんどん取り入れて。
飾りには、食べられるお花・ビオラを添えてみました。
写真/杉野宏子 取材・文/上田恵子