腸内フローラの重要性に注目が集まっていますが、同じく大事なのが口内フローラ。口内環境が悪いと全身の病気に! 口内フローラの改善は健康の必須条件なのです。この口内環境について、花田信弘先生に伺いました。
花田信弘さん Nobuhiro Hanada
1953年生まれ。鶴見大学歯学部探索歯学講座教授。歯科医師。福岡県立九州歯科大学歯学部卒業、同大学院修了。細菌が歯から血中に入り込み病気を引き起こす歯原性菌血症を中心に研究。著書は『白米が健康寿命を縮める 最新の医学研究でわかった口内細菌の恐怖』(光文社新書)など
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口内にも悪玉菌と 善玉菌がいる 腸内に善玉菌と悪玉菌がすんでいることはお馴染みですが、実は口の中も同じ。 「口内には約700種、約100億個もの細菌がすんでいます。この細菌の集合体が口内フローラ。個人差はあれど、このうちの約7割が、善玉菌や、状況に応じて善玉菌にも悪玉菌にもなる日和見菌。残りの3割が歯周病菌や虫歯菌などの悪玉菌です。悪玉菌がいても善玉菌が7割以上のバランスを保っていれば口腔内の健康は維持できます。 でも歯周病や虫歯があると歯周病菌や虫歯菌などの悪玉菌が増殖。すると歯の表面にはりついて歯垢(プラーク)となり、これがバイオフィルムという悪玉菌の塊を作り、どんどん増殖。この状況が全身の病気を招く可能性が」
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口内の悪玉菌が血管に 入り、全身の病気の元に 腸内細菌と違い、口の中の細菌は血管内に侵入することがあるというから怖い。 「体の中で唯一、菌が簡単に血管内に入り込める場所があり、それが虫歯の穴と、歯と歯茎の境目の歯肉溝です。歯肉溝は健康な歯肉なら1〜2㎜程度ですが、傷ついたり炎症を起こして弱くなると溝が深くなります。これらの場所から細菌が血管に入り込むと全身を巡ります。 すると血管で炎症が起き、動脈硬化を引き起こし、それを引き金に脳や心臓の血管で血栓ができると脳梗塞や心筋梗塞に。脳の血管がさらに詰まると認知症を招く場合も。そのほかがんやリウマチ、糖尿病などにも口内の悪玉菌の血管への侵入が関与していることがわかっています」
口内の悪玉菌は、虫歯の穴や歯肉溝から血管に侵入!
口内細菌の血管への侵入ルートが虫歯の穴と歯肉溝。歯肉溝が4㎜以上になると歯周ポケットとなりますます菌が侵入しやすくなります。
次回は「全身の健康は口内フローラから」の後編です。お楽しみに。
構成・原文/和田美穂